「花!ぴよぴよさん治ったんでしょう?」
月が指を差しながら問い詰める。
「月姉様、治ったよ。」
花は悪びれもせず、あっさりと答えた。
「じゃあ、なんであそこにいるの?」
月がさらに指さした先には、店内の天井の梁に止まっているぴよぴよさんの姿があった。
「ちょっと気になることがあって、その検証のために防犯カメラ代わりにしばらくお店に置こうと思って……だめ?」
花が無邪気な笑顔で尋ねる。
「店内を飛び回ってゴミをまき散らしたりしなければいいよ。」
雪乃が微笑みながら、冷静に言った。
「ありがとう、雪姉様!」
花は嬉しそうに手を叩く。
一方で、月は眉間に皺を寄せながら呟いた。
「また余計なことを始めるんじゃないでしょうね……。」
「カッサータってどんなスイーツですか?」
弥生が興味津々で月に尋ねる。
月は少し困ったような顔をして、雪乃の方を向いた。
「雪姉様……説明をお願いします。」
雪乃は紅茶を片手に優雅に答える。
「カッサータはね、果汁かリキュールで湿らせたスポンジケーキに、カンノーロの中身にも使われるリコッタチーズと果物の砂糖漬けを重ねたもの。それにマジパンの殻をかぶせ、ピンクか緑色のアイシングでデコレーションするのよ。分かった、月?」
月は頷きながら答えた。
「はい、作ってみます。」
弥生が少し疑問げに声を上げる。
「雪乃様が作った方が確実なのでは?」
雪乃はにっこりと微笑んで返す。
「月に覚えてもらいたいのよ。特に今回は子供でも食べられるようにリキュールではなく果汁を使うの。」
月は真剣な表情で答えた。
「はい、雪姉様。」
そのやり取りを横で聞いていた忍が小声で呟く。
「……自分が楽したいだけでは?」
次回、「カッサータと進化するぴよぴよさん」。新しいスイーツの挑戦と、天井の梁から監視を続けるぴよぴよさんの謎――何かがまた起きそうな予感。