来店したお客様を見て、弥生は固まった。
その女性は、一目で只者ではないと分かる威圧感と気品を纏っている。
「ヴィクトリア様!どうしてここに……?」
弥生が驚きと緊張を隠せずに尋ねる。
ヴィクトリアは、ジパング王国の王宮メイド長にして、第一王女・壱姫の専属メイドであり、壱姫の絶対的な側近として知られている人物だった。
ヴィクトリアは冷静に答える。
「どうしても何も、ここに第二王女様、第三王女様、第五王女様、第七王女様……王国の王女の半分以上が集まっておられるのです。王宮メイド長である私が派遣されるのは当然のことです。」
「ですが……第一王女様の方は?」
弥生は恐る恐る尋ねる。
「第一王女様には、他の者に任せてきました。」
ヴィクトリアの答えに、その場にいた全員の顔が引きつる。
「……第一王女様、放し飼いですか?」
弥生の小声の問いに、ヴィクトリアの眉がぴくりと動くが、冷静を保ちながら言い放つ。
「第一王女様からの命です。」
それを聞いて、弥生はさらに疑念を深める。
「ヴィクトリア様、もしかして厄介払いされたのでは……?」
ヴィクトリアは一瞬沈黙した後、冷たい笑みを浮かべながら答えた。
「ここに、こんなにも姫様方が集まってしまうのがいけないのです! 私がここに派遣されるのは、至極当然の結果です。」
雪乃たちはその言葉を聞き、何も言い返せない。
なぜなら、ここには彼女たちの集まりを止める者がいない状況を生み出してしまった自覚があったからだ。
しかし、問題はそこではなかった。
ヴィクトリアは、ジパング王国の宮廷で唯一壱姫を抑えられる最強で最高のメイドとして知られている。
そんな彼女が第一王女から離れたという事実は、一つの大きな不安を暗示していた。
「第一王女様が抑えられない今……何かが起こる気しかしない。」
嫌な予感が、雪乃たち全員の胸中に広がるのであった。
次回、第25話
「サーターアンダギーと最強のメイドの使命」
王宮の最強メイド、ヴィクトリアの活躍にご期待ください!