目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第25話 本日のスイーツはサーターアンダギー、ヤツが来る!最強の女!」2:最強、最高メイドの実力1



月が厨房でスイーツを作る準備を始めようと立ち上がった瞬間、店内の空気がピリッと引き締まる。

「月姫様!それはなりません!」

鋭い声が飛び、思わず月は足を止めた。目の前には、どこからともなく現れたヴィクトリアが立ちはだかっていた。


ヴィクトリアは星姫に仕える専属メイドであり、ジパング王国の「最強、最高のメイド」として知られている。その立ち居振る舞いから、凛然とした迫力が伝わってくる。


「月姫様が厨房に立つなど、このヴィクトリアの目が黒いうちは絶対に許しません。」

「でも、スイーツの準備をしないと開店に間に合わないわ。」

月が困惑しながらも譲らない姿勢を見せると、ヴィクトリアは少し微笑みながら一歩前に出た。


「そのお役目、どうぞ私にお任せくださいませ。」

「え?ヴィクトリアがスイーツを作るの?」

「はい。何をお作りするかだけご指示いただければ、完璧に仕上げてみせます。」


星姫が楽しそうに微笑みながら口を挟んだ。

「ヴィクトリアの実力を見せてもらういい機会ね。」

月は少し戸惑いながらも、予定していたスイーツを伝えた。

「今日はサーターアンダギーを作る予定だったんですけど……。」

「サーターアンダギーですね。お任せください。」


ヴィクトリアは厨房へと向かい、驚くべきスピードで材料を取り揃えると、流れるような動作で調理を始めた。その手際の良さに、月も雪乃も思わず息を呑む。星姫は椅子に腰掛けながら、優雅にその様子を眺めていた。


「ヴィクトリアって、スイーツも作れるの?」

「もちろんよ。」星姫が誇らしげに答える。「ヴィクトリアは何でも完璧にこなすわ。料理も掃除も、戦闘ですらも。」

「戦闘……?」月が思わず聞き返すが、星姫は意味深に微笑むだけだった。


数十分後、ヴィクトリアは試食用のサーターアンダギーを皿に盛り付け、月と雪乃、星姫の前に差し出した。

「どうぞ、お確かめくださいませ。」


月は恐る恐る一口食べる。次の瞬間、目を見開いて驚きの声を上げた。

「す、すごい……!外はサクサク、中はふわふわで、香りも豊か!私が作るものなんか足元にも及ばない……。」


雪乃も一口食べて感嘆の声を漏らした。

「さすがヴィクトリアね。私もこれには敵わないわ。」


「ヴィクトリアは、どうしてこんなに上手なの?」月が興味津々で尋ねると、雪乃が答えた。

「それはね、ヴィクトリアが私の姉弟子だからよ。」

「えっ!?」月が驚いて声を上げる。「じゃあ、夕霧様のお弟子だったの?」


夕霧とは、雪乃が修行時代に師事していたスイーツ作りの巨匠であり、ジパング王国にある有名店『喫茶夕影』のオーナーパティシエである。


「そういうこと。私もヴィクトリアには及ばないのよ。彼女は夕霧様の一番弟子で、最強、最高のメイドたる所以の一つが、このスイーツの腕前なの。」


ヴィクトリアは控えめに一礼し、淡々と言葉を紡いだ。

「私の技術がこうして役立てるなら光栄です。しかし、月姫様も十分に素晴らしい腕をお持ちです。ただ、創意と工夫が少し足りないだけ。」


その言葉に、月は少し考え込むような顔をしながらも、素直に頷いた。

「わかりました。もっと工夫とアイディアを考えてみます。」


星姫が満足そうに笑いながら一言付け加えた。

「さすがヴィクトリアね。これで『雪の庭』もさらに魅力的なお店になるわ。」


こうして、最強メイドヴィクトリアの実力が披露される中、店内には新たな空気が生まれていった。




この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?