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第26話:「本日のスイーツはルバーブとブラムリーのクランブルでございます」4:ヴィクトリアの実力



「本日のスイーツはルバーブとブラムリーのクランブルでございます」


店内の混雑とヴィクトリアの接客


開店直後、雪の庭はすぐに混雑し始める。席がほぼ埋まり、厨房とホールが忙しく動くべき状況だが、ヴィクトリアはその中心で流れるように接客を繰り返していた。


「お待たせいたしました。本日のスイーツ、ルバーブとブラムリーのクランブルでございます。どうぞごゆっくりお楽しみください。」


客一人一人に優雅なお辞儀をしながら、注文を受け、配膳を完璧にこなしていく。混雑しているはずなのに、店内には穏やかな空気が流れていた。


その一方で、雪乃、月、花の三姉妹はヴィクトリアから働くことを禁じられ、店の片隅に用意された遊びテーブルでお茶を楽しんでいる。


月がスイーツを一口食べながら、申し訳なさそうに呟く。

「ねえ、雪姉様……これで本当に大丈夫なの? 私たち、何もしてないんだけど……。」


雪乃は落ち着いた笑みを浮かべながらティーカップを傾ける。

「大丈夫よ、月。ヴィクトリアがいる限り、この店は完璧に回るわ。」


花が設計図を広げながら、気にも留めずに言う。

「むしろ邪魔しない方がいいんじゃない? 私たちが動くと、逆に混乱しそうだし。」


 遊びテーブルで三姉妹がくつろぐ中、店内は信じられないほどスムーズに回転していく。

客からの注文が途切れることなく続くが、ヴィクトリアは動じることなく、次々と対応していた。


ある客が店内の様子を眺めながら、驚いた声を上げる。

「すごいわね……こんなに混んでるのに、全然待たされないし、落ち着いた雰囲気のまま。」


別の客も感心したように呟く。

「これが雪の庭の実力ってことかしら。ヴィクトリアさんの動き、まるで舞踏会みたいに優雅だわ。」


月が焦った表情でスイーツを食べる手を止め、雪乃に訴えるように言う。

「でも、私たちが何もしないで遊んでるの、やっぱりおかしくない? せめて手伝わせてほしいよ……。」


星姫が涼しい顔で笑いながら答える。

「月、ヴィクトリアが『働かないで』って言ったんだから、それに従った方がいいわよ。ほら、今の状況を見てみて。」


星姫が指差した先では、ヴィクトリアが客のテーブルをさばきながら、厨房の弥生に的確な指示を出し、さらに新たな客を席に案内していた。


雪乃はその様子を見ながら微笑む。

「これがヴィクトリアの力よ。私たちは安心して、ここでお茶を楽しんでいればいいの。」


そんな中、客が次々とスイーツを堪能し、満足した顔で帰っていく。店内は混雑しながらも、常に穏やかな空気が保たれていた。


月がようやく諦めたように、スイーツをもう一口食べながら呟く。

「……本当にヴィクトリアがいるだけで、完璧になるんだね。」


雪乃が満足げに頷く。

「ええ。それが最強のメイドというものよ。」



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