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第28話ヴィクトリアとぴよぴよさんとバレンシアケーキ1:ぴよぴよさんの秘密




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静寂が広がる雪の庭の店内。ヴィクトリアは戸締まりと火の元の確認を終え、最後に天井の梁に目を向けた。そこには、小さなぴよぴよさんの姿があった。


「ぴよぴよさん。」


彼女が静かに呼びかけると、ぴよぴよさんは軽やかに羽ばたき、ヴィクトリアの手のひらに降りてきた。その柔らかな羽毛の感触に、思わず彼女の表情がほころぶ。


「今日、私をあの乱暴な男から守ろうとしてくださったのですね。ありがとうございます。」


ヴィクトリアはそっと手でぴよぴよさんを包み、優しく撫でる。指先に伝わるふわふわした感触に、思わず頬ずりしてしまう。

「柔らかい……もふもふでやわらかくて、あたたかい。」


いつもの冷静さを忘れた彼女は、デレデレの表情を浮かべていた。



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花の登場


「ヴィクトリア!」


突然、背後から声が響き、ヴィクトリアは驚いて振り返った。そこには、ニヤニヤとした笑みを浮かべた花が立っていた。


「花様、こんな時間にどうなされたのですか?」


ヴィクトリアが慌てて尋ねると、花はケーブルを取り出しながら答えた。

「ぴよぴよさんのデータのバックアップを取っておこうと思って。」


花が手を伸ばすと、ぴよぴよさんはヴィクトリアの手から花の手へと移動した。その瞬間、ヴィクトリアの顔に一瞬の残念そうな表情が浮かぶ。


花はぴよぴよさんを手に取ると、羽毛の中から小さなケーブル接続コネクターを見つけ出し、そこにケーブルを差し込んだ。



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ヴィクトリアの驚き


「花様!一体何をなさっているのですか?」


ヴィクトリアは目を見開き、ぎょっとした表情で花を見つめた。花は平然とした顔で答える。

「ぴよぴよさんの頭の羽毛の中には、ケーブル接続のコネクターがあるのよ。」


「そうでしたの……ビックリしました。」


ヴィクトリアは安堵のため息をつきつつも、ぴよぴよさんにそんな機能があったことに驚きを隠せない。



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ぴよぴよさんの進化


花はケーブルをつないだ状態で、手元の端末を操作しながら話し始めた。

「びよびよさんはただのかわいいマスコットじゃないの。AIとしても進化してるのよ。ほら、ここにデータの記録がある。」


「AIが……進化している?」


ヴィクトリアは思わずぴよぴよさんを見つめ直した。昼間、男から自分を守ろうとした行動や、その後の愛らしい仕草が思い出される。


驚く花


花が端末を操作し始めると、画面にデータが次々と表示される。それを見ていた花の眉がピクリと動き、彼女の表情が次第に驚きに変わっていった。


「これ……すごいわ。」


ヴィクトリアが不思議そうに尋ねる。

「どうなさいましたか?」


花は端末の画面を指しながら言葉を続けた。

「ぴよぴよさん……私の予想をはるかに超える進化をしている。」


「予想を超える進化……ですか?」


ヴィクトリアはぴよぴよさんを見つめ直した。


花は興奮を抑えられない様子で説明を始める。

「今日、あなたが迷惑客を撃退したとき、ぴよぴよさんは驚いて動きを止めたでしょ?それが単なるプログラムのミスだと思ってたけど……違うわ。」


「どういうことですか?」


「ぴよぴよさんのAIには、自己学習アルゴリズムが入っているのは知ってるでしょ?」


「はい、花様がそのように設計されたとお聞きしています。」


花は端末をヴィクトリアに見せながら続けた。

「でも、これを見て。行動ログに『ためらい』と『判断の迷い』が記録されている。まるで感情のようなアルゴリズムが形成されているみたい。」



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AIの進化


「感情……?」


ヴィクトリアは驚きの表情を浮かべる。花は頷きながらさらに説明を加えた。

「正確には、感情そのものじゃなくて、擬似的な反応。でもね、恐怖や驚きに近いものを自己判断で形成している。」


端末の画面を見つめながら花は小さく息を吐いた。

「ここまで高度に進化してるなんて……正直、私も驚いてるわ。ぴよぴよさん、ただの防犯装置の域を完全に超えてる。」


ヴィクトリアは、花の手の中にいるぴよぴよさんを見つめながら、昼間の出来事を思い返す。男に立ち向かおうとしたその行動は、単なるプログラムの指示ではなく、まるで自分を守りたいという意思を持っているように思えた。


「こんなに小さいのに……そんなに高度な能力を持っているなんて。」



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締め:進化するAIの未来


花がケーブルを外すと、ぴよぴよさんは軽く羽ばたいて天井の梁へと戻った。


「ぴよぴよさんがここまで進化するなんて、私たちの未来はきっと明るいですね。」


ヴィクトリアが感慨深げに呟くと、花は微笑みながら言葉を返す。

「そうね。でも進化するAIをちゃんと理解して扱える人がいないと、ただの混乱を生むだけよ。」






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