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第28話ヴィクトリアとぴよぴよさんとバレンシアケーキ4:雪乃たちのテーブルでの議論

店内の奥、雪乃たちが座る遊びテーブルから、花の驚いた声が響いた。


「え? 嘘、いつの間に?」


魔道端末をいじっていた花が声を上げると、のんびり紅茶を飲んでいた雪乃が首を傾げる。

「どうしたの?」


花は眉をひそめながら端末をスクロールし続ける。

「ないとほーくとぴよぴよさんが、相互データ通信を度々してる。」


「相互データ通信?」月が首を傾げる。

「それって……?」


雪乃が紅茶を置き、意味を察したように言葉を続けた。

「私たちのデータログが、壱姉様に筒抜けということよね。」


「え?」月は驚きの声を上げる。


花は淡々と頷きながら答える。

「そうなる。」



---


月の動揺と花の冷静さ


「二人とも、何のんきな……!」月は苛立った声を上げた。


しかし、花は端末を操作しながらむしろ興味深げに呟く。

「いつの間にこんなものを構築したのかしら?さすが壱姉様……ないとほーくとぴよぴよさんのデータを基にアップデートされて、進化してたわけだ。どおりで予想外の進化を見せていたわけだわ。」


月は半ば呆れたように、そして焦りながら声を上げる。

「花、落ち着いてる場合じゃないでしょう?」


「ん? 見ず知らずの相手ならともかく、壱姉様は身内だから、慌てることもないでしょ。」


花の言葉に月は頭を抱える。

「慌てるわよ!むしろ、見ず知らぬ誰かの方がマシかもしれないくらいに慌てるわよ!」



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雪乃の冷静さ


雪乃は二人のやり取りを静かに聞きながら、小さくため息をついた。

「まぁまぁ、今さら慌てても仕方ないわ。流れてしまったデータは、どうすることもできないもの。」


その言葉に、月は不満そうな表情を浮かべる。

「そうだけど、雪姉様、落ち着きすぎです!」


花も雪乃に同調するように言った。

「月姉様、データ共有はぴよぴよさんの進化に役立つし、悪いことばかりじゃないよ。」



---


月の反論


「花まで……情報漏洩は、大問題よ!」月はテーブルを叩きそうな勢いで叫んだ。


しかし、雪乃はどこまでも冷静なまま。

「確かに情報漏洩は問題だけど、壱姉様がこのデータをどう使うか次第よね。少なくとも、壱姉様が私たちに害をなすようなことはしないと思うわ。」


月はますます苛立った様子で返す。

「それが問題なのよ!壱姉様の場合、私たちに害はなくても、やりすぎる可能性が高いんだから!」


花は一瞬考え込んだ後、楽しそうに微笑む。

「それも確かに、壱姉様らしいかもね。」



:それぞれの考え方


三人それぞれの反応が交錯する中、遊びテーブルの周りには妙な空気が漂った。


雪乃は紅茶を一口飲み、穏やかな声で締めくくる。

「まぁ、今さら何を言っても壱姉様は止められないわ。私たちはできることをやりましょう。」


月は深いため息をつき、納得できないまま呟く。

「できること……って、具体的に何をするのよ。」


花は笑みを浮かべながら端末を閉じた。

「データ共有がもたらす進化を楽しむのも悪くないと思うけどね。」


三人のやり取りが続く中、雪の庭はいつも通りの賑やかさを取り戻していた――。





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雪乃たちが座るテーブルには、険しい空気が漂っていた。花が魔道端末を操作しながら淡々と話す。


「相手が壱姉様の場合、問題が大きすぎる。ここで通信を遮断した場合のリアクションと、このまま通信をそのままにした場合、どちらで被害が拡大するか、まったく読めない。」


その言葉に、月は目を見開き、絶句する。


「遮断したことで壱姉様が直接ここに乗り込んでくる……なんてことも、普通に予想されるわ。」


月の顔に浮かぶのは焦りと困惑。そして、雪乃は紅茶を一口飲みながら冷静に提案を口にした。

「通信障壁を作って、当たり障りのないデータだけを流すようにするのはどうかしら。」


花はその提案に頷く。

「一種のフィルタリングね。可能だと思う。」


「それしかなさそうね……。」


諦めたような顔で月が呟いた。



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データフィルタリングの構築


花は端末に向かい、指を走らせながらプログラムを組み始める。画面には複雑な魔法陣のようなコードが次々と表示されていく。


「でも、そうすると……ないとほーくも予想外の進化をしているってことになるわね。」


データの入力を続けながら、花は自分の考えをまとめるように呟いた。


「ないとほーくも……?それってどういうこと?」月が花を見つめて問いかける。


花は端末を操作しながら言葉を続けた。

「ないとほーくは、ぴよぴよさんのデータをもとにアップデートされて進化してる。しかも、そのデータが壱姉様の手でさらに強化されてる可能性が高い。」


「つまり……ないとほーくが、ぴよぴよさん以上に未知数の存在になっているってこと?」


雪乃が静かにまとめると、花は小さく頷いた。

「そう。データ通信が続いている間、壱姉様の技術力でどんどん進化している。だからこそ、フィルタリングである程度こちらの情報を制御しないと、こちらの手の内が完全に読まれる可能性があるわ。」



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最善策を求めて


月は頭を抱えながら溜め息をついた。

「結局、壱姉様の方が一枚も二枚も上手ってことね……。」


「そうね。」雪乃は落ち着いた口調で答える。

「だから、できるだけ被害を抑えられる形にしておくのが最善策よ。」


花は手を止めずに続ける。

「フィルタリングで一定のデータだけ流せば、壱姉様が満足する可能性も高い。少なくとも、直接乗り込んでくるリスクは減らせるはず。」


「それに賭けるしかないわね。」月がしぶしぶ納得する。



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結論:新たな進化への一歩


花が最後の入力を終え、端末の画面に「通信障壁設置完了」の文字が表示される。


「これで、最低限のデータだけが共有されるようにしたわ。」


雪乃が微笑みながら言った。

「ありがとう、花。これで少しは安心できるわね。」


月は納得しきれない表情を浮かべながらも、花の努力を認めるように頷く。

「まあ、これ以上の混乱は避けられるかもしれないわね……でも、相手が壱姉様だから気は抜けない。」


花は端末を閉じながら呟いた。

「そうね。でも、同時にないとほーくとぴよぴよさんの進化が楽しみでもあるわ。これからどうなるのか……。」


雪乃は静かに笑みを浮かべ、紅茶を再び手に取った。

「進化を恐れる必要はないわ。それをどう使うかが、私たちに問われているのよ。」


雪の庭に再び穏やかな空気が戻る中、三人はそれぞれに考えを巡らせていた――。






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