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第29話 マドレーヌとヴィクトリア2:ヴィクトリアの決意



店内の静けさが、ヴィクトリアの心に重くのしかかるようだった。鷹乃 夜から手渡された書状を再び見つめ、深く息を吸う。

彼女の表情には迷いが浮かんでいたが、それでも口を開いた。


「雪乃様、月様、花様……」


静かに頭を下げながら、彼女は毅然とした声で続ける。

「私は壱姫様の命令に従います。」



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雪乃の冷静さと月の反発


雪乃は紅茶を置き、ヴィクトリアに向き直る。

「壱姉様の命令なら、逆らうことはできないわね。」


その言葉には理解を示す冷静さがあったが、その瞳の奥には寂しさが滲んでいた。


月は感情を抑えきれず、声を荒げる。

「でも! ヴィクトリアがいなくなったら、店はどうなるの?誰が回すの?」


その言葉に、ヴィクトリアはわずかに微笑みを浮かべる。

「月様、雪の庭は皆様がいる限り大丈夫です。私は信じています。」



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花の分析


一方、花は魔道端末を手にしながら静かに呟いた。

「壱姫様がわざわざ使者を送るなんて、よほどの事情があるのね。何か大きな動きが裏で進んでいるのかも。」


その分析に、月が眉を寄せる。

「だからって、ヴィクトリアをこんな形で連れて行く必要があるの?」


花は淡々とした表情で端末をいじりながら答えた。

「壱姉様の行動に意味がないなんてこと、あると思う?」


月は言葉を失い、黙り込む。



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ぴよぴよさんの行方


そんな中、ヴィクトリアは花の方に向き直り、少し躊躇いながらも口を開いた。

「花様……ひとつお願いがございます。」


「何?」花が端末から視線を上げる。


「ぴよぴよさんを私に譲っていただけないでしょうか。」


その言葉に、店内は再び静寂に包まれた。月も雪乃も驚きの表情を浮かべる。


花はしばらく考えるように黙っていたが、やがて首を横に振る。

「ごめんなさい、ヴィクトリア。ぴよぴよさんはもう雪の庭の一員だから、譲ることはできない。」


その言葉に、ヴィクトリアの顔に一瞬だけ寂しそうな表情が浮かぶ。しかし、すぐに微笑みを取り戻し、深く頷いた。

「承知いたしました。花様、ありがとうございます。」



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別れの覚悟


ヴィクトリアは背筋を伸ばし、再び雪乃たちを見渡した。

「短い間ではございましたが、皆様と共に過ごした日々は、私にとってかけがえのないものでございました。本当にありがとうございました。」


その言葉に、雪乃は静かに頷き、月は悔しそうに唇を噛みしめた。


花は端末を閉じ、ヴィクトリアを真っ直ぐに見つめる。

「ヴィクトリア、壱姫様に何かあったら、必ず連絡してね。私たちにできることがあれば手伝うから。」


ヴィクトリアは目を伏せ、感謝の念を込めて深く頭を下げた。



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鷹乃 夜の静観


一方で、鷹乃 夜は無表情のまま事の成り行きを見守っていた。彼女の冷たい視線は、ただひたすらにヴィクトリアの行動を監視しているかのようだった。


「ヴィクトリア、準備が整いましたら出発してください。」

鷹乃 夜の淡々とした言葉が、店内に再び緊張感を生む。


ヴィクトリアはその声に頷き、静かに荷物をまとめに向かった。




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