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店内は閉店後の静けさに包まれていた。ヴィクトリアは荷物をまとめ終え、最後の確認をするためにカウンターに立っていた。
雪乃、月、花、そしてスタッフたちも全員が集まり、見送る準備をしている。
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最後の挨拶
ヴィクトリアは一同を見回し、深く頭を下げる。
「短い間でしたが、皆様と共に過ごした時間は、私にとってかけがえのないものでした。本当にありがとうございました。」
その言葉に、雪乃は静かに微笑みながら答える。
「こちらこそ、ヴィクトリアのおかげでとても助かったわ。ありがとう。」
月は目に涙を浮かべながら声を震わせる。
「ヴィクトリア、本当に行っちゃうの……?まだ一緒にいてほしいのに……。」
ヴィクトリアは月の方を向き、優しい微笑みを浮かべた。
「月様、どうかお元気で。雪の庭は、皆様がいれば必ず素晴らしい場所であり続けます。」
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ぴよぴよさんのお別れ
その時、天井の梁からぴよぴよさんがふわりと降りてきた。ヴィクトリアの手のひらにそっと止まり、小さな声で「ぴよ」と鳴く。
ヴィクトリアは驚きながらも嬉しそうに微笑み、ぴよぴよさんの頭を優しく撫でた。
「ぴよぴよさん、お別れを言ってくれるのですね。ありがとう、あなたのことは一生忘れません。」
そう言うと、ヴィクトリアはぴよぴよさんをそっと抱き上げ、頬ずりをした。
「柔らかくて温かい……本当に可愛らしいですね。」
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花からの贈り物
その様子を見ていた花が、小さなバスケットを手に近づいてきた。
「ヴィクトリア、ちょっと待って。」
ヴィクトリアが振り返ると、花はバスケットを差し出した。
「これ、受け取って。」
ヴィクトリアがバスケットの蓋を開けると、中から黄色い羽毛のぴよぴよさんが顔を出した。
「ぴよ?」
ヴィクトリアは目を見開き、感動の表情を浮かべる。
「花様、これは……?」
花は微笑みながら言った。
「うちのぴよぴよさんは譲れないけど、この子を贈るわ。名前はヴィクトリアがつけてあげて。」
ヴィクトリアは涙ぐみながらバスケットを抱きしめた。
「ありがとうございます……では、名前を“花ぴよ”と付けさせていただきます。」
「いい名前ね。花ぴよ、ヴィクトリアをよろしくね。」
「ぴよ!」
元気よく応える花ぴよに、一同は少しだけ微笑んだ。
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見送り
ヴィクトリアはバスケットを大事そうに抱え、店の扉に向かう。そして、振り返りながら一礼する。
「皆様、どうかお元気で。そして、雪の庭をこれからもよろしくお願いいたします。」
雪乃、月、花、そしてスタッフたちは、静かに彼女の背中を見送る。
扉が閉まり、ヴィクトリアの姿が見えなくなると、月がぽつりと呟いた。
「本当に行っちゃったんだ……。」
雪乃はそっと月の肩に手を置き、柔らかく微笑む。
「またどこかで会えるわよ。ヴィクトリアなら、きっと元気でやっているわ。」
花は端末をいじりながら、小さく呟く。
「壱姉様がこんなことをするなんて……やっぱり裏には何かあるわね。」
雪の庭には静けさが戻った。しかし、その空気にはどこか寂しさとともに、新たな一歩を踏み出す予感が漂っていた。