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扉が開き、店内に一際目立つ金髪の青年が入ってきた。第一王子アレックスだ。
アレックスは周囲を見渡し、まっすぐ雪乃のもとへ向かう。
「おはようございます、雪乃様。」
アレックスは微笑みながら優雅に挨拶し、雪乃の隣の席に座った。
雪乃は一瞬驚いたものの、すぐに冷静な表情を取り戻し、微笑みながら答える。
「おはようございます、アレックス殿下。本日はどのようなご用件で?」
アレックスは軽く肩をすくめながら言った。
「ただ、あなたとお話ししたかっただけですよ。」
雪乃は困ったように微笑みながら、紅茶に口をつけた。
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月と花の反応
カウンターの向こうでその様子を見ていた月は、小声で花に話しかける。
「殿下、雪姉様にすごく積極的すぎない?」
花は冷静に観察しながら、興味深げに呟いた。
「本気で惹かれてるみたいね……。」
「でも、雪姉様、完全に困ってるじゃない!どうにかしてあげないと……。」
月が心配そうに言うと、花は軽く笑いながら答えた。
「まあまあ、雪姉様なら上手くかわすでしょうし、しばらく見守りましょう。」
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夜の唐突な行動
しかし、そこに静かに割って入ったのは夜だった。彼女は月と花の会話を聞きながら、首をかしげて雪乃に尋ねる。
「雪乃様、お困りなのですか?」
雪乃は少し驚いた表情を浮かべながら、夜を見つめた。
「見て分からない?」
夜は頷き、小さく「わかりました」と呟くと、トコトコとアレックスに近づいていった。
「お客様、店長がお困りです。お帰りください。」
アレックスは目を丸くしながら、夜を見下ろして言った。
「いや、少し待ってくれ。もう少し話をさせてくれないか?」
しかし夜は淡々とした声で返す。
「駄目です。お帰りください。」
そして、小さな体の夜は突如アレックスをお姫様抱っこで持ち上げた。
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アレックスの狼狽
「えええっ!?」
月が驚きの声を上げ、店内の全員が固まる中、アレックスは必死に抵抗を試みる。
「ちょ、待ってくれ!帰る、帰るから降ろしてくれ!自分の足で歩いて帰る!」
夜は一度足を止め、静かにアレックスを見つめながら確認する。
「本当にお帰りいただけますか?」
「もちろんだ!早く降ろしてくれ!恥ずかしい……!」
夜は小さく頷き、アレックスをそっと地面に降ろした。そして静かに言葉を続ける。
「では、お気をつけてお帰りくださいませ。」
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アレックスの退店
結局、アレックスは危うくお姫様抱っこで店から追い出されるところだったためにその日は雪乃の冷静な対応と夜の強硬な行動によって退店することになった。
「雪乃様、また伺います。」
そう言い残し、アレックスは深いため息をつきながら店を後にした。その表情にはまだ情熱の炎が灯っていた。
雪乃は静かにその背中を見送り、深いため息をついた。
「本当に、困った方ね……。」
月がすぐに駆け寄り、心配そうに声をかける。
「雪姉様、大丈夫だった?」
雪乃は微笑みながら頷いた。
「ええ、大丈夫よ。でも、もう少し静かに過ごさせてほしいわね。」
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花の洞察
その様子をじっと見守っていた花は、ふと興味深げに呟いた。
「殿下……ここまで情熱的だと、逆に壱姉様の計画に何か関係してるんじゃないかって気がしてくるわね。」
その言葉に月が驚いて花を見つめた。
「えっ、それどういう意味?」
花は意味深な笑みを浮かべるだけで、何も答えなかった。
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