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第33話 星姫の帰国3:星姫への感謝

星姫の出発が決まり、月の庭では別れを惜しむ雰囲気が漂っていた。

雪乃、花、そして夜が集まり、それぞれの思いを胸に、星姫を見送る準備をしていた。


雪乃と花の感謝


雪乃が静かに口を開いた。

「星姉様、本当にお疲れ様でした。草案づくりのために、たくさん努力してくださったんですよね。」


柔らかな笑顔を浮かべながら、星姫は穏やかに答えた。

「ありがとう、雪乃。だけど、これからが本番なのよ。正式な締結には、まだ多くの交渉が必要だから。」


「それでも、ここまで進めたのは星姉様のお力です。本当にすごいです。」

花が少し照れながらも、心からの感謝を述べる。


「花、ありがとう。あなたたちがここで支えてくれたおかげでもあるわ。」


夜の沈黙


一方、夜は静かにそのやり取りを見守っていた。

星姫との接触機会がほとんどなかった彼女は、どう声をかければいいのか分からずにいた。


星姫がその様子に気づき、夜に向かって微笑む。

「夜さんも、月の庭でとても頑張っていると聞いています。ありがとう。」


夜は少しだけ首を傾げながら答えた。

「感謝されるほどのことはしていません。」


その短い返答に、星姫は一瞬驚いたようだったが、すぐに優しい声で言葉を続けた。

「それでも、みんなが夜さんを頼りにしているのよ。それは素晴らしいことだわ。」


夜は言葉の意味を考えるように目を伏せたが、それ以上の感情を表に出すことはなかった。


別れの品


星姫が出発の準備を整えたとき、花が小さな包みを差し出した。

「星姉様、これをどうぞ。」


「まあ、ありがとう。これは?」


「私たちが心を込めて作った焼き菓子です。ジパングに戻られる途中で、少しでも楽しんでいただければ。」


星姫はその気持ちをしっかりと受け止め、包みを大切そうに抱きしめた。

「ありがとう、花。これを食べながら、あなたたちのことを思い出します。」


静かに見送る夜


星姫が月の庭を後にするとき、雪乃と花は手を振りながら見送った。

一方、夜は少し離れた場所から、その様子を静かに見守っていた。


彼女は心の中で、星姫の言葉を反芻していた。

「みんなが私を頼りにしている……?」


その言葉の意味を完全に理解できたわけではないが、夜はわずかに胸の奥で何かが動くのを感じていた。



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