目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第34話壱姉様の上陸2:雪の庭に現れた2人



朝の澄んだ空気に包まれたラルベニアの街。喧騒が始まる前の静かな時間、いつものように「雪の庭」の扉を開けるために外へ出た月は、目の前の光景に凍りついた。


壱姫の威風堂々


店の前には堂々と仁王立ちする壱姫。そして、その背後には、優雅に控えるヴィクトリア。その二人を囲むように、店の常連客たちがなぜか地面にひれ伏している。


月は目を見開き、思わず叫んだ。

「ど、どういう状況?ってか!壱姫姉様!」


壱姫は満足げに腕を組みながら、月に向かって堂々と答えた。

「ふむ、久しいのう。月よ!」

壱姫の威厳たる声が響くたび、常連客たちはさらに身を低くする。


月は状況を飲み込めず、ひれ伏している常連客たちに目をやりながら、さらに問い詰めた。

「いや、ちょっと待って!なんでみんな地面にひれ伏してるの?壱姫姉様、何かしたの?」


ヴィクトリアが一歩前に出て、静かな声で説明する。

「壱姫様が『国王代行』として即位されることを知り、ジパング王国の威厳に感服したようです。」


雪の庭への堂々たる訪問


月は頭を抱えながら深呼吸し、気を取り直して店の扉を開けた。

「……とにかく、開店します!どうぞ中へ。」


壱姫は満足そうに頷きながら、一歩足を踏み入れる。

「ようやく、開店であるか!邪魔するぞ!」


その言葉に、店内で準備をしていた雪乃と花も驚いた様子で姿を見せた。

「壱姫姉様!」

「お久しぶりです!どうしてここに……?」


壱姫は片手を軽く挙げ、堂々と店内を見渡しながら答える。

「おう、雪よ!花よ!久しいのう!妾は茶と菓子を所望じゃ!」


店内の騒然


壱姫の圧倒的な存在感に、店内は一瞬でその空気を支配される。雪乃と花は互いに目を見合わせ、驚きながらも即座に動き出した。

「は、はい!すぐに準備します!」


壱姫は席に腰を下ろし、威厳たっぷりに頷いた。

「うむ、それでよい。」


ヴィクトリアも壱姫の隣に控えるように立ち、店内を一瞥する。

「雪の庭……聞きしに勝る落ち着いた雰囲気です。ここで壱姫様が足を休められるとは、光栄でございます。」


常連客たちの動揺


一方、ひれ伏していた常連客たちも店内に入ってきたが、壱姫の存在に気圧されて、普段のようなリラックスした態度を取れないでいる。


「……なんか、空気が全然違う……。」

「壱姫様って、本当に王族なんだな……。」


その様子を見ていた月は、思わずため息をつきながら呟いた。

「壱姫姉様が来ただけで、店の雰囲気がここまで変わるなんて……。」


壱姫の微笑


壱姫はそんなざわめきも意に介さず、満足そうに微笑みを浮かべた。

「ふむ、妾の到来がここまで影響を与えるとはのう。やはり妾の威光は絶大じゃ。」


その言葉に月は思わず額に手を当て、苦笑いを浮かべた。

「……それ、自分で言っちゃうんだ……。」


こうして、壱姫の堂々たる訪問によって、「雪の庭」は再び新たな騒動の幕を開けるのだった――。


圧倒的カリスマの源


壱姫には、一目で人々を圧倒する何かがあった。それは美貌や威厳を超えた、言葉では言い表せないほどの「謎のカリスマ」だった。彼女がただ立っているだけで、その場の空気が変わる。誰もが彼女の存在を意識し、目を逸らすことさえできなくなるのだ。


彼女の声が響けば、命令でなくとも人々は無意識に従わざるを得なくなる。その力は計り知れないものであり、まるで天から授かった天命そのもののようだった。



---


問答無用の支配力


壱姫が軽く手を挙げるだけで、常連客たちは次々に頭を垂れる。命じられるわけでもなく、自然と膝をつき、敬意を示さざるを得ないのだ。


その光景を目の当たりにした月は、冷や汗を流しながらつぶやいた。

「……どうしてこうなるのよ……?」


隣で控えるヴィクトリアが静かに答える。

「壱姫様は、生まれながらにして人々を従わせる力をお持ちです。それが、この国を守るための存在でもあるのです。」


月はため息をつきながら心の中で思う。

(いやいや、それってもう王族とか以前に、人間を超越してるでしょ……。)



---


壱姫という存在


その場にいる誰もが、壱姫の前では無力だった。彼女は何も強制しない。むしろ、ただそこにいるだけなのだ。しかし、それだけで人々は従う。否応なく、問答無用で。


壱姫という存在は、それほどまでに圧倒的だった。彼女は自らの力を誇示することなく、ただ堂々と振る舞うだけで周囲を魅了し、支配していた。それが、壱姫という女の真の姿であり、彼女の圧倒的な「謎のカリスマ」の正体だったのである――。


月はその場の混乱と緊張感を必死に飲み込もうとしていた。壱姫の前で平静を保つことは簡単なことではない。周囲の常連客たちは相変わらず壱姫にひれ伏したまま、誰一人として顔を上げることができない。


月は心の中で深くため息をつき、壱姫を横目で見つめながら、ぽつりと呟いた。

「我が姉ながら謎すぎる……。ひょっとして神なの?」


その言葉が漏れた瞬間、隣で控えていたヴィクトリアが目を丸くし、少し困ったように微笑んだ。

「壱姫様は神ではありません。ただ――」


月はすぐにヴィクトリアの言葉を遮るように手を挙げた。

「いやいや、ヴィクトリアさん。それが神じゃなかったら何だって言うの?人々が問答無用で従うんだよ?しかも、ただ立っているだけで!」


壱姫はそんな月のぼやきを聞き流すように、優雅に椅子に腰を下ろし、涼やかな声で言った。

「妾が神かどうかなど、どうでもよいことじゃ。重要なのは、妾がここにいて、皆がそれを認識しておることじゃろう。」


月はその答えに頭を抱えた。

「だから、それがもう神レベルの話だって言ってるの!」


壱姫は微かに笑いながら、目の前の茶を一口啜った。その姿には揺るぎない自信と、何とも言えない威厳が漂っている。


「妾が神か否か。それを知る必要はない。ただ、妾がこの場を支配しておるという事実だけを認識すれば、それで十分じゃ。」


その言葉に、月はさらに困惑した表情を浮かべるしかなかった――。


壱姫は月の言葉に反応し、優雅に茶を啜りながら口元に微笑を浮かべた。そして、威厳たっぷりの声で言い放った。


「神、違うな。妾は壱姫!妾の意に沿わぬなら、神とてその理を妾に従わせるのみ。」


その堂々たる宣言に、店内の空気が一瞬で凍りついたようだった。壱姫の言葉には確固たる自信と、まるで絶対的な力を裏付けるような威圧感が込められていた。


月はその一言に完全に面食らい、肩を落として呟いた。

「……もう理解不能……神を超越してるってこと?」


壱姫はその問いに楽しげな笑みを浮かべながら、優雅に茶を置き、月を見据えた。

「超越、などという表現も好かぬ。妾はただ、妾であるがゆえに、すべてが理を成す。それだけのことよ。」


「……理を成すって……意味がわからないよ、壱姫姉様!」

月は頭を抱え、完全に降参するようにテーブルに突っ伏した。


ヴィクトリアは壱姫の背後で静かに佇みながら、微笑を浮かべつつ、そっと月に言葉をかけた。

「壱姫様の理は、確かに我々凡人には少し難解かもしれませんね。」


「少しどころじゃないよ!」

月はその言葉に反射的にツッコミを入れたが、壱姫の目線に触れると、再び黙り込んだ。


壱姫は満足げに頷きながら、再び茶を啜る。

「妾がここに来たのは、お前たちの日常に新たな風を吹き込むためでもある。妾の言葉を深く考える必要はない。ただ、この瞬間を楽しむがよい。」


月は困惑しながらも、諦めたように顔を上げ、壱姫をじっと見つめた。

「……とにかく、壱姫姉様は、やっぱり壱姫姉様なんだね……。」


壱姫はその言葉に満足そうな笑みを浮かべ、優雅に頷いた。

「そうじゃ。妾は妾。それ以外に何もない。」


その堂々たる姿に、月も、そして店内の人々も、ただただ圧倒されるばかりだった。









この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?