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第38話1: 傷心の旅



雪の庭に優雅な足取りで現れる壱姫とヴィクトリア。いつもと変わらぬ堂々とした壱姫の姿を見て、雪乃たちはすぐに席を用意する。


「雪乃、茶を所望する。それと、今日はスイーツも頼むぞ。」

壱姫がそう告げると、ヴィクトリアが控えめに口を開いた。


「壱姫様、先ほど報告が届きました。アレックス殿下が、自分を見つめ直すために旅に出られたそうです。」


その言葉に壱姫は一瞬驚いたように目を丸くするが、次の瞬間には声を上げて笑い出した。


「夜にフラれて傷心旅行とは、最後まで笑わせてくれる。ははは!」


その豪快な笑い声に、雪乃は慌てて諌めるように言った。

「壱姉様、笑ったらかわいそうです。」


壱姫は肩をすくめ、少しだけ反省したような表情を見せた。

「うむ、そうであるな。確かに少し気の毒であったか。……夜よ。」


「はい、壱姫様。」

夜が即座に応じる。


壱姫は微笑みながら指をさして言った。

「もし、この店に来たら、かわいそうなアレックス殿下に優しくしてやるがよい。」


その言葉に月が頭を抱えながら呟く。

「壱姉様、それは、傷口に塩を塗るようなものです。」


壱姫はその指摘に笑いながら答えた。

「そうか、妾はむしろ慰めたつもりだったがのう。」


優雅な日常


その後も壱姫とヴィクトリアは雪の庭で優雅に時を過ごす。壱姫の笑い声が店内に響くたびに、雪乃たちはどこか安心しながらも、少しだけ呆れるのだった。


「それにしても、旅に出るとは見上げたものだ。」

壱姫が紅茶を口に運びながら呟く。


「確かに、アレックス殿下がこれを機に成長されると良いですね。」

ヴィクトリアが静かに付け加える。


「うむ、そうであるな。だが、あの殿下の行く先々で何かしら面白いことが起こるに違いない。」

壱姫の言葉に、雪乃たちは微妙な表情を浮かべる。


こうして壱姫たちの会話は続き、雪の庭には笑いと和やかな空気が広がっていった――。





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