港に停泊中の巨大な艦船「草薙の尊」。その甲板に現れた壱姫は、全員の視線を集めると、堂々とした声で宣言した。
「野郎ども、海賊の時間だ!」
その一言に船員たちはざわつく。艦長も驚きながら、思わず聞き返した。
「それは、海賊退治ということですか、壱姫殿下?」
壱姫は微笑みながら、鋭い目つきで頷く。
「そうだ。今、妾のないとほーくが飛び立っておる。じきに海賊どもの正確な位置が分かるだろう。準備を怠るな。」
艦長はその命令に敬礼し、大声で船員たちに指示を出した。
「聞いたとおりだ!野郎ども、出航準備を急げ!」
その声に応じて、甲板や船内では船員たちが慌ただしく動き始める。ロープを確認する者、武器を点検する者、エンジンを始動させる者――船全体が一気に活気づいた。
壱姫は甲板からその様子を眺め、満足そうに頷いた。
「さすがは草薙の尊の乗組員たち、無駄のない動きだ。」
その隣で控えていたヴィクトリアが、静かに口を開く。
「ないとほーくが戻り次第、正確な座標をお伝えします。それまでに準備を万全に整えておきます。」
「うむ、頼むぞ、ヴィクトリア。海賊どもを見つけたら、一気に叩く。」
壱姫の目は既に戦場を見据えているようだった。その堂々たる姿は、船員たちの士気をさらに高めていく。
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緊張高まる船内
船内では、武器庫や作戦室が慌ただしく動いていた。船員たちは、壱姫の指揮下での任務に少なからず緊張を感じていた。
「壱姫殿下が直接指揮を執るとなると、どんな作戦になるんだ……?」
「聞いた話じゃ、殿下はジパングでも伝説の海賊退治をしたらしいぞ。一夜にして海賊団を壊滅させたとか……。」
「まさか、本当にあの魔道粒子砲を使うのか?」
船員たちは口々に噂話を交わしていたが、その声に混じって艦長の一喝が飛ぶ。
「余計なことを話すな!今は殿下の指示に全力で従え!」
その言葉に、船員たちは一斉に動きを再開した。
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ないとほーくの帰還
やがて、甲板の上空に巨大な影が現れる。壱姫が放ったないとほーくが、海風を切り裂いて戻ってきたのだ。
「戻ったか。」
壱姫は静かに呟きながら、腕を伸ばしてないとほーくを迎え入れた。猛禽類は甲板に降り立ち、特殊な電子音を発する
ヴィクトリアの持つ魔導端末に地図データが送られてきた。
ヴィクトリアは、地図データを確認する。
「海賊どもの根城が判明しました。位置はここです。」
壱姫は地図を覗き込み、口角を上げた。
「ふむ、良い場所におるではないか。全員に告げよ、目的地はここだ。全速力で向かう!」
「はっ!」艦長が再び声を張り上げ、命令を船員たちに伝達する。
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出航
「草薙の尊」が港を離れ、海へと繰り出す。その姿はまるで海の覇者そのものだった。
壱姫は甲板で海風を受けながら、遠くを見つめて呟く。
「さあ、海賊ども……妾が直々に退治してくれるわ!」
その言葉に、ヴィクトリアも微笑みを浮かべて応じた。
「彼らがどれほどの抵抗を見せるか、楽しみですね。」
壱姫は鋭い眼差しを海の向こうへと向ける。これから始まる戦いは、彼女にとって単なる任務ではなく、彼女の存在を再び示す場となる――。
第39話 続き
出航命令
「錨を上げろ!出航だ!」
壱姫の威厳ある声が甲板に響き渡る。その一言を皮切りに、船員たちは一斉に動き始めた。
巨大な錨が音を立てながらゆっくりと引き上げられ、港の桟橋に繋がれていたロープも次々に解かれていく。「草薙の尊」はその巨体をゆっくりと動かし始め、港の三番埠頭を離れた。
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海へ繰り出す草薙の尊
エンジンが唸りを上げ、波を切り裂く音が響く。港を離れる草薙の尊は、その威容で近くの船や港の人々の視線を釘付けにしていた。
「なんだあの船は……」
「聞いた話じゃ、ジパングの王族専用の艦だとか。」
「ただの艦じゃない。魔道粒子砲を搭載してる化け物だってさ。」
港に残る者たちの噂話を背に、草薙の尊は堂々と海原へと繰り出していく。
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壱姫の指揮
壱姫は甲板の中央に立ち、冷静な目で周囲を見渡していた。その姿はまるで船そのものを支配しているかのようだった。
「海賊どもの根城の方角は分かっておるな?」
壱姫が艦長に問いかける。
艦長は敬礼しながら答えた。
「はい、殿下。先ほどないとほーくのデータとヴィクトリア様の指示により、方位は確認済みです。」
「良いだろう。速やかに目的地へ向かえ。全速力だ。」
「了解しました!」艦長が声を張り上げ、船員たちに指示を出す。
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海原の静寂
草薙の尊が海を進む中、壱姫は甲板に立ったまま、風を受けて静かに目を閉じた。
「海賊どもも、まさかこんな相手が来るとは思っていないだろうな。」
彼女の口元に浮かぶのは、ほんの少しの笑み。しかし、その笑みの裏には容赦ない意志が見え隠れしていた。
ヴィクトリアが静かに壱姫の隣に立ち、声をかける。
「殿下、間もなく海賊団の領域に入ります。」
「そうか。準備を怠るな。」
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迫る戦いの気配
草薙の尊は、広大な海原を進み続ける。その向かう先には、壱姫を迎え撃つ準備などできていない海賊たちが待ち受けている。
壱姫は船首に立ちながら、遠くを見つめて呟いた。
「さあ、いよいよ始まるな……妾の力、見せつけてやろうではないか。」
海風に乗るその声は、静かに、しかし確実に戦いの幕開けを告げていた――。
第39話 続き
ないとほーくの報告
壱姫は甲板の中央に立ち、周囲の船員たちの視線を集めながら、腕に止まるないとほーくに目をやった。猛禽の鋭い目は海風を感じつつも、忠実に主へ報告を伝えるべく、その翼を一振りする。
「ないとほーくの報告によれば、海賊船と思われるのは10隻程度……。」
その言葉に船員たちがざわついた。
「10隻ですか……。」
艦長が驚きを隠しきれず、壱姫を見上げる。
「数が多いと思うか? それならば心配いらぬ。」
壱姫は堂々たる口調で続けた。
「全艦沈める準備を進めよ。ただし――」
彼女の鋭い声が船員たちを静かにさせる。
「船は沈めるが、海賊どもは一人残らず捕縛するのだ。」
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船員たちの動揺
「全員捕縛……ですか?」
一人の若い船員が思わず声を漏らしたが、すぐに艦長がそれを抑えた。
「殿下の命令に異議を挟むな! 迅速に準備にかかれ!」
船員たちは慌ただしく動き出したが、その中には戸惑いの色を隠せない者もいた。
「殿下、捕縛となると手間が増えますが……よろしいのですか?」
艦長が静かに尋ねる。
壱姫は冷たい笑みを浮かべて言い放った。
「芸がないだろう? ただ全員沈めてしまっては、妾の力を見せつける機会が失われる。生き残りがいてこそ、妾の伝説は語り継がれるのだ。」
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準備進行
「なるほど……承知しました。」
艦長は短く返事をすると、部下たちへ再び指示を飛ばした。
「全員聞け! 海賊どもの船は沈めるが、奴らは必ず捕縛せよ! 捕虜用の檻を増設しろ!」
船内では、船員たちが命令に従い、捕虜を収容するための準備を急いで進めていた。
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壱姫の決意
壱姫は甲板の端に立ち、遠く水平線を見つめていた。
「全員捕縛してラルベニアの騎士に引き渡す……そのあと、彼らがどう裁くかは、この国の問題だ。だが、それだけではない。」
彼女はヴィクトリアに視線を向ける。