壱姫は甲板の中央に立ち、周囲の船員たちの視線を集めながら、腕に止まるないとほーくに目をやった。猛禽の鋭い目は海風を感じつつも、忠実に主へ報告を伝えるべく、その翼を一振りする。
「ないとほーくの報告によれば、海賊船と思われるのは10隻程度……。」
その言葉に船員たちがざわついた。
「10隻ですか……。」
艦長が驚きを隠しきれず、壱姫を見上げる。
「数が多いと思うか? それならば心配いらぬ。」
壱姫は堂々たる口調で続けた。
「全艦沈める準備を進めよ。ただし――」
彼女の鋭い声が船員たちを静かにさせる。
「船は沈めるが、海賊どもは一人残らず捕縛するのだ。」
船員たちの動揺
「全員捕縛……ですか?」
一人の若い船員が思わず声を漏らしたが、すぐに艦長がそれを抑えた。
「殿下の命令に異議を挟むな! 迅速に準備にかかれ!」
船員たちは慌ただしく動き出したが、その中には戸惑いの色を隠せない者もいた。
「殿下、捕縛となると手間が増えますが……よろしいのですか?」
艦長が静かに尋ねる。
壱姫は冷たい笑みを浮かべて言い放った。
「芸がないだろう? ただ全員沈めてしまっては、妾の力を見せつける機会が失われる。生き残りがいてこそ、妾の伝説は語り継がれるのだ。」
準備進行
「なるほど……承知しました。」
艦長は短く返事をすると、部下たちへ再び指示を飛ばした。
「全員聞け! 海賊どもの船は沈めるが、奴らは必ず捕縛せよ! 捕虜用の檻を増設しろ!」
船内では、船員たちが命令に従い、捕虜を収容するための準備を急いで進めていた。
壱姫の決意
壱姫は甲板の端に立ち、遠く水平線を見つめていた。
「全員捕縛してラルベニアの騎士に引き渡す……そのあと、彼らがどう裁くかは、この国の問題だ。だが、それだけではない。」
彼女はヴィクトリアに視線を向ける。
「ヴィクトリア、全海賊の名を記録しろ。そして、ジパングの領域に近づかぬよう、一生恐怖を植え付けてやる。」
ヴィクトリアは静かに一礼した。
「かしこまりました。」
戦闘への期待
壱姫は静かに言葉を続けた。
「海賊どもよ、妾の怒りを思い知るがよい。そして生き延びた者は、この力を語り継ぐ者となれ……それが妾の望みだ。」
海風がさらに強く吹き抜け、船体が沖合へと加速する。
いよいよ、壱姫と海賊団との戦いが幕を開けようとしていた――。
壱姫の理論
壱姫は甲板の中央に立ち、凛とした表情で船員たちを見渡した。その中にある迷いや不安を一蹴するように、冷静な声で言葉を発する。
「一応、他国民だ。犯罪者といえども、むやみに生命を奪うべきではない。」
船員たちは一瞬、その意外な言葉にざわめき始めた。だが、壱姫の次の一言がその場の空気を引き締める。
「命は、妾が裁くべきものではない。それは、この国の法と、正義に委ねるべきだからな。」
-艦長の反応
艦長はその言葉に深く頷き、声を張り上げて命令を下した。
「全員聞け! 壱姫殿下のご意向だ。海賊どもを生け捕りにし、この国の法に委ねる! 無駄に命を奪うな!」
船員たちは一斉に動き始めた。その手際には緊張感と共に、壱姫への信頼が垣間見えた。
ヴィクトリアの補足
ヴィクトリアが静かに壱姫の横に立ち、軽く目を細めながら言葉を添えた。
「さすが壱姫様、妾の行動には常に信念が伴っておりますね。」
壱姫は彼女をちらりと見て、軽く鼻を鳴らした。
「当たり前だ。妾の行動は、常に理と秩序に基づいているのだからな。」
海賊に対する方針
壱姫は再び水平線の彼方を見据え、厳しい口調で続けた。
「だが、勘違いするな。妾は情けをかけているのではない。奴らの命を残すのは、この国の未来を損なわぬため。そして、彼らに恐怖と教訓を刻むためだ。」
ヴィクトリアがさらに問いかけた。
「命を奪わずに、恐怖を植え付ける……具体的には、どのように?」
壱姫は冷たい笑みを浮かべ、軽く手を振った。
「それは追って分かる。妾の手腕を見届けるがよい。」
その言葉に、ヴィクトリアは小さく笑みを浮かべながら静かに一礼した。
「かしこまりました。期待しております。」
海風がさらに強く吹き付け、草薙の尊は沖合へと加速していく。
壱姫の揺るぎない信念の下、彼女の作戦は確実に形を成しつつあった――。