騎士団に振り返り、短く言葉を放つ。 「進むぞ。」
屋敷への突入
騎士たちの重い足音が響く中、壱姫を中心に屋敷への突入が始まった。扉をこじ開けると、屋敷の中では慌てふためく様子の使用人や兵士たちが混乱の中で動いていた。しかし、それでもハウゼン伯爵の部下たちは抵抗を試みてくる。
「抵抗するならば、容赦せぬぞ。」
壱姫が冷たく言い放つと、騎士たちは鋭く応じた。
戦闘の混乱
屋敷内での戦闘が始まる。ハウゼンの部下たちは次々と騎士たちに倒されていくが、それでもなお意外に多数の兵士が集結しており、屋敷内は激しい攻防戦となった。
壱姫に向かって迫る兵士たちもいたが、そのほとんどは夜の素早い動きに阻まれて倒されていく。夜は正確かつ迅速な動きで、敵を一人また一人と無力化していった。
壱姫の一瞬の刃
そんな中、一人の兵士が夜の猛攻をかいくぐり、ついに壱姫の眼前まで迫った。その兵士は震える手で剣を構え、壱姫に向かって飛びかかる。
「ほう?」
壱姫は微笑を浮かべ、冷静に兵士を見つめた。
「妾に迫ってくるとは、見事な勇気だ。褒美に妾が相手をしてやろうぞ。」
壱姫は腰に下げた剣をゆっくりと抜いた。剣が抜かれる音が屋敷内に静かに響く。その瞬間、時間が止まったかのように感じられた。
次の瞬間、壱姫の剣が一閃する。それはまるで光のように速く、目で追うことすら難しい動きだった。
剣を収めた壱姫は、何事もなかったかのように冷たい表情を浮かべている。対する兵士は、自分に何が起きたのか理解することもできず、無言のまま床に崩れ落ちた。
周囲の静寂
屋敷内にいたハウゼンの部下たちがその光景を見て一瞬静まり返る。壱姫の圧倒的な威圧感と技量に、誰もが息を呑んだ。
「次は誰だ?」
壱姫が冷静な声で問いかけると、誰一人として動く者はいなかった。
「ならば、進むぞ。」
壱姫は騎士たちに命じ、堂々と屋敷の奥へと歩みを進めた。
壱姫の冷酷かつ華麗な戦いぶりは、ハウゼン伯爵の部下たちの士気を完全に奪い去っていた――。
兵士たちが騎士団に次々と打ち倒される中、壱姫はまるで気にも留める様子もなく、夜を伴い悠然と屋敷の奥へと進んでいった。
「壱姫様、あまり前に出すぎると……」 夜が控えめに言いかけるが、壱姫は振り返ることなく手を軽く上げて制した。 「妾の行く手を阻む者などおらぬわ。ついてこい、夜。」
二人の足音だけが響く静かな廊下を進んでいくと、やがてその先に数名の兵士が立ちはだかった。彼らはこれまでの雑兵とは明らかに違い、統率された動きと隙のない構えを見せている。
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用心棒の挑発
「よくここまで来たな。」
先頭に立つ男が、鋭い目で壱姫を睨みつけた。
「だが、ここから先は行かせない。俺たちは、今までの雑兵どもとは格が違うんだよ。」
壱姫はその言葉に微笑を浮かべ、腕を組んでその場に立ち止まった。冷静な視線で兵士たちを見据える。
「ふむ、用心棒といったところか。お前たちが雑兵どもとどう違うか、確かめてやろう。」
壱姫は腰の剣に手をかけると、軽く目を細めた。 「夜、半分はお前に分けてやろう。妾も少しは楽しみたいからな。」
夜は一瞬、壱姫の言葉に戸惑ったように見えたが、すぐに短く頷き、手元の武器を構えた。 「承知しました。」
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戦闘開始
先頭の兵士が叫び声を上げながら壱姫に向かって突進してきた。同時に残りの兵士たちもそれぞれ二人を囲むようにして動き出す。
壱姫は鋭い笑みを浮かべながら剣を抜き、一瞬で前方の敵と間合いを詰める。
「さあ、その違いとやらを見せてみよ。」
そう言った瞬間、剣が一閃し、相手の剣がまるで紙切れのように両断される。男は何が起きたか理解する前に膝をつき、剣を落とした。
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夜の戦い
一方、夜もまた別の兵士たちと対峙していた。圧倒的なスピードと正確な動きで、相手の攻撃をかわしながら反撃を繰り出す。その冷徹で無駄のない動きに、兵士たちは次々と無力化されていく。
「お前、本当に人間か……?」
一人の兵士が震える声でつぶやくが、夜は一言も返さず、無表情のまま兵士を地面に倒した。
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戦闘の決着
最後の一人が倒れると、壱姫は剣を収め、ふと夜の方を振り返った。夜もその時には最後の相手を片付け、整然と立っていた。
「ふむ、なかなかの手練れだったが、妾たちの相手にはならんな。」
壱姫が軽く肩をすくめるように言うと、夜は静かに答える。 「想定より手強かったですが、問題ありませんでした。」
壱姫は満足そうに頷き、再び廊下の奥へと歩き出した。 「では、行くぞ。妾たちを止められる者など、この屋敷にはおらぬわ。」
その後ろ姿は、何事にも動じない堂々たる威厳に満ちていた。壱姫の行く手を阻む者は、もはや存在しない――そう思わせるほどの圧倒的な力が、そこにはあった。
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