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第41話 2:ジパングへの帰国



草薙の尊が港に到着し、壱姫や雪乃ら一行はジパングの地に足を踏み下ろした。港には歓迎のための人々が集まっており、壱姫は堂々とした足取りで王城へ向かう。一方で、雪乃は自身の師匠が営む店「夕影」を訪れることにした。


夕影にて


雪乃が店の暖簾をくぐると、奥から師匠の低く落ち着いた声が響いてきた。

「おお、雪乃か。久しいな。」


雪乃は深々と頭を下げて挨拶する。

「ご無沙汰しております、夕霧師匠。」


師匠は雪乃をじっと見つめ、やがて小さく頷いた。

「相変わらず元気そうで何よりだ。だが、今日はお前に頼みたいことがあってな。」


「私にできることでしょうか?」雪乃は少し首をかしげながら尋ねた。


師匠の頼み


夕霧師匠は肩をすくめ、苦笑いを浮かべながら答える。

「いや、お前にしかできないことだ。しかし簡単なことだよ。壱姫殿下に、当店にお越しになる際には、事前に連絡をしていただくよう頼んでくれ。」


雪乃は一瞬きょとんとしたが、すぐに困ったように笑った。

「無理です。」


「即答か!」師匠が驚きの声を上げる。


「壱姉様にそんなお願いをしても、絶対に聞き入れてもらえません。」

雪乃はため息をつきながら説明を続ける。

「壱姉様は事前に連絡なんて、そもそも必要だと思っていない方ですし、仮に頼んでも『面倒だ』と言って一笑に付されるのがオチです。」


師匠は頭を抱え込むような仕草を見せた。

「そうか……やはり、そう簡単にはいかんか。」


夕霧での再会


雪乃は静かに席に座り、お茶を勧められた。師匠が少し思案顔でつぶやく。

「だがな、壱姫殿下がお越しになると、他のお客が驚いてしまうのだよ。先日は突然のご来店で、店内がまるで戦場のようになったではないか。」


「師匠、それは仕方のないことです。壱姉様は……そういう方なのです。」

雪乃は苦笑しながらも、心の中で壱姫の豪快な姿を思い浮かべていた。


夕霧での会話


雪乃は少し困ったような表情を浮かべ、肩をすくめながら師匠に答えた。

「ヴィクトリアが連絡してくれるはずです。」


師匠はその言葉に少し安心したような顔を見せたが、すぐに眉をひそめる。

「確かにヴィクトリアは連絡してくれるが、当日、それも来店直前だ。それじゃ意味がないんだ!」


雪乃は苦笑しながら続ける。

「それ以上は無理です。なぜなら、壱姉様は突然『〇〇へ行こう』と言い出しますから。」


師匠の嘆き


師匠は頭を抱え、深いため息をついた。

「じゃあ、どうしろと言うんだ……。あの壱姫殿下が突然現れて店内が混乱するたび、心臓に悪いんだよ!」




師匠は雪乃の肩に手を置き、真剣な眼差しで訴えかけた。

「では、雪乃、お前に無理難題を頼むしかなくなる。」


雪乃は驚いたように眉を上げる。

「無理難題?」


師匠は深いため息をつきながら頷く。

「そうだ、雪乃。お前がこの王都に店を出すのだ。」


「え……?」


「そうすれば、壱姫殿下もお前の店に通うようになるだろう。そうなれば、うちの店は助かるんだ。」


雪乃は思わず声を上げた。

「えーーー?そ、そんな……私はラルベニアに店を持っています。こちらに店を出すなんて無理です!」


師匠は困ったように頭を掻きながらも、なおも食い下がる。

「無理難題を言ってるのは分かっている。だが、考えてみてくれ。師匠の頼みだ。」


雪乃はしばらく言葉に詰まったあと、肩を落として小さくため息をついた。

雪乃は微妙な表情を浮かべ、しばらく考え込む。

「わかりました。一度、月や花とも相談してみます。でも、確約はできませんからね。」


師匠はようやく少し安堵したように微笑む。

「それでいい、それでいいんだ。少しでも可能性があるなら、それで私は救われる。」


雪乃は内心複雑な思いを抱えながらも、師匠の熱意に押され、話を持ち帰ることを決めた。


夕霧でのやりとり(続き)


雪乃は頭を抱え、ぼそっと呟いた。

「ジパングに店…2店なんて…無理……。」


雪乃は疲れたように首を振る。

「物理的に無理……。ラルベニアの店をどうする?毎日行ったり来たりなんてできないし!」


月が頷きながら、苦笑いを浮かべる。

「うん、さすがにラルベニアとジパングを行き物理的に無理だわ」


師匠は手を組み、必死の表情で雪乃にすがる。

「そこをなんとか方法を考えてくれ!壱姫殿下が来るたびに、うちの店がどうなるかを想像してみろ。お客は怖がり、店は混乱し、ヴィクトリアが気を利かせてくれるまでの間はカオスだぞ!」


雪乃は困ったようにため息をつく。

「師匠の気持ちは分かるけど……でも、私はラルベニアの店を大事にしたい。あそこは、私たちが作り上げた場所だし…」





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