壱姫は玉座の前に立ち、式典の締めくくりとして、集まった賓客たちに向かって高らかに宣言した。
「ジパングの新たなる時代は、この妾が先導する。必ずや繁栄と平和をもたらしてみせよう。そして――その力を今、貴公らに証明してみせる」
会場がざわつく中、壱姫は扇を掲げ、城外の空を指差した。
「見よ。我が国の新旗艦――《日本武尊(やまとたける)》!」
次の瞬間、大広間の外で轟音が響いた。参列者たちは驚きに目を見開き、誘われるようにバルコニーへと足を運ぶ。
眼下に広がる空。そこに現れたのは、雲海を裂いて飛来する――巨大な空中戦艦だった。
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天を征く巨艦
その艦影、《日本武尊》は、先代の全国王が用いた《草薙の尊》を遥かに凌駕する五倍以上の巨体。艦首は鷲のように鋭く、艦体には金と銀の紋章が流麗に刻まれていた。
「空を……飛んでる……」
誰かの震える声が聞こえた。魔導エンジンの音が空を震わせ、まるで雷鳴のように城を包む。
艦載された無数の砲塔、魔導シールド、そして艦橋から覗く神眼のような光――すべてが最新鋭の魔導技術の結晶。まさに、壱姫の言葉を具現化した威容だった。
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賓客たちの驚愕
「……まさか、ここまでのものとは」
ラルベニアの第一王子・アレックスは、絶句しながら空を仰ぐ。傍らのヴィクトリアも目を見張りながら、そっと口元を引き結んだ。
「この浮力、そして兵装……ただの儀礼艦ではない。戦える――いや、国家すら砕ける力だ」
各国の使節たちも口を閉ざし、ただ呆然と巨大戦艦の出現を見守っていた。
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妹たちの反応
バルコニーの一角では、壱姫の妹たち――雪乃、月、そして末妹・花が立ち並んでいた。
「……あれ、ほんとに花が作ったの?」
雪乃は呆れたように眉をひそめた。
「末っ子の暴走ってレベルじゃないわね……」
月は手すりに寄りかかりながら、艦影から目を離せずにいた。
当の本人、末妹の花姫はというと、満面の笑みを浮かべ、両手を腰に当てて高らかに言った。
「えっへん! どう? 壱姉様にぴったりでしょ? この《日本武尊》、完璧すぎてもう我ながら怖いくらい!」
「怖いっていうか……もう君、何者なの……?」
雪乃は目を閉じ、深いため息をついた。
「壱姉様もすごいけど……花、ほんと末妹なのが信じられないわよ」
月も頭を抱えたまま、どこか楽しげに笑っていた。
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壱姫の微笑
人々の視線が空に釘付けになっている中、壱姫はゆっくりとバルコニーの前へ出て、堂々と宣言した。
「これぞ、ジパングの力――妾が導く、我が国の未来を象徴するものだ。この《日本武尊》と共に、ジパングは新たな空へと羽ばたく」
威風堂々とした壱姫の声に、会場の誰もが無言で頷くしかなかった。
その日、ジパング王国は世界に向けて新たな一歩を刻んだ。
そして、《日本武尊》と壱姫の名は、未来永劫に語り継がれることとなる。