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第47話:ラルベニア店、再オープン



ぴよぴよさんの留守番


雪の庭 ラルベニア店 は、しばらく休業していたが、ついに再オープンの日を迎えた。


店の扉を開け、久しぶりに足を踏み入れた雪乃たちを迎えたのは、店内の天井の梁にじっと佇む ぴよぴよさん だった。


「おかえりなさいませ、雪の庭の店員の皆様!」


……とでも言いたげに、ぴよぴよさんは 元気よく羽ばたき、店員たちの周りを嬉しそうに飛び回る。


「ただいま、ぴよぴよさん」

雪乃が優しく微笑むと、ぴよぴよさんはさらに勢いよく羽ばたき、雪乃の頭の周りを旋回し始めた。


「えっと……ぴよぴよさん、留守番ありがとう。でも、そろそろ、頭の周りを飛ぶのはやめて……」


しかし、ぴよぴよさんはすぐにはやめず、名残惜しそうに何度か旋回してから、ようやく天井の梁へと戻った。


「忠誠心の塊ですね」

クレアが感心したように言う。


「でも、あんなに愛される店長ってすごいと思います」

クラリスが微笑む。


「ぴよぴよさん……こんなに懐かれていたとは……」

雪乃は少し感動しながらも、ようやく深呼吸し、店の前に立った。


雪の庭、再オープン!


「それじゃ、お店を開けるよ」

月が宣言し、店員たちがそれぞれ準備に入る。


月が厨房でオーブンの火を調整し、クレアとクラリスが店内を整える。シモーヌは入り口でお客様を迎える準備をしている。


そして、月が大きく扉を開いた。


「長らくお休みさせていただきましたが――」


「喫茶店『雪の庭』、再オープンです!」


その声とともに、待ちわびたお客様たちが次々と店内へと入ってきた。


「やっと再開したのね!」

「ここのスコーンが食べたかったんだ!」

「ジパング店には行けなかったけど、やっぱりラルベニアの雪の庭が好き!」


次々と寄せられるお客様の声に、雪乃は改めてこの場所の大切さを実感する。


「お待たせしました、皆さん!今日は特別に、新作スイーツもご用意していますよ!」


その言葉に、店内の雰囲気は一気に明るくなった。





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ラルベニア店、再オープンと夜の“成長”



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常連客の気遣いと、店の温かさ


雪の庭 ラルベニア店 は、久しぶりの営業にもかかわらず、大盛況だった。

だが、それは決して 混雑しすぎることなく、スムーズに運営されていた。


その理由は、この店が常連客に愛されているから だった。


「お嬢さん、今日は空いてるかい?」

「すみません、少しお待ちくださいね。でも、満席になったら、スタードールさんでお待ちいただけると助かります」


そう、この店の常連たちは 雪乃が疲れて閉店してしまうことを知っている。

だからこそ、あえてスタードールで待機し、混雑を調整してくれていた のだ。


「やっぱり、この店が落ち着くのよね」

「でも、雪乃店長の体力の限界を超えさせたら大変だからな」


店の運営すら客が考慮してくれる――それこそが、雪の庭が愛される理由だった。



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新スタッフの驚きの転職


そんな中、再オープンを迎えた店内では、常連客の 驚きがもう一つあった。


「あれ?お姉さん、前スタードールにいなかった?」

「はい、こちらに転職しました」


そう答えたのは、新スタッフの クレア・アーシェン。


「ええっ!?スタードールの接客チーフだったよね!?」

「まさか、雪の庭に引き抜かれるとは……!」


驚く常連たち。

なにせ、スタードールと雪の庭は ラルベニアの二大人気喫茶店 だったのだ。


「だって、労働条件が圧倒的に良かったんですもの」

「給料倍、労働時間は半分……そりゃ勝てないわ」


「店長……それって経営的に大丈夫なのか?」

「大丈夫よ。私は、ちゃんと経営者としてやってるわ。」


雪乃はそう言いながら、(たぶん、たぶんね……) と心の中で呟いた。



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夜の“成長”に騒然!?


そして、店内でさらに 騒然とする出来事 が起こる。


「……え?夜ちゃん?」

「あれ?夜ちゃん、大きくなった?」


常連客たちの目に映ったのは、かつて小学生くらいだった夜が、中学生くらいの少女に成長している姿だった。


「ええっ!?この短期間でそんなに!?」

「いつの間に……?」


客たちは驚き、スタッフたちも戸惑いを隠せない。

しかし、夜本人はいつも通り、紅茶を運びながら、さらりと言い放つ。


「成長期なんです」


「成長期!?そんな急激に!?」

「いやいや、ちょっと前まであんなに小さかったのに……!」


店内がざわつくが、夜は気にする様子もなく、仕事をこなしている。


「まあ、成長期なら仕方ないよな……」

「確かに……人によっては急に背が伸びることもあるしな……」


客たちは無理やり納得し、会話を続ける。


客たちは 夜を普通の人間だと思っている。

そのため、店側も「夜は普通の女の子」として扱うしかなかった。


「成長期かぁ、羨ましいな……俺なんて中学で成長止まったのに……」

「そういうものですよね」と夜。


それを聞いた雪乃は、

「(……いや、違うから!!)」と心の中で叫んだ。



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ラルベニア店、順調な再出発へ


こうして、雪の庭 ラルベニア店 は、順調に再オープンを果たした。


常連たちの気遣い、優秀な新スタッフ、驚きの成長(?)を遂げた夜。


だが、雪乃は頭を抱えていた。


「……なんか、私の目指す“落ち着いた喫茶店”って、違う気がするのよね……」


しかし、その顔はどこか楽しそうだった。


この喫茶店は、今日も愛され、これからも騒がしく、温かく続いていく。

第47話:転移門の向こうから――小さいままの花!?



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突然の歓声に戸惑う花


転移門が開くと、そこから 花が姿を現した。

その瞬間、店内は 歓声 に包まれた。


「おおっ!花ちゃんは小さいままだー!」

「よかった!花ちゃんだけは変わってない!」

「夜ちゃんが急に大きくなったから、花ちゃんまで成長してたらどうしようかと思ったよ!」


「ええっ?なに?なに?なにーっ!?」


予想外の反応に 花は目を丸くして、周囲を見回す。


「ちょっと、どゆこと!?なんでそんなに喜ばれてるの!?」


花が戸惑っていると、常連客の一人が 真剣な顔 で語り始めた。



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常連たちの“成長ショック”


「いや、だってさ……夜ちゃん、めちゃくちゃ成長したじゃん?」

「そ、そうですね……成長期らしいですけど……」


「成長期って言っても、たった数週間で小学生から中学生くらいに急成長するなんて……そんなことある!?」

「たしかに……俺たちは騙されないぞ……って思ったけど、夜ちゃんは普通に接客してるし……。」


「でも、その点、花ちゃんは安心感ある!変わらず小さくて可愛いままだ!」


「ええぇ……なんか複雑……。私、そんなキャラじゃないんだけど……。」


「いやいや、花ちゃんはこのままでいてくれよ。」

「“永遠の天才少女”って感じで、いいじゃん!」

「俺たちの希望だよ!」


「ちょっと待て!勝手に希望にするな!」


思わぬ方向に話が進み、花は 両手をバタバタと振って 全力で抗議した。



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スタッフたちの反応


一方、店の奥では、雪乃と月がこっそり話していた。


「……なんか、花ちゃんのイメージがどんどん固定化されてるわね。」

「本人が意図しないまま、“小さいままの天才”になってるね……。」


「まぁ、事実、花は昔からあんまり背が伸びてないし……。」

「というか、花ちゃんって成長期まだ終わってないよね?」


「うーん……でも、花がもし本当に成長したら、今度はお客さんがショックを受けるかも……?」


「夜ちゃんのときみたいにね……。」


そう、夜が突然成長して 常連客がパニックになったばかりだった。

その経験を考えると、花まで急に背が伸びたら 騒動になりかねない。


「ま、まぁ……花ちゃんはこのままでいいんじゃない?」

「うん、うちの店は、みんなキャラが濃すぎるし、バランス的にもいいかもね。」



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花の“逆襲”宣言!?


しかし、そのやりとりを 花本人はしっかり聞いていた。


「……ふふふ、私だって成長するかもしれないのに、みんな好き勝手言ってくれるじゃない。」


花は ニヤリと不敵な笑み を浮かべると、腕を組んで 大胆な宣言 をした。


「いいわ、私だっていつか、夜みたいに“成長”してみせるわ!」


「お、おう……?」

「期待してる……?のかな?」


「ふふふ、私が大人になったら、みんな驚愕するわよ!」


そう言い放つ花だったが――


「あれ?でも、成長したら、お客さんたちにガッカリされる……?」


「……」


「うわぁ、どうしよう!?私、このままでいたほうがいいの!?」


思考が 迷走し始めた 花。


そんな様子を見た雪乃と月は 肩をすくめて 苦笑するのだった。


「花ちゃんは、このままがちょうどいい気がするわね……。」

「うん、本人が悩むことじゃないと思うけどね……。」



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そして、雪の庭は今日も賑やかに――


こうして、転移門を使って登場した花は 思わぬ人気 を得ることになった。

だが、それが 本人にとって良かったのかどうか は……まだ分からない。


だが、そんなことは気にせず、雪の庭は いつも通り、賑やかに営業を続けるのだった。




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