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第52話 国家関係と友人関係の危機6: – 皇帝の怒り



南蛮帝国の帝城、豪華な装飾が施された大広間に、怒りに満ちた声が響き渡る。


「あの馬鹿者め!一度ならずとも、二度までも私に恥をかかせよって!」


皇帝の拳が玉座の肘掛を打ち鳴らし、重々しい響きが広間を震わせた。彼の表情は険しく、側近たちは息を呑んでいた。


「この手で八つ裂きにしてやりたい!」


そう怒鳴り散らす皇帝に、恐る恐る一人の側近が口を開く。


「し、しかし陛下……。彼は前回の失態を取り戻そうと、ジパングから、我が国にとって有益な情報を集めようと……愛国心から行動したのです。決して利己的な目的では……」


しかし、次の瞬間、皇帝の目が鋭く光り、側近は言葉を詰まらせた。


「なおさら悪い!」


怒声が轟く。


「ジパングからそんな情報を得たら、両国の関係を悪化させることなど目に見えている!そんなことも分からぬような者を臣下にしていたかと思うと……情けない!」


沈黙が広間を支配する。別の側近が慎重に進言する。


「やはり、あの者への処罰は、我が国で行うべきだったのでは?」


「それができぬのだ!」


皇帝の声には、焦燥の色が滲んでいた。側近たちは顔を見合わせる。


「なぜでしょうか?」


「我々が奴を処分しようと引き取れば、"奴から情報が流れた"と疑われても潔白を証明できんのだ。」


皇帝の表情が険しさを増す。


「つまり、あいつの身柄を受け取った時点で、こちらは無実を証明する手立てを失う。ジパング側に渡った情報があるのかないのか、それすら疑われることになる。」


側近たちは神妙な面持ちで皇帝の言葉に頷く。


「あの者がこちらに引き渡されることなく、ジパングで処分されることこそ、我々が情報を得ていないと証明する唯一の手段なのだ。」


「なるほど……。」


側近たちの間に緊張が走る。皇帝は深く息を吐き、険しい顔をさらに歪めた。


「だが、それでもジパングとの関係は悪化を免れない……。」


皇帝の拳が強く握られる。


「だからこそ……なおのこと……奴が忌々しい!この手で八つ裂きにしてやりたいほどに!!」


その怒声に、側近たちは背筋を伸ばし、畏れを抱いた。


「奴のせいでジパングとも、そして……雪姫様との関係さえも……悪化してしまった……。」


皇帝の目が細められ、その奥には、怒りとは異なる感情が宿っていた。



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