目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第58話 華麗なる婚約式と七姉妹の集結



南蛮帝国王宮――。


婚約調印が滞りなく終わり、いよいよ正式な婚約式が行われることとなった。

この日のために、ジパング王国の七姉妹が再び集結。

王宮はかつてないほどの華やかさと緊張感に包まれていた。


1. 盛大な婚約式と月の提案


婚約式は、南蛮帝国とジパング王国の友好を象徴する一大イベントとなり、

国内外の貴族たちが招かれ、豪華絢爛な祝宴が開かれた。


式典の最中、月が興味津々といった様子で辺りを見渡し、ぽつりと呟く。


「……結婚式は、もっと盛大に華やかにやらないと。」


「えっ?」


突然の発言に、雪乃は驚いて月の方を振り向いた。


「これ以上、盛大って……」


戸惑いを隠せない雪乃。

今回の婚約式だけでも豪華絢爛そのものだった。

煌びやかな装飾、貴族たちの盛装、祝賀の音楽……

これ以上の豪華さを求めるというのか。


「もちろんよ。」

月はさらりと微笑みながら言う。


「だって、これはまだ婚約式。結婚式は、それ以上でなければ意味がないでしょう?」


「……うぅ。」


雪乃は言葉に詰まった。


隣で聞いていた風姫が、くすくすと笑う。


「まぁ、月の言うことも一理ありますわね。

 でも、婚約式でもこれほどの盛大さなのですもの、

 結婚式ともなれば、もはや一大国家行事ですわね。」


「……やっぱり、平民になって小さな結婚式をしたほうが良かったかしら……」


雪乃は、ぽつりとぼやいた。


「駄目ですわ。」


風姫が即答した。


2. 南蛮帝国の貴族たちと姫たちの優雅な対応


婚約式の祝宴では、南蛮帝国の貴族たちがジパング王国の姫君たちに次々とダンスを申し込むという光景が広がっていた。


貴族の間では、正式な場でのダンスの誘いは礼儀であり、外交の一環でもある。

特にジパング王国の姫たちは、その美貌と気品で多くの者の関心を引いていた。


雪乃、星姫、風姫、月姫、夢姫は、それぞれ貴族たちの誘いを受け、優雅に対応していた。


風姫は微笑みながらも、巧みに貴族たちを手玉に取るような会話術を披露し、

星姫は堅実ながらも礼儀正しく応じ、

月は楽しげに舞踏のステップを踏んでいた。


雪乃もまた、いくつかのダンスを踊りながら、

改めて自分の置かれた立場を実感する。


――私は、これから本当に南蛮帝国の皇后になるのだ。


そんな感慨にふける雪乃の目に、一つだけ異様な光景が飛び込んできた。


3. 壱姫女王の圧倒的オーラ


王宮の一角――。


そこにいたのは、ジパング王国の女王、壱姫。

彼女はひとり、周囲から異様に距離を取られていた。


まるで"結界"が張られているかのように、誰も彼女に近寄らない。


それもそのはず――。


「私は、誰の挑戦でも受ける……!」


そんなオーラを全身に発していたのだから。


その眼差しには威圧的な鋭さが宿り、

まるで今すぐにでも決闘を受ける覚悟があるかのような雰囲気を醸し出していた。


「壱姉様……」

雪乃は思わずため息をつく。


「せっかくの舞踏会なのに、そんな威圧感を放っていては誰も近づけませんよ……」


「ふん、つまらん。」

壱姫は杯を傾けながら、不機嫌そうに言った。


「南蛮帝国の貴族どもは、気位ばかり高くて骨のある者が少ないな。

 せめて、一人くらい"手合わせを所望する"くらいの気概を見せる者がいてもいいものを。」


「婚約式で決闘を望まないでください!!!」


雪乃が思わずツッコミを入れる。


だが、壱姫の隣にいた星姫も苦笑しながら言った。


「まぁ、誰も壱姫姉様に挑もうとは思わないでしょうね……」


「当然だ。」

壱姫は自信満々に胸を張った。


結果――婚約式の間、壱姫には誰一人として近寄る者はいなかった。


4. 花姫と厳重な護衛たち


一方、その反対側では、花姫が完全に"隔離"されていた。


彼女の周囲には、八人もの護衛騎士が配置され、厳重な警戒体制が敷かれていた。


もちろん、花自身が貴族たちの誘いを避けるためではない。

護衛たちは、彼女に対する不埒な者がいないか、聞き耳を立てて警戒していたのだ。


とはいえ――。


花自身は、ダンスにまるで興味を持っていなかった。


「……私は、踊るより新しい魔道具を作るほうがいい。」


そう呟きながら、グラスの中のジュースをくるくると回している。


彼女の周囲では、護衛たちが周囲の視線を警戒し続けていたが、

もはや誰も花に近づこうとはしていなかった。


5. 新たな未来へ


こうして、ジパング王国と南蛮帝国をつなぐ華麗なる婚約式は、無事に執り行われた。


そして、それぞれの姉妹たちが思い思いの時間を過ごす中、

雪乃は改めて、自らの未来について考える。


南蛮帝国の皇后となる――。


それは、王族としてではなく、

一人の女性としての人生を歩むことを意味していた。


「……これで、本当に良いのよね?」


ふと呟いた雪乃の言葉に、風姫が隣で微笑む。


「ええ、雪姉様。あなたの幸せのために、すべてが動いているのですから。」


雪乃は小さく息を吐き、改めて前を向いた。


こうして、彼女の新たな物語が幕を開ける――。





この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?