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第61話 転移門と花の多重タスク

1. 南蛮帝国・帝城 雪乃の部屋


南蛮帝国の帝城、そこには雪乃の皇后の部屋となる予定の部屋が用意されていた。

広々とした優雅な空間に、最高級の調度品が整えられている。


しかし、その片隅には異様な光景が広がっていた。


魔道具の山、魔石の輝き、そして無数の魔道端末が稼働している。


中央には、一枚のドアが静かに設置されていた。

それは、現在建設中の南蛮帝国の転移門だった。


目の前で軽快に端末を操作しているのは、ジパング王国の第七王女・花。


「……あなたがいつも忙しい忙しいと言いながら、次々と仕事を片付けていく理由がやっとわかったわ。」


雪乃は呆れたようにため息をつく。


花はまったく手を止めず、ブラインドタッチでデータを入力しながら、おしゃべりを続けている。


「え? 何か変?」


「普通、こんなにしゃべりながら、まったく手を止めずにできる仕事には見えないのだけれど?」


「転移門なら、もう何度も作ってるからね。目をつぶっててもできるよ♪」


「……あなた、何気に恐ろしいこと言ってるの、気づいてる?」



2. 花の驚異的な同時進行能力


雪乃は、目の前の花の手元をじっと見つめる。


「そうやって、同時にいくつも仕事をこなしていたわけね。」


「うん。まあ、兼業でできる仕事と、できない仕事があるけどね?」


「で? 今、何が同時進行してるの?」


花は指を動かしながら、軽い調子で答えた。


「転移門と、ぴよぴよさんのアップデートと、空中巡洋艦。」


「はぁ? 今、聞き捨てならない言葉が最後に聞こえたわよ?」


雪乃は眉をひそめる。


「空中巡洋艦? なにそれ、知らないんだけど?」


花は無邪気に笑いながら、さらりと答える。


「壱姫姉様がね、*空中戦艦だけじゃつまらない! 空中艦隊を配備したい!”って言い出したの。」


「……ちょっと待って?」


雪乃は呆れを通り越して、頭を抱えた。


「艦隊って……壱姉様も相変わらずだけど、それ以上に、あなたに呆れるわ!

また仕事を増やしてるじゃないの……しかも、兼業で進めてるし!」


「だって、日本武尊(やまとたける)の下位バージョンだし……簡単だよ?」


「……」


雪乃はもう何も言えなかった。



---


3. 花の異次元の技術力


「戦艦の設計が簡単って、あなた本当におかしくない?」


雪乃は、思わず花の額を指で突く。


「まあ、もともと空中戦艦**“日本武尊”**を作る時に、巡洋艦型の設計も考えてたし…」


「そんなもの、考えていた時点でおかしいのよ!」


雪乃のツッコミをよそに、花は淡々と作業を続ける。


「でも、壱姉様が喜ぶからいいじゃん?」


「そういう問題じゃないわ!」


花の技術力はすでに異次元の領域に達している。

このままでは、南蛮帝国にも空中艦隊が誕生してしまいかねない。


雪乃は大きくため息をついた。


「……本当に、あなたが一番恐ろしいわよ。」





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