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第62話 祝福の王都、旅立ちの日

1. 祝賀ムードに包まれる王都


ジパング王国の王都は、今、かつてないほどの祝賀ムードに包まれていた。


街の至るところには、.


「雪姫様、ご結婚おめでとうございます!」


と書かれた横断幕や、祝いののぼりが立てられている。


王城の塔には、ジパングの国旗とともに、南蛮帝国の旗が掲げられ、

人々はそれを見上げながら、姫君の門出を祝っていた。


「まさか、あの雪姫様がご結婚とはなぁ……!」


「南蛮帝国の皇帝陛下との婚姻なんて、まるで物語みたいだ!」


「これで両国の友好関係も盤石になるぞ!」


町の至るところで、市民たちが興奮気味に語り合っている。



---


2. 祝賀ムードの雪の庭


そして、雪姫が営んでいた**「雪の庭 ジパング店」**も、

いつもとは違う賑わいを見せていた。


雪乃の結婚が間近に迫り、

今日は、彼女が正式にジパングを旅立つ日でもあった。


「今日は特別メニューだって?」


「はい、オーナー……じゃなくて、雪姫様の結婚祝い特製スイーツセットです!」


「おぉ! こりゃ美味そうだ!」


店内には、祝福の雰囲気を演出する花々が飾られ、

特別なスイーツが振る舞われている。


カウンターの奥では、忍と弥生が忙しそうに動きながらも、

どこか名残惜しそうな表情を浮かべていた。


「……雪乃様が旅立つ日なんて、信じられませんね。」


「ほんとだよ……まだ実感が湧かない。」


弥生がしんみりと呟くと、忍も頷いた。


「でも、きっと帰ってきますよね?」


「当たり前よ! だって転移門もあるし……それに、雪乃様はこの店が好きなんだから。」


「そうですよね……。」


二人は微笑みながらも、どこか寂しげだった。



---


3. 姫たちの別れのとき


「雪姉様! もう出発の時間ですよ!」


店の奥で旅の支度をしていた雪乃のもとへ、花姫が駆け込んできた。


「ええ……わかってるわ。」


雪乃は、静かに店内を見渡した。


この店を開いてからの日々。


お客様との会話、

スイーツを作る楽しさ、

そして、自分が心から安らげる場所だったことを思い出す。


「……やっぱり寂しい?」


隣にいた月が、そんな雪乃の気持ちを察したように尋ねる。


「うん……ちょっとね。」


雪乃は微笑んだ。


「でも、大丈夫。だって、帰ってこられるもの。」


「うん、そうだね。」


月は静かに頷いた。


その時、外から魔道車の音が響く。

花の発明、馬も御者もいらない魔力で動く魔道車 自動制御で目的地まで移動する乗客以外、人のいらない無人車両だ。


いよいよ、南蛮帝国へ向かう時間だった。



---


4. 旅立ちと未来へ


王都の大通りには、見送りのために多くの人々が集まっていた。


「雪姫様! どうかお幸せに!」


「またいつでも帰ってきてくださいね!」


「南蛮帝国でも、美味しいお菓子を作ってください!」


「ありがとう、皆さん!」


雪乃は魔道車の窓から手を振りながら、王都の景色を目に焼き付けた。


その隣で、壱姫女王が腕を組みながら雪乃を見つめる。


「……後悔はないか?」


「うん。もう決めたことだから。」


「そうか。」


壱姫は小さく頷いた。


「まあ、お前が幸せなら、それでいい。」


「ありがとう、壱姉様。」


雪乃の隣には、花、月、風姫も一緒だった。


彼女たちはそれぞれの思いを胸に、魔道車に揺られながら、

新たな未来へと向かって進んでいく。



意外な花嫁


王都を後にした雪乃たちの馬車は、王宮へと向かっていた。

旅立つ前に、最後の王宮での儀式を終えなければならない。


そして、その王宮の一室では、雪乃の婚約を受けて、

ジパング王国の重臣たちが集まり、しみじみと語り合っていた。




「……まさか、雪姫様が一番最初にご成婚とはなぁ……。」


初老の宰相が驚きの表情を浮かべながら呟く。


「わしはてっきり、星姫様あたりが最初だとばかり思っておった。」


「それは私も同意ですね。」


隣に座る文官が深く頷く。


「星姫様は何より聡明で、外交の才能もあるお方ですから、

きっと早い段階で他国の王子との縁談がまとまるのだと……。」


「うむ。それに比べて、雪姫様は自由気ままなお方だったからなぁ……。」


「まさか南蛮帝国の皇帝陛下と結ばれるとは、誰が予想できたものか。」


重臣たちはそれぞれに感慨深げな表情を浮かべていた。


2. それぞれの反応


「しかし、よくよく考えれば、皇帝陛下にとっては理想の姫君だったのかもしれんな。」


「ほう? それはまたなぜ?」


「雪姫様は王族でありながらも、王族らしからぬお方。

政治に縛られるよりも、自分の好きなことを追求される方だった。」


「確かに……それがまた、皇帝陛下にとっては新鮮だったのかもしれませんな。」


「それに、あのお二人……妙に気が合っておられた。」


「うむ……雪姫様が皇帝陛下と会話している姿は、妙に自然であったな。」


「まるで旧知の仲のようでしたな。」


「……それを見抜いた風姫様の慧眼、侮れんぞ。」


「本当に……あの方は普段はおっとりしておられるが、策士ぶりが恐ろしい。」


重臣たちは風姫の策略を思い返しながら、苦笑を浮かべた。


3. 壱姫女王の本音


その話を、少し離れた席で聞いていた壱姫女王は、

腕を組んで、ふんっと鼻を鳴らした。


「星が最初に結婚すると思っていた、だと?」


「ふんっ、あいつはまだ結婚などせん。

というか、星のことだから、政略結婚には慎重になりすぎて、

結局誰とも縁が結ばれんのではないか?」


「……それにしても、まさか雪が一番乗りとはな。」


壱姫は、王座の肘掛けに肘をつきながら、目を細める。


「まあ……雪が幸せなら、それでいいが。」


「……あいつを泣かせたら、皇帝でも容赦しないがな。」


その最後の一言には、王宮の空気が凍りついたのだった。







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