「干し草風呂、実際にやったのは私も初めてだけど、割とうまくいった感じね。それっ」
ユーナは干し草を、リンの胸から首へ、そして下半身へと、手でまんべんなくスーッと広げていった。リンが身をよじる。
「くすぐったいです、お嬢様……」
「エヘヘ。肩まで温まらなきゃね!」
ユーナはリンの横に体を割り込ませ、ゴロンと寝っ転がると、自分自身の体の上にも残った干し草をかぶせていった。甘い香りが、二人の少女を包む。
干し草風呂。前世の世界では、ヨーロッパのアルプス山脈一帯で盛んな温熱療法である。干し草に圧力をかけて空気を押し出し、ぬるま湯へ浸けることによって、急速に発酵させ、発酵熱を発生させる。
「昔ね。とある農家の人が、干し草の上で居眠りしたまま、一晩過ごしたの。目が覚めたら、めっちゃめちゃ体調が良くなってたんだって。薬草成分を体内に取り込んだのね」
リンと一緒に天井を見上げながら、ユーナは言った。
「私も、このまま寝ちゃいたいなあ」
「でもお嬢様、そろそろフワンさんが帰ってきますよ」
「そうね。残りの湯で半身浴して、体に付いた干し草を落としましょう」
二人はかまどの灰で灰汁を取り、飼い葉桶で髪と体を清めると、脱いだ服を再び着て、フワンを待った。
しばらくして、フワンは部屋へ帰ってきた。ベッドの上に広げられた異物を発見すると、さすがの寛容な彼も目を大きく見開いて、「んー?」とうなりながら、困惑の表情を浮かべる。
ユーナはフワンに釈明した。
「びっくりさせて、ごめんなさいね。水に入るのは気が進まないって言うから、今日は取りあえず、これでお風呂の良さを体験してもらおうと思ったの。さあ、干し草のベッドをどうぞ」
ユーナのゴリ押しに根負けして、とうとうフワンは上着を脱いだ。上半身に肌着一枚だけを着て、緊張しながら、ゆっくりと横になる。
「おっ……おおっ!」
フワン爺さんがたちまち
「こ、これは……なかなか気持ちのいいものですなあ!」
「老廃物と一緒に、汗がたくさん出てくるから、起きたら体をよく拭いて、水分をしっかり飲んでね」
「腰痛が、スーッと軽くなります。まるで、雲の上に乗ったような気持ちです!」
ベッドの上で身じろぎもせず、フワンは未知の快感を、心ゆくまでゆっくり味わった。
ユーナは、そんなフワン爺さんの幸せそうな顔を
「お風呂に入る馬の気持ちが、ようやくお分かりですかな? フワンさん」