亡き屋敷の主人からの手紙は、ミライにとって衝撃的な内容だった。手紙の主、故アルフレッド卿は、かつては王国の重臣であり、王に忠誠を誓う高潔な人物だった。しかし、ある陰謀によって失脚させられ、不当にも追放されたという。その陰謀の中心にいたのが、現在王宮で大きな権力を握っているバルド侯爵だった。
アルフレッド卿は、生前、ミライが聖女として現れた頃から、彼女の力を高く評価していた。そして、彼女の身に危険が迫っていることを察知し、密かに調査を進めていたという。手紙には、ミライが陥れられた経緯、リリアンがどのようにして力を得たのか、そして、バルド侯爵の真の目的が詳細に記されていた。
バルド侯爵の目的は、単なる権力掌握ではなかった。彼は、古代の禁術を復活させ、王国を意のままに操ろうと企んでいた。リリアンは、そのための道具に過ぎず、ミライから奪った聖女の力は、禁術を完成させるための重要な鍵となるという。
ミライは手紙を握りしめ、深い怒りと同時に、恐ろしさを感じた。バルド侯爵の企みは、王国全体を危機に陥れる可能性を秘めていた。彼女は、真実を明らかにし、彼の野望を阻止しなければならないと強く思った。
手紙には、アルフレッド卿が密かに集めていた証拠も隠し場所も記されていた。それは、バルド侯爵の陰謀を暴くための重要な手がかりとなるはずだった。ミライは、老人に感謝の言葉を述べ、証拠の隠し場所へと向かうことにした。
隠し場所は、王都の地下にある古い廃墟だった。そこはかつて、古代の儀式が行われていた場所だという。ミライは、老人に教えてもらった地図を頼りに、廃墟の奥へと進んでいった。
薄暗くじめじめとした地下道を進むうちに、ミライは不気味な気配を感じ始めた。周囲には人の気配はないはずなのに、何かに見られているような感覚に襲われる。彼女は警戒しながら、慎重に足を進めた。
やがて、ミライは目的の場所にたどり着いた。そこは、小さな祭壇のような場所だった。祭壇の裏には隠し扉があり、その奥にアルフレッド卿が集めた証拠が隠されているはずだった。
ミライは隠し扉を開けようとしたが、扉は固く閉ざされていた。彼女は、賢者から教わった魔力を使って扉を開けようと試みた。すると、扉から微かな光が漏れ出し、ゆっくりと開いていった。
扉の奥には、いくつかの古い木箱が置かれていた。ミライは木箱を開け、中身を確認した。中には、バルド侯爵とリリアンの間でやり取りされた手紙や、禁術に関する古文書など、彼の陰謀を裏付ける証拠が詰まっていた。
ミライは証拠を手にし、これでバルド侯爵の悪事を暴けると確信した。しかし、その時、背後から冷たい声が聞こえた。
「よくぞここまでたどり着いたな、ミライ。」
振り返ると、そこに立っていたのは、バルド侯爵自身だった。彼の傍には、リリアンの姿もあった。リリアンは、以前とは見違えるほど傲慢な表情を浮かべていた。
「まさか、お前がここまで調べ上げていたとはな。」
バルド侯爵は冷笑を浮かべた。
「だが、お前の企みはここまでだ。」
バルド侯爵は、周囲に控えていた部下たちに合図を送った。すると、地下道の奥から大勢の兵士が現れ、ミライを取り囲んだ。
ミライは絶体絶命のピンチに陥った。しかし、彼女は諦めなかった。彼女は、アルフレッド卿の遺志を継ぎ、真実を明らかにするという強い決意を抱いていた。
「お前の悪事は、全て明らかになる!」
ミライはバルド侯爵に向かって叫んだ。
「お前の企みは、私が必ず阻止する!」
バルド侯爵は、ミライの言葉を聞いて、さらに不気味な笑みを浮かべた。
「面白い。だが、お前にそんな力はない。」
バルド侯爵は、リリアンに何かを囁いた。すると、リリアンは不気味な笑みを浮かべ、ミライに向かって手をかざした。彼女の手から放たれたのは、ミライから奪われたはずの聖女の力だった。
ミライは、再び絶望の淵に突き落とされた。しかし、彼女は最後の力を振り絞り、ある行動に出る。それは、バルド侯爵の陰謀を阻止するための、最後の賭けだった。