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第8話

 バルド侯爵とリリアンに追い詰められたミライは、絶体絶命の状況に立たされていた。リリアンから放たれた聖女の力は、以前ミライ自身が使っていたものとは異なり、黒く淀んだ邪悪なオーラを纏っていた。それは、バルド侯爵が行っている禁術の影響を受けて変質したものだった。


ミライは、その邪悪な力に圧倒されながらも、最後の力を振り絞った。彼女が取った行動は、逃げることでも戦うことでもなかった。彼女は、自身の内なる力、賢者との修行で目覚めさせた、聖女としての力とは異なる、人間としての強さ、知恵、勇気に賭けたのだ。


ミライは、バルド侯爵とリリアンに向かって、静かに語り始めた。


「バルド侯爵、あなたは一体何がしたいのですか?禁術を使って王国を操り、一体何を得ようとしているのですか?」


ミライの問いかけに、バルド侯爵は嘲笑を浮かべた。


「愚かな。お前には何も分かっていない。この力があれば、私は全てを手に入れることができる。富も、権力も、そして…永遠の命も!」


バルド侯爵の言葉に、ミライは悲しみを覚えた。彼は、力に取り憑かれ、大切なものを見失ってしまったのだ。


「それは違います!力は、人々を幸せにするために使うべきものです!あなたのように、自分の欲望を満たすために使うべきではありません!」


ミライは必死に訴えた。しかし、バルド侯爵は聞く耳を持たなかった。彼は、リリアンに合図を送り、ミライを攻撃するように命じた。


リリアンは、再び黒いオーラを放ち、ミライを攻撃しようとした。しかし、その時、ミライの体から微かな光が放たれた。それは、聖女の力とは異なる、温かく優しい光だった。


その光は、リリアンの放った黒いオーラとぶつかり合い、激しい光と衝撃波を生み出した。周囲の兵士たちは、その衝撃に吹き飛ばされた。


ミライの体から放たれた光は、彼女自身の内なる力、人々を信じ、人々を愛する心から生まれた力だった。それは、バルド侯爵の邪悪な力に対抗しうる、唯一の力だった。


光の衝撃によって、リリアンの黒いオーラは消滅し、彼女は意識を失って倒れた。バルド侯爵は、驚愕の表情でミライを見つめた。


「な…何…?一体何が起こった…?」


バルド侯爵は、混乱しながらも、ミライを攻撃しようとした。しかし、その時、地下道の入り口から大勢の人々が駆け込んできた。それは、ガイに率いられた王都の市民たちだった。


ガイは、ミライからバルド侯爵の陰謀を聞き、市民たちに真実を伝えていた。市民たちは、バルド侯爵の悪事を許すことができず、ミライを助けるために駆けつけたのだ。


市民たちの姿を見たバルド侯爵は、絶望の表情を浮かべた。彼は、もはや逃げられないことを悟った。


バルド侯爵は、抵抗を諦め、兵士たちに捕らえられた。彼の陰謀は、ミライと市民たちの力によって阻止されたのだ。


事件後、ミライは再び王都の人々に迎え入れられた。しかし、彼女は以前のように聖女としてではなく、一人の人間として、人々とともに生きることを選んだ。


リリアンは、バルド侯爵の操り人形となっていたことが考慮され、罪を償うために神殿で奉仕することになった。彼女は、以前の傲慢さを失い、謙虚な心を取り戻した。


ミライは、アルフレッド卿の遺志を継ぎ、王国の改革に尽力した。彼女は、人々の声に耳を傾け、人々が幸せに暮らせるように、様々な政策を提言した。


そして、ミライは、ガイと心を通わせるようになった。彼は、ミライが苦境に立たされた時、常に彼女を支え、助けてくれた。二人は、互いを深く理解し、尊敬し合う、かけがえのない存在となっていった。


ミライは、かつて絶望の淵に突き落とされた。しかし、彼女は諦めなかった。彼女は、自身の内なる力を信じ、真実を明らかにするために戦い抜いた。そして、彼女は、愛と勇気と希望を持って、新たな人生を歩み始めた。



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