:隠された仮面
夜の梟団との直接対決を経て、侯爵家は一時的に静寂を取り戻した。しかし、戦いはまだ終わっていないことをカミラもルイスも理解していた。敵の背後に潜むさらなる陰謀、そして未だ掴めていないエドワードの行方。そのすべてが、二人を休むことなく動かしていた。
カミラは執務室で、夜の梟団のリーダーと思われる男から得た断片的な情報を整理していた。彼の口から「消えた王族」という言葉が漏れたことが、頭から離れない。
「消えた王族……まさか、エドワードが関係しているの?」
カミラは一人考え込んでいた。その時、扉をノックする音が響いた。
「お嬢様、失礼します。」
ルイスが執務室に入ってきた。その背筋はピンと伸び、仮面の奥から冷静な声が響く。
「どうしたの、ルイス?」
カミラは顔を上げ、彼に目を向けた。
「捕らえた協力者たちから得た追加情報を報告します。」
ルイスが持ってきた報告書には、夜の梟団が追い続けているある人物の名前が記されていた。
「“ルイス・アークレイン”……あなたの名前がここにあるわ。」
カミラは驚きの表情を浮かべながら、ルイスに視線を向けた。
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◆隠された過去
ルイスは一瞬沈黙したが、やがて深い息をついて口を開いた。
「お嬢様、隠していたことをお詫びします。私の正体について、今お話ししなければなりません。」
カミラはその言葉に息を飲み、彼の言葉を待った。
「私は……かつて王族の一員でした。しかし、私の家系は政治的な陰謀に巻き込まれ、王位継承権を剥奪され、追放されました。」
「追放された王族……。」
「私の家系が王族から追われた理由は、他の貴族たちが私たちの影響力を恐れたからです。その結果、私は幼い頃から追っ手に命を狙われる生活を送ることになりました。」
ルイスの声には、冷静さの裏にかすかな苦悩が滲んでいた。
「夜の梟団が私を狙うのも、私が王族の末裔であることが理由です。彼らにとって、私の存在は邪魔なのです。」
「それで……仮面をつけているの?」
ルイスは一瞬だけ驚いたように目を見開き、やがて頷いた。
「はい。この仮面は、私の正体を隠すためのものです。ですが、それだけではありません。」
「それだけではない?」
「これは……私自身の弱さを隠すためでもあります。」
ルイスの声は僅かに震えた。
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◆カミラの動揺
彼の告白を聞いたカミラは、何か胸の中がざわつくような感情を覚えた。彼が常に冷静で完璧に見えたのは、この仮面の裏で隠された苦悩があったからだと気づいたからだ。
「ルイス……あなたはそんな苦しい思いを抱えながら、私のそばにいてくれたのね。」
「お嬢様、私はあなたを守るためにここにいます。それが私の役目であり、生きる意味です。」
ルイスは仮面越しにカミラを見つめながら、静かにそう告げた。その言葉に、カミラの胸に今までにない感情が湧き上がった。
「でも、それだけではないわね?」
カミラは彼を見つめ返した。
「あなたが私を守る理由は、単なる役目ではないはずよ。」
ルイスは短い沈黙の後、小さく微笑むように頷いた。
「その通りです。お嬢様……あなたは、私にとってただの主ではありません。」
その言葉を聞いた瞬間、カミラの頬が僅かに紅潮した。
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◆仮面の裏の感情
二人の間に沈黙が訪れた。仮面越しに視線を交わす中で、カミラは初めて自分の胸に抱いていた感情に気づき始めた。冷徹な「氷の令嬢」という仮面を被り続けてきた彼女が、その裏で孤独や不安を抱えていたことをルイスに見抜かれたような気がしたのだ。
「お嬢様……。」
ルイスが静かに言葉を紡ぐ。
「あなたもまた、その仮面の裏で何かを隠しているように見えます。」
カミラはその言葉にハッとし、反論しようとしたが、言葉が出なかった。
「私はただ――」
「ただ、家を守るために冷徹でいなければならない。それがあなたの本心ではないでしょう?」
ルイスの言葉は核心を突いていた。カミラは口を閉ざし、椅子に座り込んだ。彼の言葉は、彼女がこれまで隠し通してきた弱さを暴き出すものだった。
「私は……。」
カミラはうつむきながら、初めて心の内を明かした。
「私が冷徹でいなければ、誰も私を認めてくれないと思っていたの。父も、周りの貴族たちも……みんな私に完璧であることを求める。」
ルイスは黙って彼女の言葉を聞いていた。
「でも、そんな私は本当の私じゃない。時々、すべてを投げ出して逃げ出したくなるの……。」
その言葉に、ルイスは一歩近づき、そっと彼女の肩に手を置いた。
「お嬢様、あなたがどんな仮面を被っていようと、私はそのすべてを受け入れます。」
その言葉に、カミラは胸の中が少しだけ軽くなった気がした。そして初めて、ルイスという存在が自分にとって特別な意味を持つことを認めた。
:仮面の下の絆
ルイスの告白を聞いた翌日、カミラはいつになく早く目を覚ました。窓の外には薄い朝の光が差し込み、庭の草木が静かに揺れている。昨夜の会話が頭から離れず、胸にわずかな痛みと温かさが同時に宿っているような気がした。
「ルイス……。」
カミラはベッドから起き上がり、仮面の奥に秘められた彼の表情を想像した。彼の冷静な態度の裏には、想像を絶する過去と苦悩が隠されていた。それを知ったことで、彼に対する見方が変わってしまった。
「私は彼のことをどれだけ理解していたのかしら。」
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その日の午後、カミラは執務室でルイスと向き合っていた。昨夜と変わらない冷静な態度で報告を行う彼に対し、カミラは内心でためらいを感じていた。
「ルイス、昨夜の話だけれど……。」
切り出そうとした瞬間、彼は小さく頷いて答えた。
「お気になさらないでください、お嬢様。あれは私の過去であり、今の私の役目に影響するものではありません。」
「でも、あなたは自分の素性を隠しながら、ずっと私を支えてきたのよね?」
ルイスは一瞬だけ目を伏せ、静かに言葉を続けた。
「お嬢様の信頼を得るには、私の正体を隠す必要がありました。そして、それが唯一の方法でもありました。」
「正体を知られれば、命を狙われる可能性が高まる……それが理由なのね。」
「その通りです。」
カミラは彼の冷静な声の裏に隠された決意を感じ取った。しかし、それ以上に気になったのは、彼がその仮面の奥でどれほどの孤独を抱えているのかだった。
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◆二人だけの時間
その夜、カミラは思い切ってルイスを自室に呼び出した。これまで彼を私的な場に招いたことはなかったが、今はどうしても彼と向き合いたいと思った。
「お嬢様、何かご用でしょうか。」
ルイスはいつものように仮面をつけたまま現れた。
「座って。」
カミラは簡素なソファを指差し、彼を促した。
彼が座ると、カミラも向かいの椅子に腰掛けた。少し緊張した面持ちで口を開く。
「ルイス、仮面を外してくれない?」
その言葉に、ルイスは一瞬だけ動揺したように見えたが、すぐに冷静さを取り戻した。
「それはできません、お嬢様。」
「どうして?」
「私の顔は、私の過去そのものです。仮面を外すことで、私はまた狙われる存在になるでしょう。そして……お嬢様に余計な負担をかけることになるかもしれません。」
カミラはその言葉に息を呑んだ。彼が仮面を外すことを拒む理由が、単なる自己防衛ではなく、自分を守るためでもあることを理解したからだ。
「私は負担に思わないわ。それどころか、あなたの素顔を知らずにいる方が、私にとっては辛いの。」
その言葉に、ルイスはしばらく沈黙した。そして、ゆっくりと仮面に手を伸ばした。
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◆ルイスの素顔
仮面が外されると、そこには端正な顔立ちのルイスがいた。その顔には深い傷跡が一本走っており、それが彼の過去の苦難を物語っていた。
カミラは一瞬だけ驚いたが、すぐにその傷を気にする様子を見せず、彼の目をまっすぐに見つめた。
「あなたの素顔は……思った通り、冷静で強いわ。」
彼女は微笑みながらそう言った。その言葉にルイスはわずかに目を見開き、そして少しだけ困ったような笑みを浮かべた。
「お嬢様、私を恐れないのですね。」
「恐れる?どうして?あなたの過去も苦悩も、すべてあなたを形作る一部でしょう。それを知ったからといって、私の気持ちは変わらないわ。」
ルイスはその言葉を聞いてしばらく黙っていたが、やがて深く息をついて答えた。
「お嬢様、あなたのような方に仕えることができるのは、私にとって光栄です。そして、それ以上に……。」
彼が言葉を続けようとしたその瞬間、カミラが先に口を開いた。
「それ以上に、私はあなたに感謝しているわ。あなたがいなければ、私はきっと自分の弱さに負けていた。」
ルイスの目にかすかな感情が宿った。それは彼が仮面をつけていた間、一度も見せたことのない表情だった。
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◆深まる絆
その夜、二人は長い時間をかけて話し合った。お互いの過去や苦悩を共有し、これまで表には出さなかった感情を少しずつ打ち明けた。
「お嬢様、あなたが『氷の令嬢』と呼ばれているのは、決して弱さではありません。それはあなたが侯爵家を守るために選んだ姿です。」
「でも、それが偽りであることも事実よ。」
「偽りであっても、あなたの意志がそこに込められている限り、それは本当のあなたの一部です。」
ルイスの言葉に、カミラは胸の中が軽くなるのを感じた。彼と話すことで、少しだけ自分を認められるようになったのだ。
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その夜、ルイスが去った後、カミラは窓辺で月を見上げた。彼と共有した時間が、これまでにない安心感と温かさをもたらしてくれた。
「私が仮面を被っていても、彼は私を受け入れてくれる……。」
彼女の胸に宿る感情は、少しずつ確かなものへと変わりつつあった。
:孤独な二人
夜が更け、屋敷の中が静寂に包まれる中、カミラは自室の窓辺に佇んでいた。外には風が吹き、庭の草木が揺れている。昼間、父であるラルフ侯爵から「ルイスとの関係を断つように」と告げられた言葉が頭を離れない。
「関係を断つ……。」
その言葉を口にしただけで、胸の奥に刺さる痛みを感じた。ルイスは執事であり、自分の補佐役に過ぎない。けれど、彼がいることでどれほど救われたかを、カミラは知っていた。
「私は彼なしでは……。」
そのとき、扉をノックする音がした。
「お嬢様、ルイスです。」
彼の声が聞こえ、カミラは一瞬ためらったが、「入りなさい」と答えた。
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◆静かな夜の会話
ルイスが部屋に入ると、カミラはいつもの冷徹な表情を保とうとしたが、その努力はどこか脆く見えた。彼女の目には、微かな不安が浮かんでいるようだった。
「夜遅くに失礼いたします。先ほど、宮廷から新たな情報が届きました。」
ルイスは冷静に報告書を手渡しながら、彼女の様子を伺った。
「ありがとう。」
カミラは報告書を受け取り、内容に目を通したが、集中できない自分に気づいた。ルイスが仮面の奥でどんな表情をしているのか気になって仕方がなかったのだ。
「ルイス、少し話をしましょう。」
カミラが静かに言うと、彼は軽く頷いて椅子に腰を下ろした。
「父が今日、私にあなたとの関係について話してきたわ。」
ルイスは微かに眉を動かしたが、冷静さを崩さなかった。
「そうですか。どのような話だったのでしょうか。」
「あなたとの関係を断つべきだ、と。」
その言葉に、ルイスは一瞬だけ黙り込んだ。そして低い声で答えた。
「それが最善の選択かもしれません。」
「……あなたまでそんなことを言うのね。」
カミラはルイスの返答にわずかな怒りを覚えた。彼が自分にとって特別な存在であることを認めているのに、それを簡単に切り捨てるような態度が許せなかった。
「お嬢様、私はあなたに迷惑をかけるつもりはありません。」
ルイスは静かに続けた。
「私の存在があなたの名誉や立場を損なうのであれば、私はここを去るべきです。」
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◆心の内を明かす時
その言葉にカミラは胸が締め付けられるような感覚を覚えた。彼が自分のために身を引こうとしていることはわかったが、それがどれほど彼女の心を傷つけるかをルイスは理解していない。
「ルイス、あなたはどうしてそんなに自分を犠牲にしようとするの?」
彼女の問いに、ルイスは短く息をつき、仮面越しに彼女を見つめた。
「お嬢様、私はあなたを守ることが私の使命だと考えています。それ以上のことを望むべきではありません。」
「そんなこと、誰が決めたの?」
カミラの声が震えた。彼女は立ち上がり、ルイスの目の前に歩み寄った。
「私にとって、あなたはただの執事ではないわ。私が頼れる唯一の存在よ。」
ルイスは彼女の言葉を受け止めながらも、仮面の奥で微かに表情を変えた。しかし、彼はそれを表に出さないよう努めた。
「お嬢様、それがあなたにとっての真実であっても、私はあなたの期待に応えるべきではありません。」
「どうして?私がそう望んでいるのに!」
カミラの瞳には涙が浮かんでいた。それを見たルイスは一瞬だけ動揺を見せたが、すぐに深く息をついて言った。
「私は追放された王族です。過去に縛られた存在であり、あなたの未来にふさわしい人間ではありません。」
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◆孤独な二人
カミラはその言葉を聞き、静かに首を振った。
「そんなこと、私には関係ないわ。」
「お嬢様、私は……。」
ルイスが言葉を続けようとしたとき、カミラは彼の仮面に手を伸ばした。そしてそっと、それを外した。
「ルイス、私はあなたの素顔を知っている。それでも、私はあなたを信じている。」
素顔をさらされたルイスは、驚きと戸惑いの表情を浮かべた。しかし、カミラの真剣な眼差しに心を動かされたようだった。
「あなたがどう思おうと、私にとってあなたは特別な存在よ。」
ルイスは彼女の言葉を聞き、沈黙したまま視線を落とした。彼の心には、カミラへの感謝と、それを超えた感情が渦巻いていた。
「お嬢様、私は……。」
彼が何かを言おうとした瞬間、部屋の外から緊急の報告が入った。
「お嬢様、夜の梟団が再び動き始めたという情報が入りました!」
その声に、二人は現実に引き戻された。
「行きましょう。」
カミラは素早く気持ちを切り替え、指示を出す。
「はい、お嬢様。」
ルイスもまた、彼女のそばで仮面をつけ直し、共に歩み出した。
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◆未来への一歩
その夜、カミラとルイスは再び戦いに向かうため準備を進めた。互いに抱える感情を胸に秘めながらも、今は目の前の敵に立ち向かうことが最優先だった。
彼らがそれぞれの孤独と向き合い、絆を深めたその瞬間は、次なる困難への力となるはずだった――。
:引き裂かれる二人
夜の梟団が再び動き出したという情報を受け、カミラとルイスは執務室で緊急の作戦会議を行っていた。侵入者たちの制圧後も、組織は完全に静まることなく、次なる一手を伺っている。
「夜の梟団が狙っているのは侯爵家そのもの。次はもっと大きな行動を起こすでしょう。」
カミラは地図を指しながら冷静に状況を分析した。
「お嬢様、今回の動きは以前よりも組織的です。彼らが狙う場所や方法を先に突き止めなければなりません。」
ルイスが静かに答える。
「それにはどうするつもり?」
「彼らの動きを逆手に取るため、内部の協力者を使います。捕らえた者たちの中には、情報を引き出せる者がいるはずです。」
カミラは考え込むように視線を落とし、やがて頷いた。
「わかったわ。情報を確保するのが最優先ね。」
しかし、その言葉を口にしながらも、カミラの心には別の問題が引っかかっていた。それは、父からの「ルイスとの関係を断て」という厳命だった。
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◆噂と圧力
翌朝、カミラは父ラルフ侯爵に呼び出された。彼の執務室は重々しい空気に包まれており、カミラが入室するとすぐに鋭い視線が向けられた。
「カミラ、昨日の件について話す。」
「昨日の件……ですか?」
「お前とルイスの関係だ。」
その言葉に、カミラは冷静を装いながらも、胸の奥で緊張が高まるのを感じた。
「ルイスは優秀な執事だが、それ以上の関係を持つことは許されない。お前が侯爵家の令嬢である以上、軽率な行動は家の名誉に傷をつける。」
カミラは父の言葉に反論したい衝動を抑えた。彼が言うことには一定の正当性がある。しかし、ルイスとの絆を断つという選択肢がどれほど彼女にとって重いものかを、父は知らない。
「父上、私が彼に信頼を寄せているのは、彼が侯爵家のために尽力しているからです。それ以上の感情を抱いているわけではありません。」
「本当にそうか?」
ラルフはカミラの目を覗き込むように問いかけた。
カミラはその問いに答えず、ただ冷静な表情を保った。
「いいか、カミラ。侯爵家の未来はお前の手にかかっている。軽率な行動が許される余地はない。」
「承知しました。」
カミラは短く答え、執務室を後にした。その胸には、父への反発と、自分の立場に対する無力感が渦巻いていた。
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◆別れの決意
その夜、カミラはルイスを自室に呼び出した。執務室での父との会話を通じて、ある決意を固めていた。
「お嬢様、何かご用でしょうか。」
ルイスが部屋に入ると、カミラは静かに彼を迎え入れた。その顔にはどこか覚悟のようなものが浮かんでいた。
「ルイス……私たちは距離を置くべきだと思う。」
その言葉に、ルイスは目を伏せながら答えた。
「お嬢様、それがあなたの望みであれば、私はそれに従います。」
「私の望みではない。でも、私にはそれしか選べない。」
カミラの声には苦しみが滲んでいた。ルイスもまた、彼女の言葉がどれだけ重い決断であるかを感じ取っていた。
「お嬢様、私はあなたを守るためにここにいます。それがどのような形であれ、変わることはありません。」
「でも、あなたが私のそばにいることで、私たちの立場が危うくなる。」
「それでも、私は……。」
ルイスは言葉を続けようとしたが、カミラがそれを遮った。
「私がお願いしているの。これ以上、私を守ることで自分を危険に晒さないで。」
彼女の瞳には涙が浮かんでいた。その表情を見たルイスは、一歩前に進み、仮面の奥から静かに言葉を紡いだ。
「お嬢様、私はあなたの決断を尊重します。しかし、もし何かあれば、いつでも命を懸けて駆けつけます。」
カミラはその言葉に頷き、視線を床に落とした。
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◆別れの夜
ルイスが部屋を出た後、カミラは一人窓辺に立ち、夜空を見上げた。胸の中には、彼に対する感謝と、叶わぬ思いが交錯していた。
「私は彼を失いたくない。でも、私にはその権利がない……。」
彼女の瞳から一筋の涙が流れた。侯爵家の令嬢としての責任と、自分自身の気持ち。その狭間で揺れ動くカミラは、孤独に立ち尽くしていた。
一方、廊下を歩くルイスもまた、仮面の奥で感情を隠しながら静かに進んでいた。
「お嬢様を守る。それが私のすべてだ……。」
二人の間に存在する身分の壁。それは、彼らの感情を引き裂きながらも、互いを支え合う絆を深めていた。
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