それから一週間が経った頃。
俺はいつも通り一番端のカウンターにラナさんと向き合って座っていた。
「じゃあ、ワイバーンが街を襲撃したのは近くに生息地が出来たからなんですね」
「正確にはワイバーンの数が増えたことにより、生息地が広がったという感じですね」
これからも他の魔物が街を襲うような異常事態が起きているのか心配だったが、ワイバーンに集中して対処すれば良いということだろう。
それでも最悪の事態は避けられただけで、これからもワイバーンが街を襲う可能性があるということだ。
それに増えすぎたワイバーンは他の生態系も崩すだろう。
「それで国はどのような対応を?」
「まず選抜されたA級の冒険者は召集され、ワイバーン対応に向かうそうです。そして、ギルドで受けるワイバーン討伐の依頼も報酬を上げることになりました。しかし、報酬が上がったことにより初心者の冒険者が挑戦したら危ないのでワイバーン討伐はC級ランク以上。そして絶対にB級ランクより上の冒険者を三人以上入れるという規則が決まりました」
「なるほど……」
俺が納得していると、ラナさんがじっと俺と目を合わせた。
「ラナさん?」
「ジークさんはどうされますか?」
「俺は……」
もう決めている。
前にラナさんに言った通りだ。
「無理のない範囲で討伐に向かいます」
それで……
「でも、疲れたら休憩しても良いですか?」
ラナさんは当たり前のように笑った。
「前も言ったはずです。私も多少のズルは推奨派だと」
俺はこれからも頑張って仕事するだろう。
多少のズルを推奨してくれる受付嬢の隣で。
いや、カウンターを挟んで向かい合いながら。
無理はしない。疲れたら休む。
だから……
これから先も待ち合わせ場所は一番端のカウンターで。