俺がもう一度ワイバーンの目の前に立った時には、他の冒険者はもうワイバーンと戦闘を始めていた。
戦闘の補助をする形で応援に入る。
A級ランクの冒険者が指揮を取り、B級ランクの冒険者をまとめている。
統率の取れた戦闘でわずか20分ほどでワイバーンとの戦闘は終了した。
俺は目の前に倒れているワイバーンを呆然と見つめてしまう。
「ジークさん、だったかな。お疲れ様」
メインで指揮を取っていたA級ランクの冒険者が俺に声をかけてくれる。
「戻ってきてくれて助かったよ。それに俺たちが到着するまでも戦ってくれていたんだろう?」
「いえ、時間稼ぎすら出来たかどうか……」
「あはは、何を言っているんだか。ジークさんが戦わなかったら、もっと被害が出ていたことは確かだろう。それくらいは君も分かっていると思うけれど」
わざとからかうようにそう言ってくれるのは、俺を気遣ってのことだろう。
ワイバーンとの戦いを終えた後なのに、他の冒険者を気遣う余裕も残っているのは流石A級としか言えなかった。
他の冒険者たちは流石に疲れているようで、みんなで軽く労い合ってから共にギルドに戻っていく。
ワイバーンの討伐を終えた俺たちは
俺は時間稼ぎと補助しかしていないので、称賛は他の冒険者に任せてそっとギルドの隅にいるラナさんに近づいた。
ずっと聞きたかったことをラナさんに問い詰める。
「なんでワイバーンがいるところまで来たんですか。無事だったから良いものの危なすぎます」
「それは……ジークさんが心配というか、心配とは違うというか……」
「どういうことですか」
「なんかジークさんなら自分を犠牲にしてでも誰かを助けそうだなって思ったんです」
「いつもあんなに多少のズルを推奨している俺がですか?」
すると、ラナさんは心底意味が分からないとキョトンとした顔をした。
「そんなの関係あるはずないじゃないですか。だってジークさんは生粋の冒険者でしょう?」
その言葉で俺は悟った。
ああ、俺は一生ラナさんには敵わないな、と。
その時、先ほどラナさんに言った言葉が頭をよぎった。
『休みがあるから頑張れるんで。次は俺の休憩を手伝って下さい』
だから、俺は……
「ラナさん。俺は疲れたから暫くそこの椅子で寝ているので、15分ほどで起こしてくれますか?」
ラナさんが「任せて下さい!」と意気込んでくれる。
休みがあるから頑張れる。
でも、どうせ休むならラナさんと一緒が良い。
だってお昼寝同盟なのだから。