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第3話 父親に銃を教わる

 俺は父の知り合いのガンショップのおじさんに銃の使い方を教わり始めてから1ヶ月ほど経っていた。そんなある日、父親がこう言った。


「そんなに銃を撃ちたいなら、そろそろヴェスにも銃のことを教えてやろうか。」

「ありがとうございます!」


 俺は、おじさんから銃の使い方を教わってはいたものの、実は父親から直接学びたいとずっと思っていて、何度もお願いし続けていたのだ。そしてついに、父親の心が折れて、教えてくれることになった。


「まずは、このグロック19のマガジンに弾を込めて、マガジンを銃にセットし、スライドを手前に引くんだ。それから引き金を引く。」

「はい、父様。」

「あの的を撃ってみろ。まずはマガジンに弾を込めて、銃にセットし、スライドを引くんだ。」

「そうやって撃つんですね。」


 内心では、俺はすでに銃を撃ち慣れているつもりだった。でも、父親には内緒で練習していたので、そのことは黙っておくことにした。わざと外すのも不自然だと思ったから、いつも通り撃ってみた。


「ぐあっく! ヴェスは天才か! 前世で銃を撃ったことがあるんじゃないか?」

「いえ、そんなことありません。」


 俺があまりにも上手に撃つものだから、父親が変な声を出して驚いたのだ。まぁ、前世で銃を撃ったことはないけど、前世の記憶があるのは本当なので、少しドキッとした。おじさんには初めて撃った時から「天才」と呼ばれていたが、3ヶ月も経つと、自分で言うのもなんだけど、天才っぷりに磨きがかかっていた。


 もしかしたら、銃の扱いが天才的だから、本当に魔王を倒しちゃうんじゃないかと思った。でも、未だに魔法が使えないのが気にかかる。まぁ、そのうち使えるようになるだろう。


「ヴェスが天才なら、明日くらいに魔法弾を撃ってみようか。」

「本当ですか? 頑張ります!」


 この世界には、弾丸に魔法を込めた「魔法弾」と呼ばれるものがある。魔法弾は普通の弾丸と比べ物にならないほど反動が大きくなるらしい。だから、これから筋トレが必要だなと思った。


 次の日、俺はコルトM1911に魔法弾を込めた。今日の弾薬は「.45 ACP[Li]」らしい。この世界には魔法の種類と元素の数だけ魔法弾が存在し、専門店の店員でも全部は把握しきれていないそうだ。なかなか面白い世界だ。ちなみに、この弾薬に魔法でリチウムを込めると、弾速が速くなり、雷属性になるらしい。なぜリチウムで弾速が速くなり、雷の性質を持つのかはまだよく分からない。


 さっそく.45 ACP[Li]弾を撃ってみた。面白い。魔法が使えない俺でも、これを撃つと魔法を使ったような感覚になる。弾丸が雷をまとって射出され、的に当たると同時に雷魔法のような衝撃を与えるのだ。ただ、魔法弾は火力が格段に上がる分、反動もかなり大きい。これは練習が必要だ。


 前世ではネットでしか銃を見たことがなかったけど、この魔法弾丸の反動は明らかに前世の銃より強いだろう。魔法弾は、魔法が使えない銃使いにとって欠かせないものなんだろうなと思った。でも、この世界では魔法が使えない人はほとんどいない。父親でさえ魔法を使えるし、召喚魔法だって使えるくらいだ。


 訓練を終えたばかりの俺に、父親が声をかけてきた。


「そういえば、ヴェスのステータスって今どのくらいなんだ?」

「銃適性が2500くらいです。」

「私の銃適性が3000くらいなんだ。私と大差ないじゃないか……やっぱりヴェスは天才だな。」


 このステータスは「ステータスプレート」で確認できる。先代の国王がステータスプレートの生産を推し進めたおかげで、今ではどこの店でも安く手に入るようになった。そのため、魔法学校ではクラスメート同士でステータスを見せ合ったり、ステータスが低すぎる子がいじめられたりすることもあるらしい。この世界にもいじめがあるなんて、嫌なものだ。












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