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第4話 ギャルもいいかもしれない

 今日は隣町に買い出しに行く日だ。今日の買い物リストは、パスタ、魚、魔物の干し肉、そして俺の住む町では手に入らない薬草など、色々ある。この町の肉屋にはよく通っているけど、ベヒーモスの燻製肉は絶品だ。前世で言う鹿肉の燻製みたいな感じだろうか。


 いつも思うけど、初めてこの隣町に来た時は驚いた。やっぱり俺の町以外ではガンショップが少なく、銃を持っている人もほとんどいない。それに、魔法使いっぽい人が多いのも特徴だ。魔法を使うには、杖やロッドといった「魔道具」が必要だからで、俺の町以外ではそういう道具を持っている人が目立つ。ただし、先生であっても一部の人は、魔道具を使わずに魔法を使うことができる。


 それと、たまにだけど、他の町に買い出しに行くとジロジロ見られることがある。前世で外国人が日本に来た時に見つめてしまう感覚と似ているのかな。それほど、この世界では銃使いが珍しいということだ。魔法社会っぷりがよく分かる。俺もそろそろ魔法を使ってみたいけど、まだ使えないままなんだよな…。

 魔物の干し肉をいつも買う店に行くと、今日は俺と同い年くらいの女の子が店番をしていた。


「いらっしゃい。今日は何の肉が欲しい?」

「ベヒーモスの肉をください。」

「はいよー。」

「あ、君って銃使いのヴェスク君?」

「はい、ヴェスクです!」

「君の町のガンショップのおじさんと知り合いだから聞いたよ。銃の扱いが天才的だってね。」

「天才ではないけど、銃は使えますよ。」

「またー、そんな謙遜しちゃってー。」


 この子、魔法学校の生徒かな? 校章をつけているし。おそらくそうだろう。


「ねえ、ヴェスク君、私にも銃のこと教えてよ! 結構興味あるんだ。その代わり、お姉さんが何でも知りたいこと教えてあげるよー。それに、銃使いってかっこいいじゃん。それに、君って私のタイプだし。」


 い、いきなり告白!? 初めて告白されたから、どう反応していいか分からない…。それより「何でも」か…。それは色々聞きたいな。

「はい、いつでも聞いてください。僕、まだ魔法が使えなくて…。」

「そっか。魔法が使えないって噂、本当だったんだ。大変だねー。でも、銃使いだから何とかなるでしょ!」

「まぁ、一応何とかなってます。」

「頑張ってほしいし、サービスするからまた来てね。あと、お店以外でもどこかで会えたらいいね。」


 明るくてギャルっぽい子はちょっと苦手意識があったけど、好意を寄せられてどんどん話しかけられると悪い気はしない。今まで見た目で判断しがちだったけど、すべて見た目で決めるのはよくないなと反省した。第一印象は大事だけど、ギャルっぽい子も悪くない、いや、むしろいいと思えてきた。

 気分がいいので、今日は銃の練習が捗りそうだ。そんなことを考えながら買い出しを終え、俺は帰宅した。

 母に食材を渡し、帰るなり自宅の射撃場で銃の訓練を始めた。練習していると、父が言った。


「そういえば、今日はヴェスクの誕生日だな。」


 そして、誕生日プレゼントとしてSIGサウザーP320を父から2丁もらった。

 前世のSIGサウザーP320はカスタムすれば色々な弾を装填できるけど、この世界のSIGサウザーP320はボタン一つで自動的に形が変形し、その形に合った弾を装填するだけ。とても便利だ。他の銃もこの形式になればいいのにと思う。ちなみに、前世のSIGサウザーP320は弾薬ごとにパーツを組み替える必要があって面倒だった。

 せっかくだから、そのまま「サウ1号」「サウ2号」と勝手に名付けた。でも、どっちが1号か2号か分からなくなるのは内緒だ。まあ、これは自分で決めてるだけで、普段声に出したりはしないんだけど。


 ふと疑問が湧いた。この世界は魔法を使う人が多いのに、なぜ父親は銃が使えるんだろう? 姉はまあ、父親から教わったんだろうけど。訓練が終わったタイミングで聞いてみることにした。


「父さん、なぜ銃が使えるんですか?」


「それはな、この町で育ったからだよ。この町は銃が身近で、使える人も多い。みんな銃が好きなんだ。父さんもこのメカメカしい見た目や、形状、色が違うところ、撃った時の衝撃が銃ごとに違うのが面白くてさ。それに、魔法弾を組み合わせると銃の戦い方は無限に広がる。この町には銃ばかり集めてる有名なコレクターのおじさんもいるくらいだ。他の町じゃ考えられないよ。とはいえ、この世界は基本的に魔法が強いし、魔法を使える者が偉くなれるんだけどね。それでも父さんは銃が好きだ。この町が好きだから、少しでも魔物を退治して守りたい。そのためには強くならなきゃいけない。ヴェスクも強くなるんだぞ。」

「分かりました。頑張ります。」


 俺も同じ気持ちだ。大事な人を守るためには強くならなきゃ。魔物にこの町をめちゃくちゃにされて、当たり前の日常が消えるなんて嫌だ。この話を聞いて、銃の扱いが天才的な俺でも、もっと練習しようと決意した。





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