そして、父に銃の撃ち方などを教えてもらってから1か月ほど経ったある日、「ヴェスは天才だから、通称『中級者の森』と呼ばれるクイナの森に行こう」と父に言われた。通常、この場所は1~3年で到達できるレベルに達するもので、遅い者だと4年以上かかると言われているらしい。ちなみに、姉も一緒についてきた。
一般的に異世界ファンタジーに登場しそうなスライム、スケルトン、コボルト、ラット、インプなどがその森の浅い部分に生息しており、深い森にはリッチ、スケルトンソルジャー、コボルト、オーク、ヒュドラ、ジャイアントラットなどがいるそうだ。
森に入ってすぐ、スライムが現れた。1匹は俺の通常弾で簡単に倒せたが、1匹倒しても次から次へと現れてくる。ちなみに、某ドラ〇ンクエストのように目があるのか透明なのかは分からないが、目がついているようには見えなかった。
父が険しい表情で囁いた。
「あれはスライムモドキだ。中級レベルの魔物で、見た目などはほとんどスライムと変わらないが、唯一の違いはスライムより少し小さいという特徴だ。しかし、スライムより圧倒的に強いため、初心者がうかつに近づいて被害が出ることが問題になっている魔物だ。ただ、中級者の森の入り口でスライムモドキが出るのは珍しい。1匹いれば何十匹もいるし、危険だよ。ゴキブリが1匹いたら他に100匹いると思え、と言われるようなものだ。」
「そうなんですか。それは大変ですね…。どうやって倒せばいいんですか?」
「そうだな。通常弾では厳しいから、魔法弾を使ったり、魔法で倒したりするしかないな。」
父によると、スライムモドキがいればキングスライムモドキもいるらしい。キングスライムと聞くと、某ゲームを思い出す。前世の幼少期によく遊んだ『7』を思い出すのだ。でも、どうやらそのゲームとは容姿が違うらしい。当然といえば当然だが、少しだけ似た見た目で現れてほしいなんて思ったのは内緒だ。ちなみに、スライムは初心者レベルの冒険者が戦う程度の魔物だが、スライムモドキは中級者レベルの冒険者が相手にするほどの強さらしい。スライムモドキの方がスライムよりかなり強いのか。ちょっと突っ込みを入れたくなるが、異世界とはそういうものなのだろうか。
俺は、9x19mmパラベラム[Be]弾を使用した。この弾は毒の状態異常を付与するもので、熱伝導性が高く、雷魔法や炎魔法を重ねると火力が上がるのだ。そして、9x19mmパラベラム[Be]弾をスライムモドキに向けて撃つ。魔法弾薬ということもあり、銃の反動が強く、制御が少し難しい。ただ、俺は天才なので、このくらいはなんてことない。
父も魔法を詠唱し、ポイズンを使っているようだ。姉も続いてポイズンを使っている。弾だけのダメージはほとんどないようだが、毒が効いているのか、スライムモドキの動きが徐々に遅くなってきた。
「毒魔法をまんべんなく私たちが撃ち続けるから、ヴェスはBe弾でダメージを稼いでくれ。」
「分かった!」
「そういえば、お姉ちゃんはスライムモドキを見たことあるの? スライムとの違いが分かる?」
「え? 今? 戦闘中だよ! まぁ、答えてあげるよ。お、お、お姉ちゃんは主人公より長く生きてるんだから、違いくらい分かるよ。」
俺はたまに空気が読めないことがある。それにしても、姉は嘘が下手だ。この様子だと、見分けがつかないのだろう。
先ほどのゴキブリの話のように、スライムモドキがどんどん現れる。毒は効いているものの、なかなか討伐できない。体力が多いのだろうか。
構わず、スライムモドキに次々と弾を当てていく。スライムモドキの数が50匹、60匹、100匹と増えてきたとき、父が口を開いた。
「ヴェス! フレイ! ここは一旦逃げよう。キリがない。」
「逃げよう! おー!」
と姉が愉快に言った。
「そうですね。キリがないから俺も逃げたいです。」
俺もそう言って、スライムモドキから逃れるため、森の奥へと走って逃げ込んだ。幸い、スライムモドキは足が遅い。足はないのだが…。スライムよりも遅いのだ。だから、キリがなかったり危なくなったりしたら、逃げるのが一番らしい。