そして、次へ進もうとしたその瞬間、ハイリザードマンが3体現れた。
父がすぐさま口を開いた。
「ここは、中級者の森だよな?」
「父様、やっぱりおかしいですよね。」
「そんなにおかしいことなんですか?」
「あれはハイリザードマン? そんなに強いんですか?」
「あれは上級魔物に分類される。それが中級者の森にいるなんて異常だ。」
ハイリザードマンは、上級の魔物らしい。ステータスプレートでレベルを確認してみると、レベルは100だ。さっきのカイザーオーガと比べ物にならないほど高く、手ごわそうな相手だ。通常のリザードマンは2.5メートルほどだが、ハイリザードマンはその2倍ぐらいの大きさはありそうだ。
果たして、3体のレベル100のハイリザードマンを倒せるのか。不安だが、やるしかない。父がいれば大丈夫だろうか。
「私が奴らを引き付ける。その間に奴らを撃て。」
「はい、わかりました。」
「フレイは、パラライズだ。」
「わかりました、父様。」
「リザードマンだから、状態異常効果の麻痺弾を使うんだ。」
「わかりました。」
リザードマンの種類には、基本的に麻痺がよく効くらしい。そもそもこの世界の麻痺付与の魔法弾は、弱体化の効果もあるため、結構強いとされている。
父が引き付けている間に、俺が後ろから撃つ。父もハイリザードマンの攻撃を避けつつ、パラライズを放つ。
1発目を撃ったが、かわされた。あの巨体なのに動きが素早く、まるで前世の2mを超えても俊敏に動くNBA選手のようだ。しかし、ハイリザードマンはNBA選手とはわけが違う。5~6mはある巨体でありながら、思ったより素早く厄介な相手だ。それに、体も頑丈だ。
さらに2発、3発と撃った。今度は1体に命中したが、麻痺が効いていないようだ。1発では効果がないのだろうか。次々に撃ち、1体に10発ほど当てたが、まるで効いている感じがしない。
やはり、上級魔物でも状態付与魔法が効く場合があるらしいが、これは魔族が生み出した魔物なのだろうか。
魔族が生み出した魔物は、通常よりも強力な場合が多いと聞く。
どうしたらいい? いくら考えても思いつかない。情けないが、父に頼るしかないか。そう思っていると、父が口を開いた。
「通常の魔物とは違い、パラライズが効かないな。ひたすら氷魔法が弱点なので、私が氷魔法で攻撃する。フレイも氷魔法を頼む。ヴェスは、とにかくどんどん弾を撃て。」
「はい、父様!」
俺と姉が勢いよく返事をした。
「父の言われたとおりに、どんどん弾を撃ってみます。」
サウに.45 ACP[ブリザードストーム(少)]弾を装填し、ハイリザードマンめがけて射撃した。魔法のブリザードストームほどではないが、弾丸を中心に小さな氷の嵐を発生させながら、弾薬はハイリザードマンに向かっていった。魔法弾薬のブリザードストームでもそれなりの威力はあるようで、多少ダメージは与えているようだが、足止めにもならず、ダメージも大して与えられていない感じがした。これが上級魔物か……。
弾にブリザードストームの魔法があまり込められていないというのもあるが、これが銃の限界なのか。そう思っている間に、父はさまざまな氷魔法を繰り出す。アイスウォールで氷の壁を作り敵を足止めし、姉がアイスノックで氷の彫刻を作り出して突進させ、アイスロックで氷の塊をハイリザードマンの頭上に落とす。
俺も負けじと、サウ2号を取り出し、アキンボでどんどん弾を撃つ。だが、やはり魔法が絶対的なこの世界では、父の魔法の方が効いている感じがする。氷魔法のせいか少し寒くなり、手がかじかむ。そして、油断した隙に1体のハイリザードマンに切りかかられた。
左手を負傷した。これが刃物による痛みか。リザードマンは武器を扱えるほどの知性がある。さらに、ハイリザードマンは通常のリザードマンより賢い。父が引き付けていたとしても、頭がいいのでこちらにも攻撃してきたのだ。
「大丈夫か、ヴェス!」
「はい、なんとか。」
父と姉が遠くから回復魔法を使ってくれた。何とか傷はほぼ癒えた。やはり、上級魔物ともなると、銃だけでは太刀打ちできないのか。銃の扱いは天才と言われたが、魔法が絶対的な世界で銃の天才と言われても何の意味もない。
前世でも何の能力もなく、役立たずだったが、今回もそうなのか。いや、今回こそは強く生きると決めたんだ。ダメだ俺、弱気になっては。きっと銃だけでも未来は開けると信じたい…いや、信じるんだ。
そう思い、少し涙ぐみながら、どんどん弾を撃った。だが、相変わらず弱る気配がない。父が口を開いた。
「別の作戦でいこう。」