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第7話 強い魔物と戦う【クイナの森編】

 そして、次へ進もうとしたその瞬間、ハイリザードマンが3体現れた。

 父がすぐさま口を開いた。


「ここは、中級者の森だよな?」

「父様、やっぱりおかしいですよね。」

「そんなにおかしいことなんですか?」

「あれはハイリザードマン? そんなに強いんですか?」

「あれは上級魔物に分類される。それが中級者の森にいるなんて異常だ。」


 ハイリザードマンは、上級の魔物らしい。ステータスプレートでレベルを確認してみると、レベルは100だ。さっきのカイザーオーガと比べ物にならないほど高く、手ごわそうな相手だ。通常のリザードマンは2.5メートルほどだが、ハイリザードマンはその2倍ぐらいの大きさはありそうだ。


 果たして、3体のレベル100のハイリザードマンを倒せるのか。不安だが、やるしかない。父がいれば大丈夫だろうか。


「私が奴らを引き付ける。その間に奴らを撃て。」

「はい、わかりました。」

「フレイは、パラライズだ。」

「わかりました、父様。」

「リザードマンだから、状態異常効果の麻痺弾を使うんだ。」

「わかりました。」


 リザードマンの種類には、基本的に麻痺がよく効くらしい。そもそもこの世界の麻痺付与の魔法弾は、弱体化の効果もあるため、結構強いとされている。


 父が引き付けている間に、俺が後ろから撃つ。父もハイリザードマンの攻撃を避けつつ、パラライズを放つ。


 1発目を撃ったが、かわされた。あの巨体なのに動きが素早く、まるで前世の2mを超えても俊敏に動くNBA選手のようだ。しかし、ハイリザードマンはNBA選手とはわけが違う。5~6mはある巨体でありながら、思ったより素早く厄介な相手だ。それに、体も頑丈だ。


 さらに2発、3発と撃った。今度は1体に命中したが、麻痺が効いていないようだ。1発では効果がないのだろうか。次々に撃ち、1体に10発ほど当てたが、まるで効いている感じがしない。


 やはり、上級魔物でも状態付与魔法が効く場合があるらしいが、これは魔族が生み出した魔物なのだろうか。


 魔族が生み出した魔物は、通常よりも強力な場合が多いと聞く。


 どうしたらいい? いくら考えても思いつかない。情けないが、父に頼るしかないか。そう思っていると、父が口を開いた。


「通常の魔物とは違い、パラライズが効かないな。ひたすら氷魔法が弱点なので、私が氷魔法で攻撃する。フレイも氷魔法を頼む。ヴェスは、とにかくどんどん弾を撃て。」

「はい、父様!」


 俺と姉が勢いよく返事をした。


「父の言われたとおりに、どんどん弾を撃ってみます。」


 サウに.45 ACP[ブリザードストーム(少)]弾を装填し、ハイリザードマンめがけて射撃した。魔法のブリザードストームほどではないが、弾丸を中心に小さな氷の嵐を発生させながら、弾薬はハイリザードマンに向かっていった。魔法弾薬のブリザードストームでもそれなりの威力はあるようで、多少ダメージは与えているようだが、足止めにもならず、ダメージも大して与えられていない感じがした。これが上級魔物か……。


 弾にブリザードストームの魔法があまり込められていないというのもあるが、これが銃の限界なのか。そう思っている間に、父はさまざまな氷魔法を繰り出す。アイスウォールで氷の壁を作り敵を足止めし、姉がアイスノックで氷の彫刻を作り出して突進させ、アイスロックで氷の塊をハイリザードマンの頭上に落とす。


 俺も負けじと、サウ2号を取り出し、アキンボでどんどん弾を撃つ。だが、やはり魔法が絶対的なこの世界では、父の魔法の方が効いている感じがする。氷魔法のせいか少し寒くなり、手がかじかむ。そして、油断した隙に1体のハイリザードマンに切りかかられた。


 左手を負傷した。これが刃物による痛みか。リザードマンは武器を扱えるほどの知性がある。さらに、ハイリザードマンは通常のリザードマンより賢い。父が引き付けていたとしても、頭がいいのでこちらにも攻撃してきたのだ。


「大丈夫か、ヴェス!」

「はい、なんとか。」


 父と姉が遠くから回復魔法を使ってくれた。何とか傷はほぼ癒えた。やはり、上級魔物ともなると、銃だけでは太刀打ちできないのか。銃の扱いは天才と言われたが、魔法が絶対的な世界で銃の天才と言われても何の意味もない。


 前世でも何の能力もなく、役立たずだったが、今回もそうなのか。いや、今回こそは強く生きると決めたんだ。ダメだ俺、弱気になっては。きっと銃だけでも未来は開けると信じたい…いや、信じるんだ。


 そう思い、少し涙ぐみながら、どんどん弾を撃った。だが、相変わらず弱る気配がない。父が口を開いた。


「別の作戦でいこう。」



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