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第10話 父が…

 14歳になったけど、未だに魔法が使えない。初級魔法すら使えないんだ。父は銃と魔法が使えた。母は魔法が使える。姉も銃と魔法が使える。でも俺は銃しか扱えない。なんで俺だけ? これまで母や姉、父に魔法を教えてもらって鍛錬を積んできたけど、どうやら俺には魔法が使えないらしい…。


ある日、魔法の特訓をしている時に気になったことがあったから聞いてみた。

「お姉ちゃんは魔法使えるけど、どの属性が使えるの? 火属性と風属性は知ってるけど。」

「私は火と風と雷と土属性が使えるよ。すごいでしょ。」


4属性使えるのはちょっと珍しい。これは父と母の遺伝だろうか。

「ところで、魔法の属性って何種類あるんだっけ?」

「ヴェス、そんなことも知らないの? 基本5属性の火、風、水、雷、土に、闇、光、毒を加えた8属性よ。」

「僕は魔法が使えないけど、適性は全属性あるよ。」

「そういう人は珍しいね。全属性の適性がある人って、大賢神様と賢神様くらいしか聞いたことがないよ。」

「ヴェス、もっと魔法の練習しなよ。使えるようになったら、すごい魔法が使えるようになるよ。きっと。」

「分かった。お姉ちゃんの言う通り、魔法の練習の時間を増やしてみる。」


姉はからかいながらも、いつも心配してくれる。

「ヴェスが魔法使えなくても、私は軽蔑したりしないし、気にしないよ。魔法が使えなくてもいいと思う。銃だけ使えれば。それに、ヴェスは大事な弟だもん。」


やはり俺の姉だ。ブラコンな所は少々気になるが、それでもいつも心配してくれるので、やっぱりたった一人の俺にとってのお姉ちゃんである。


そして、銃の技術や戦闘方法を教えてもらうようになって2年経ち、14歳になって数ヶ月経ったある日、魔族によって父が殺されてしまった。あんな強い父が魔族に殺されるなんて信じられない…。銃の扱いが本当に上手いと言われてた父なのに…。父より強かった魔族のことより、父が亡くなったという事実が信じられず、受け止められない…。


俺みたいな銃しか使えない息子でも、父は幸せだったんだろうか。父の人生は満足いくものだったんだろうか。そう思ってしまい、もっと感謝を伝えるべきだったと後悔している。毎日働いて、時間がある時は銃の技術を教えてくれたんだから…。今でも家に帰ると、父が「今日も銃の特訓やるか?」って顔でこっちを見てくる気がする。本当に悲しい。


父が亡くなって1ヶ月経つけど、それ以来、夜はすぐ眠れない日々が続いている。寝る前になると、どうしても嫌なことを思い出してしまう。血だらけになった父が頭に浮かんでくる。だから夜が嫌いだ。特に寝る前の真夜中。本当に夜が嫌いだ。


「ヴェス、父様が亡くなってつらいかもしれないけど、前向きに生きてね。何かあったら、いつでもお姉ちゃんに言いなよ。いつでも話を聞いてあげるから。それと、つらいだろうけど、母様の作ったご飯はちゃんと食べてね。ご飯食べないと元気が出ないし、銃の特訓で途中で倒れちゃうよ。あと、エッチなことを夜遅くまでしないで、ちゃんと早く寝て睡眠時間を確保してね。つらかったら、お姉ちゃんの胸に飛び込んできていいから。」


姉もつらいだろうに、弟のことを一番に考えてくれる。いい姉だ。こういう姉が俺は好きだ。でも、ちょっとブラコンな部分もある。夜のあれ、姉にバレてたのか…。恥ずかしい。でも、姉がブラコンだからまだちょっと平気な部分もある。ブラコンすぎて困る時もあるけど…。


それでも、こういう部分も含めて姉のことが好きだ。姉を守るためにも、もっと強くならなきゃ。そして、天国にいる父のためにも強くなる。父は偉大だった。召喚魔法も使えるのに、銃の才能もあったのだ。自慢の父である。その自慢の父は、銃の町プロディアスをもっといい街にしたいと常々話していた。それと、銃の力で魔物から人々を救いたいと言っていた。だから、その父が天国から褒めてもらうために、必死に毎日銃や魔法の特訓をする。そして、俺は父の分も姉に教わりながら、銃を極めると誓うことにした。













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