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第2話 裁判での奮闘

 ナヴィアは、豪華な装飾が施された裁判所の広間に連れて来られた。高い天井には帝国の紋章が描かれているが、その厳かな雰囲気は彼女にとって恐ろしいものに映っていた。広間の中心には小さな椅子があり、そこに座らされたナヴィアは、いつもと違う緊張感に胸がドキドキしていた。


「これからナヴィア・レグナス殿下の裁判を行います。」

裁判官が重々しい声で宣言すると、ナヴィアはきょとんとした顔で尋ねた。


「裁判ってなぁに?なんでわたし、こんなところにいるの?」


宰相ダリウスは冷たく微笑みながら、手元の書類を持ち上げた。


「ナヴィア殿下、あなたが国家反逆を企てた罪で訴えられているのです。」


「こっかはんぎゃく……?」

ナヴィアは首を傾げた。「それって、なんなの?おっきい言葉で、わかんないよ!」


裁判所内がざわめく。ナヴィアの幼い声と無邪気な反応に、傍聴席の人々が戸惑いの表情を浮かべた。


「国家反逆とは、陛下を裏切り、帝国を転覆させようとする行為のことです。」

ダリウスが冷たく説明すると、ナヴィアは目を見開いて声を上げた。


「えっ!?わたしが!?そんなのするわけないでしょ!だって、わたし、お父様がだーい好きだもん!」


「それでも証拠があるのです。」

ダリウスはそう言って書類を掲げた。「これをご覧ください。ナヴィア殿下が宰相府に送った手紙です。そこには陛下を暗殺し、自らが皇帝になる計画が詳細に書かれています。」



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ナヴィアの抗弁


ナヴィアは椅子から身を乗り出し、目の前の書類をじっと見た。彼女の小さな目がじーっと文字を追った後、ぴしゃりと声を上げた。


「これ、わたしの字じゃないもん!」


傍聴席が再びざわめく。ナヴィアは真剣な顔で続けた。


「わたし、まだこんなむずかしい字、書けないよ!だって5歳だもん!」


裁判官たちが顔を見合わせる。その様子を見たダリウスは、少しだけ目を細めた。


「ですが、ナヴィア殿下の名前がしっかりと記されています。これは揺るぎない証拠です。」


ナヴィアは眉をひそめ、じっとダリウスを見つめた。そして、大きな声で言った。


「それ、おかしいよ!だって、そんなことする人が自分の名前を書くわけないでしょ!わたし、そんなバカじゃないもん!」


裁判所内のざわつきがさらに大きくなる。傍聴人たちの中には、ナヴィアの言葉に頷く者もいれば、まだ疑念を抱く者もいた。



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裁判官の反応


裁判官の一人が咳払いをし、冷静な声で言った。


「しかし、ナヴィア殿下、証拠は十分に揃っています。あなたの字ではないとしても、内容が一致している以上、反逆罪は免れません。」


ナヴィアは小さな拳を握りしめた。


「わたし、お父様を守りたいの!わたしが反逆するなんて、ぜったいないもん!お父様をころそうなんて、ぜーったい思わない!」


その言葉に一部の傍聴人が声を上げた。


「5歳の子供が本当にそんなことをするだろうか?」

「いや、しかし、証拠があるなら……。」


ダリウスは静かに手を挙げ、群衆を静めた。そして、冷たく言い放つ。


「ナヴィア殿下の言葉に惑わされてはいけません。幼いからこそ、その無邪気さを利用して大人を欺くことも可能なのです。」



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判決の瞬間


「これ以上の議論は不要です。」

裁判官たちは無表情で判決を告げた。


「ナヴィア・レグナス殿下、国家反逆罪により国外追放を命じます。」


ナヴィアは椅子から立ち上がり、小さな手を振りながら叫んだ。


「えーっ!追放ってなに?わたし、そんなことしてないもん!」


裁判所内は一瞬静まり返ったが、ダリウスが冷静にまとめ上げる。


「追放とは、帝国の外に出てもらうことです。あなたはこれから、帝国には二度と戻ることができません。」


ナヴィアの目に涙が浮かんだ。


「そんなのひどいよ……!お父様に会えなくなっちゃう……!」


ダリウスは冷たい笑みを浮かべながら、ナヴィアに背を向けた。


「では、速やかに準備を整え、ナヴィア殿下を帝国から送り出してください。」



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アルマの支え


裁判所から連れ出されたナヴィアは、涙をこぼしながらアルマの手を握りしめた。


「アルマ、わたし、何もしてないのに……。お父様に会いたいよ……。」


アルマは彼女の頭を優しく撫でながら、言った。


「大丈夫です、ナヴィア様。必ずまた陛下に会える日が来ます。そのために、今はしっかりと前を向きましょう。」


ナヴィアは涙を拭い、小さく頷いた。


「うん……わたし、負けないもん……!お父様を助ける!」


こうして、ナヴィアの国外追放が決定され、彼女の長い旅が始まるのだった。




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