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第3話 追放の旅立ち

 ナヴィアは小さな手で涙をぬぐいながら、侍女アルマに支えられて宮殿を後にした。父のいる大好きな宮殿を離れることになり、胸がぎゅうっと痛む。


「アルマ、わたし、本当に追い出されちゃうの?」

ナヴィアの目には涙がたまり、声が震えていた。


「大丈夫です、ナヴィア様。この旅はきっと、新しい未来への第一歩です。」

アルマは優しく言いながら、ナヴィアの手をぎゅっと握りしめた。


ナヴィアはその言葉に少しだけ元気を取り戻したものの、まだ不安が拭えない。


「でも、お父様に会えないまま、さようならするなんて、そんなのいやだよ……。」

アルマは微笑みながら、ナヴィアの肩に手を置いた。


「陛下はきっと、ナヴィア様のことを信じて待っておられます。だからこそ、ナヴィア様が元気でいることが何より大切です。」



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馬車での旅立ち


ナヴィアとアルマを乗せた馬車が、ゆっくりと宮殿を出発した。馬車の中で、ナヴィアは不安そうに窓の外を見つめていた。


「アルマ、この馬車、どこに行くの?」

ナヴィアの幼い声には、少しだけ冒険心が混じっていた。


「隣国のエトワール王国です。セリーナ様がいらっしゃる国ですよ。」

アルマの説明を聞いて、ナヴィアの目が輝いた。


「セリーナお姉様に会えるの!?それならちょっと楽しみ!」


ナヴィアは少しだけ笑顔を見せたが、すぐにまた考え込んだような表情になった。


「でも、セリーナお姉様に会ったら、わたし、どうしたらいいのかな?お父様を助ける方法、わからないよ……。」


アルマはナヴィアの小さな手を握り、静かに言った。


「ナヴィア様、まずはセリーナ様にお話を聞いていただきましょう。そして、一緒に考えましょう。」


ナヴィアはその言葉にうなずき、小さな拳を握りしめた。


「うん、わかった!お姉様と一緒なら、きっと何かできるよね!」



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旅路の危機


馬車は山道にさしかかり、周囲がだんだん暗くなってきた。その時、突然馬車がガタンと大きく揺れた。


「きゃっ!」

ナヴィアは驚き、アルマにしがみついた。


「ナヴィア様、ご安心ください。私がいますから。」

アルマがナヴィアを抱きしめて安心させようとしたその瞬間、外から荒々しい声が聞こえた。


「止まれ!馬車を降りろ!」


ナヴィアは目を見開き、小さな声でささやいた。


「アルマ、誰かが怒ってる……怖いよ……。」


「大丈夫です、ナヴィア様。私が守ります。」

アルマは冷静な声で答え、馬車の扉を少しだけ開けて外を確認した。


そこには、武器を持った男たちが馬車を囲んでいた。男たちはニヤニヤと不気味な笑みを浮かべながら近づいてくる。


「この馬車の中に王女がいるんだろう?出てこい!」

その声を聞いたナヴィアは震えながら、アルマの後ろに隠れた。


「アルマ、あの人たち、誰なの?どうしてわたしを探してるの?」


「……宰相の差し金かもしれません。」

アルマは険しい表情を浮かべながら、ナヴィアを守るように体を張った。


「ナヴィア様、ここでじっとしていてください。」

アルマが馬車を降りようとしたその時、突然、馬車の外で大きな声が響いた。


「おい、こいつらは何をやってるんだ?」



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謎の青年の登場


男たちが驚いて振り返ると、そこには一人の青年が立っていた。背の高いその青年は、鋭い目で男たちを睨みつけている。


「お前たち、こんな小さな馬車を襲うなんて、情けないと思わないのか?」

青年の声には怒りが込められていた。


男たちは動揺しながらも、武器を構えた。


「なんだお前!関係ないなら引っ込んでろ!」


「関係ないかどうかは、これから決める。」

青年はそう言うと、素早い動きで男たちに向かっていった。


「すごい……!」

ナヴィアは馬車の中からその様子を見て、目を輝かせた。青年の動きは驚くほど早く、男たちが次々と倒されていく。


「アルマ、あの人、すごく強いね!」


「ええ、本当に……。」

アルマも感心しながら、ナヴィアをしっかりと守っていた。



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助けられたナヴィア


男たちが全て倒れた後、青年は馬車に近づいてきた。ナヴィアは恐る恐る窓から顔を出し、小さな声で尋ねた。


「あなた、誰なの?」


青年は微笑みながら答えた。


「俺はビクター。ただの冒険者さ。」


「ビクターさん、ありがとう!わたし、ナヴィアっていうの!」


ビクターはその名前を聞いて、一瞬だけ驚いたような表情を浮かべたが、すぐに微笑みを浮かべた。


「ナヴィアか。可愛い名前だな。それより、君たちが無事でよかった。」



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新たな決意


ビクターとアルマのおかげで安全を確保したナヴィアは、改めて自分の胸に手を当てて決意した。


「アルマ、ビクターさん、ありがとう。わたし、もっと頑張る!お父様を助けるために、絶対負けない!」


ビクターはその言葉を聞き、少しだけ不思議そうな顔をしながらも頷いた。


「そうか。君がそんなに頑張るなら、俺も力を貸すよ。」


こうしてナヴィアは、新たな仲間とともに、次の目的地であるエトワール王国へ向かう旅を再開するのだった。



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