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第4話 覚醒する決意

馬車の中、ナヴィアは膝を抱えて座っていた。山道を抜けたものの、先ほどの襲撃の記憶が頭から離れない。アルマがそっと膝をついて、ナヴィアの顔を覗き込む。


「ナヴィア様、大丈夫ですか?」

「……怖かったけど、今は平気。」


ナヴィアは小さな声で答えたが、その目には幼いながらも強い決意が宿っていた。


「アルマ、さっきの人たち、なんでわたしを襲ったのかな?」

ナヴィアが真剣な表情で尋ねると、アルマは少し困ったように眉を下げた。


「……宰相の命令かもしれません。」

「宰相の?」


ナヴィアは眉をひそめ、考え込む。


「どうして宰相さんがそんなことするの?追放されただけで、もう帝国にはいないのに……。」


アルマは言葉を選びながら説明した。


「おそらく、ナヴィア様が生きているだけで、宰相にとって脅威になるからです。ナヴィア様がいる限り、正当な皇位継承者としての存在が消えません。」


「……そっか。だから、わたしを狙ってるんだね。」


ナヴィアは窓の外を見つめながら、小さく呟いた。その小さな手をぎゅっと握りしめる。


「でも、それっておかしいよね。わたし、ただお父様を助けたいだけなのに……。」


アルマはナヴィアの肩に手を置き、そっと励ました。


「ナヴィア様、お気を強く持ってください。必ず陛下を助ける方法があります。」


ナヴィアはその言葉に小さく頷いたが、心の中では何かが燃え上がるような感覚を覚えていた。



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ビクターとの会話


その夜、馬車は安全な場所で一旦停止し、ナヴィアたちは小さな焚火を囲んでいた。ビクターが火をくべながら、軽い口調で話しかけてきた。


「ナヴィア、お前さん、追放されたって言ってたけど、どうしてそんなことになったんだ?」


ナヴィアは少し黙ってから、素直に答えた。


「宰相さんが、わたしが国家反逆罪だって言ったの。でも、わたし、そんなことしてないよ!」


ビクターは驚いた顔をして焚火を見つめる。


「国家反逆罪だって?それは随分と大きな罪を着せられたもんだな。」


「そうだよ!お父様を守りたいだけなのに!」


ナヴィアは子供らしく頬を膨らませて怒りを表現した。ビクターは笑みを浮かべながらも、彼女の真剣さを感じ取った。


「そいつは大変だな。でも、お前さんはどうするつもりだ?」


「どうするって……。」


ナヴィアは少し考えてから、拳を握りしめた。


「宰相さんが悪いことしてるなら、やめさせるの!お父様を助けて、帝国をちゃんとした場所にするんだ!」


ビクターは少し驚いたように彼女を見つめた。その幼い顔には、普通の5歳では見られない決意が浮かんでいた。


「ほぉ……5歳にしては、なかなかの覚悟だな。」

ビクターは少し感心したように笑い、ナヴィアの頭をポンポンと撫でた。


「お前さん、本当にすごい子だ。俺もその決意、見届けてみたくなったよ。」



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ナヴィアの覚醒


その夜、星空の下で、ナヴィアは焚火の光をじっと見つめていた。幼いながらも、心の中でさまざまな思いが巡っていた。


「国家反逆罪……それって、本当は宰相さんの方がやってることじゃないの?」


ナヴィアは小さく呟いた。アルマがそっと隣に座り、静かに話しかける。


「ナヴィア様、その通りです。宰相は陛下を弱らせ、国を私物化しようとしています。」


「お父様が弱ってるのに、そんなことしてるなんて……許せない!」


ナヴィアはぎゅっと拳を握りしめ、立ち上がった。その小さな体からは、幼い子供には見えないほどの気迫が感じられる。


「そんなに国家反逆罪にしたいなら、わたし、本当に国家反逆罪を、やってやる!打倒宰相!」


アルマは目を見開き、驚きながら尋ねた。


「……ナヴィア様、何をお考えですか?」


「宰相さんを倒して、お父様を助けるの!それがわたしのやるべきことだよ!」


その言葉には、5歳とは思えない力強さがあった。アルマは一瞬だけ言葉を失ったが、次第に微笑みを浮かべた。


「ナヴィア様、そのお気持ちがあれば、きっと大丈夫です。私も全力でお支えいたします。」


ナヴィアは力強く頷き、小さな拳を天に突き上げた。


「よーし、やるぞー!」


その無邪気でありながら決意に満ちた声が、夜空に響き渡った。



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新たな一歩


翌朝、ナヴィアは目を覚まし、すぐに準備を整えた。その目には、昨夜の決意がしっかりと刻まれている。


「アルマ、次はセリーナお姉様のところだよね?」

「はい、エトワール王国です。」


「お姉様に会ったら、ちゃんと相談して、お父様を助ける方法を考えるの!」


アルマは微笑みながら頷き、ナヴィアの手を取った。


「その意気です、ナヴィア様。」


ナヴィアは馬車に乗り込み、窓から外を見つめながら、小さく呟いた。


「お父様、待っててね。わたし、絶対に助けに行くから……。」


こうして、幼いナヴィアは覚醒した決意を胸に、次の目的地であるエトワール王国へと向かう旅を再開するのだった。



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