ナヴィアとセリーナは、エトワール王国の城内にあるセリーナの執務室にいた。部屋には、エトワール王国の紋章が彫られた重厚な机があり、その上にはセリーナが手配した地図や筆記用具が並べられていた。ナヴィアは小さな体で椅子に座り、一生懸命考えを巡らせていた。
「ナヴィア、手紙を出す相手を整理しましょう。他のお姉様たちにはどんな内容を伝えたいの?」
セリーナが優しく問いかける。
「うん……まず、お姉様たちに、宰相さんが帝国を好き勝手にしてることを教えるの。それから、お父様を助けるために力を貸してほしいってお願いするんだよ!」
ナヴィアは目を輝かせて答えた。
「そうね。それなら、簡潔で分かりやすい内容がいいわね。他のお姉様たちが動きやすいように、具体的な協力をお願いしましょう。」
セリーナは机の上の紙を手に取り、筆を執った。
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手紙の内容を決める
「えっと、まずクロエお姉様……グランツ王国だよね?」
ナヴィアが確認すると、セリーナは微笑みながら頷いた。
「そうよ。クロエは軍事に長けた国の王妃だから、きっと軍の支援をお願いするのがいいと思うわ。」
「うん、わかった!『クロエお姉様、グランツ王国の兵士さんたちを貸してくれないかな?』……こんな感じでいい?」
ナヴィアが言うと、セリーナは少し微笑みながら首を振った。
「もう少し丁寧な言葉遣いが必要ね。でも、気持ちはそのままで大丈夫よ。」
ナヴィアはセリーナに助けてもらいながら、クロエへの手紙の内容を練った。
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次に、リリスへの手紙に取り掛かる。
「リリスお姉様にはどうお願いする?」
ナヴィアが尋ねると、セリーナは少し考え込んだ。
「リリスはノーザルド王国の王妃よね。あの国は医療や学術が発展しているから、情報や支援物資をお願いするのがいいかもしれないわ。」
「そっか!じゃあ『リリスお姉様、帝国のことを調べてくれる人を送ってほしいの。それから、怪我をした人たちのために薬もお願い!』って書くね!」
「うん、それでいいわ。」
ナヴィアは筆を握り、一生懸命リリスへの手紙を書いた。時々字を間違えて、セリーナに助けてもらいながらも、少しずつ完成に近づけた。
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最後に、アイリーンへの手紙だ。
「アルバート王国は貿易が盛んだから……財政支援をお願いするのがいいかしら?」
セリーナが提案すると、ナヴィアは大きく頷いた。
「そうだね!『アイリーンお姉様、戦うのに必要なお金とか、物を用意してほしいの!』って書くよ!」
「いいわね。それに加えて、犯罪者引き渡しの協定についても触れておくべきね。宰相が逃げ込めないようにしておく必要があるわ。」
「なるほど!お姉様、すごい!」
ナヴィアは素直に感心しながら、再び筆を握った。
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皇帝派貴族への手紙
手紙をすべて書き終えた後、ナヴィアは疲れたように椅子に深く座り込んだ。
「ふぅ、たくさん書いたよ。でも、これで大丈夫かな?」
ナヴィアは少し不安げな表情を浮かべた。
「大丈夫よ、ナヴィア。これだけしっかり書けば、きっとみんな協力してくれるわ。」
セリーナが優しく言うと、ナヴィアは少し安心したように微笑んだ。
「それと、皇帝派の人たちにも手紙を送りましょう。」
セリーナが続ける。
「皇帝派の人たち……?」
ナヴィアは首をかしげる。
「そう。帝国の中には、まだお父様を支持している貴族が残っているの。その人たちに連絡を取って、協力をお願いするのよ。」
「なるほど!お父様を助ける仲間を増やすんだね!」
ナヴィアは納得して頷いた。
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使者の手配
すべての手紙が書き終わると、セリーナはそれを確認し、満足げに頷いた。
「ナヴィア、これで準備は整ったわ。次は使者を選んで、手紙を届けてもらう手配をするわね。」
「うん、お姉様、ありがとう!わたし一人じゃこんなにたくさんできなかったよ!」
ナヴィアは感謝の気持ちを込めて、セリーナに抱きついた。
「大丈夫よ、ナヴィア。あなたが頑張っているから、私も全力で助けるの。それに、きっと他のお姉様たちも同じ気持ちよ。」
セリーナはナヴィアをそっと抱きしめ、その小さな体を励ました。
「使者が出発するまで少し時間がかかるから、その間にもう少し作戦を練りましょう。あなたの計画は大胆だけど、とても素晴らしいわ。」
「うん!わたし、もっと頑張る!」
ナヴィアの無邪気な笑顔が、セリーナの心を温かくした。