ナヴィアとアルマを乗せた馬車が、グランツ王国の王城前に到着した。険しい山々に囲まれたこの国は、強力な軍事力と要塞都市で知られており、城の荘厳な石造りの壁はその力を象徴していた。
「ナヴィア様、もうすぐです。」
アルマが声をかけると、ナヴィアは窓から顔を出して城を見上げた。
「ここがクロエお姉様のいる国……すごく大きなお城だね!」
ナヴィアは感嘆の声を上げたが、その瞳には少し緊張の色も見えた。
「大丈夫ですよ、ナヴィア様。クロエ様はきっと喜んで迎えてくださいます。」
アルマの励ましに、ナヴィアは小さく頷いた。
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クロエとの再会
馬車が城門を通り、王城の中庭に入ると、整列した衛兵たちが敬礼して出迎えた。その中でひときわ目立つ美しい女性が歩み寄ってくる。堂々とした佇まいと鋭い目つきは、ナヴィアの姉クロエその人だった。
「ナヴィア!本当にあなたなのね!」
クロエは微笑みを浮かべながら、小さな妹に手を差し伸べた。
「クロエお姉様!」
ナヴィアは勢いよく馬車から飛び降り、クロエに抱きついた。姉妹はしばし再会の喜びに浸った。
「よくここまで来たわね……でも、いったいどうして?帝国で何が起こっているの?」
クロエは真剣な表情で問いかけた。
ナヴィアは姉の手を握りながら答えた。
「宰相さんが……お父様を病気のまま放っておいて、自分の好きなように国を動かしてるの!それで、わたしを追放したんだよ!」
クロエは驚きに目を見開き、すぐに険しい表情を浮かべた。
「そんなことが……!許せないわ。その男、帝国の何を守っているつもりなの?」
「お姉様、お願いがあるの。お父様を助けるために、お姉様の国の力を貸してほしいの!」
ナヴィアの言葉に、クロエはしばらく考え込んだ。
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ナヴィアの説明
クロエの執務室に通されたナヴィアは、アルマと共に座り、宰相の陰謀について詳しく説明を始めた。クロエは真剣な表情でナヴィアの話に耳を傾けている。
「宰相さんは、お父様が病気で動けないのをいいことに、帝国を自分のものにしようとしてるの。わたしが追放されたのも、その邪魔をされたくなかったからだと思うの。」
「ナヴィア……あなた、ずいぶんと状況を理解しているのね。」
クロエは少し感心したように微笑むが、その笑顔には姉としての憂いも混じっていた。
「それでね、わたし、他のお姉様たちにもお願いして、4カ国で力を合わせて宰相さんを止めようって思ってるの!」
クロエはその言葉に目を丸くした。
「4カ国……あなた、本当にそんな大きな計画を考えているの?」
「うん!お父様を助けるためには、それくらいやらないとダメだと思うの!」
ナヴィアの目には強い決意が宿っていた。
クロエはその決意を感じ取り、深く息をついた。
「わかったわ、ナヴィア。あなたの覚悟は本物ね。私も力を貸すわ。」
「本当に!?ありがとう、お姉様!」
ナヴィアの顔がぱっと明るくなり、クロエに抱きついた。
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協力の約束
クロエは部下を呼び、ナヴィアの提案を実現するための準備を指示した。
「まずはグランツ王にお話をして、同盟の承諾を得る必要があるわね。そのためには、帝国の現状と宰相の陰謀について詳しく説明しなければならない。」
「うん!わたし、一生懸命お話しするよ!」
「ふふっ……ナヴィア、あなたのその勇気があればきっと大丈夫よ。でも、王を説得するには、もう少し具体的な資料や証拠が必要になるわ。アルマ、帝国での状況をまとめた資料を準備して。」
「かしこまりました、クロエ様。」
アルマはすぐに動き出した。
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次への布石
準備が整うまでの間、クロエはナヴィアと二人で話をした。幼い妹がこれほどの決意を持ち、自分の国を救おうとしている姿に感動を覚えていた。
「ナヴィア、本当にあなたは立派になったわね。」
クロエが感慨深げに言うと、ナヴィアは少し照れくさそうに笑った。
「お父様が大好きだから、絶対に助けたいの!」
クロエはその言葉に頷き、ナヴィアの頭を優しく撫でた。
「大丈夫よ、ナヴィア。私たち姉妹が力を合わせれば、きっと宰相を止められるわ。」
こうして、ナヴィアとクロエの再会は新たな決意と協力を生み、次のステップへと進む準備が整えられたのだった。
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