グランツ王国での交渉が成功し、ナヴィアとクロエは一息ついていた。玉座の間を後にし、執務室に戻った二人は、王の承諾を喜びながら今後の計画を話し合っていた。
「ナヴィア、これでグランツ王国は協力してくれることになったわ。でも、次の交渉はさらに難しくなるかもしれない。」
クロエが慎重な口調で話すと、ナヴィアは真剣な顔で頷いた。
「うん、わかってる。でも、絶対に成功させるの。お父様を助けるために!」
その力強い言葉に、クロエも少し笑みを浮かべた。
「本当に立派になったわね。でも、ここで気を抜いてはいけないわ。宰相があなたを狙い続ける限り、どんな危険が潜んでいるかわからない。」
クロエの言葉通り、城の影ではすでに宰相派のスパイが動き始めていた。
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宰相派の計画
その夜、城内の暗い廊下で数人の黒ずくめの人物が密談を交わしていた。彼らは宰相派のスパイであり、ナヴィアの動きを監視していた。
「ナヴィア殿下がここにいるのは確認済みだな?」
低い声でリーダー格の男が問う。
「はい、間違いありません。」
別のスパイが答える。
「今のうちに仕留めておかねばならない。彼女が周辺国を味方につける前に、計画を完遂する。」
「しかし、この城の警備は厳重です。どうやって……?」
「警備の目を欺く方法はいくらでもある。あの小娘を城の外におびき出すのだ。」
スパイたちは静かに頷き、計画を具体化し始めた。
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罠の準備
翌日、ナヴィアはアルマとともに城内の庭園を散歩していた。クロエの部下たちが遠巻きに警備していたが、ナヴィアの周囲は穏やかで平和そのものだった。
「アルマ、グランツ王様が協力してくれるって決まって、本当によかったね!」
ナヴィアは明るい声で話しかけた。
「はい、ナヴィア様。本当に素晴らしい結果です。でも、気を緩めてはいけませんよ。いつ何が起きるかわかりませんから。」
アルマは警戒を怠らず、周囲に目を配りながら答えた。
その時、一人の侍女が駆け寄ってきた。
「ナヴィア様、クロエ様がお呼びです。すぐに執務室へいらしてください。」
ナヴィアは首をかしげた。
「お姉様が?何だろう?」
「念のため私が一緒に参ります。」
アルマは慎重な態度を崩さず、ナヴィアとともに執務室へ向かった。
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罠の発動
しかし、執務室に到着したナヴィアたちは、部屋が無人であることに気づいた。
「おかしいわね……お姉様はどこ?」
ナヴィアが疑問の声を漏らした瞬間、背後から物音が聞こえた。振り返ると、黒ずくめの男たちが武器を構えて立っていた。
「ナヴィア殿下、ここで終わりだ。」
リーダー格の男が冷たい声で告げる。
「やっぱり……宰相さんの人たち!」
ナヴィアは小さな拳を握りしめた。
「ナヴィア様、後ろに下がって!」
アルマがナヴィアを守るように立ちふさがり、鋭い視線をスパイたちに向けた。
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クロエの逆襲
その時、クロエの率いる兵士たちが執務室に駆け込んできた。
「動かないで!」
クロエの鋭い声が響く。兵士たちはスパイたちを取り囲み、一瞬でその場の主導権を握った。
「何者だ?お前たちは誰の命令で動いている!」
クロエの問いに、スパイたちは黙り込んだが、リーダー格の男が不敵な笑みを浮かべた。
「我々の命令主は一人……帝国宰相ダリウス様だ。」
その言葉に、クロエの顔が怒りで歪む。
「やはり、ダリウス……!この幼い子供にまで手をかけるとは、恥を知りなさい!」
スパイたちは抵抗する間もなく、次々と捕らえられた。
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ナヴィアの決意
事件が収束し、クロエはナヴィアの肩に手を置いた。
「ナヴィア、大丈夫だった?」
ナヴィアは頷きながら答えた。
「うん……でも、宰相さんが本気でわたしを狙ってるんだって、改めて思った。お父様を助けるために、絶対に負けないよ!」
その言葉に、クロエは深く頷いた。
「ナヴィア、その気持ちがあれば大丈夫よ。私も最後まであなたを守るわ。」
こうして、宰相派の暗躍を乗り越えたナヴィアは、さらなる決意を胸に次の行動に移るのだった。