宰相派のスパイが捕らえられたその夜、ナヴィアはクロエとともにグランツ王国の広い庭園を歩いていた。空には満天の星が輝き、昼間の緊張が嘘のような静けさが広がっていた。
「ナヴィア、今日は本当に大変な一日だったわね。」
クロエが優しく話しかけると、ナヴィアは小さく頷いた。
「うん……でも、わたし、絶対に負けないって決めたの!」
ナヴィアは小さな拳を握りしめ、星空を見上げた。その姿を見たクロエは、感心したように微笑んだ。
「あなた、本当に強くなったわね。昔は泣いてばかりだったのに。」
ナヴィアは少し恥ずかしそうに笑った。
「だって、お父様が危ないんだもん。わたし、もう泣いてるだけじゃいられないよ。」
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クロエの励まし
二人は庭園のベンチに腰を下ろした。クロエはナヴィアの肩にそっと手を置き、真剣な表情で話し始めた。
「ナヴィア、宰相ダリウスは狡猾で、どんな手でも使う人物よ。あなたがここまでの計画を立てたことは素晴らしいけれど、その分、危険も増していくわ。」
ナヴィアはじっとクロエの目を見つめた。
「わたし、危険でもいいの。お父様を助けるためなら、どんなことだってがんばる!」
その言葉に、クロエは一瞬言葉を詰まらせたが、すぐに小さく頷いた。
「そうね。その覚悟があるなら、私も全力であなたを支えるわ。でも、ひとつだけ忘れないで。あなたはまだ5歳なの。無理をしすぎて、自分を傷つけないでほしい。」
ナヴィアはしばらく考え込み、ゆっくりと答えた。
「うん、わかった。わたし、お姉様にもたくさん頼るね。でも、お父様を助けるっていう気持ちは、絶対に変えない!」
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星空の下での決意
二人が話していると、ふとナヴィアが空を指さした。
「ねえ、お姉様。あの星、すごくきれいだね!」
クロエはその指の先を見て、小さく笑った。
「そうね。グランツ王国は山が多いから、星空がとても綺麗に見えるのよ。」
ナヴィアはしばらくその星を眺めてから、小さな声で言った。
「星って、遠くにあるけど、ずっと輝いてるんだよね。わたしも、そんなふうにがんばりたいな。どんなに遠くても、みんなを照らせる星みたいになりたい。」
その言葉に、クロエは驚きと感動が入り混じった表情を浮かべた。
「ナヴィア……あなた、本当に立派になったのね。」
「えへへ、お姉様にほめられるとうれしい!」
ナヴィアは照れたように笑い、クロエに寄り添った。
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新たな決意
庭園の静けさの中で、ナヴィアは改めて自分の決意を口にした。
「お父様を助けるために、わたしは宰相さんを倒す。そして、帝国をみんなの笑顔でいっぱいにする国にするの!」
クロエはその言葉に真剣に頷き、ナヴィアの小さな手を握った。
「ナヴィア、その決意を忘れないで。どんなに困難が待ち受けていても、私たち姉妹が力を合わせればきっと乗り越えられるわ。」
「うん!お姉様がいてくれるなら、わたし、どんなことだってがんばれる!」
二人はしっかりと手を握り合い、互いの絆を深めた。
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翌朝の出発準備
翌朝、ナヴィアは次の目的地であるエリュシオン王国への旅立ちの準備を進めていた。クロエと彼女の部下たちが出発を見送るため、城門前に集まっていた。
「ナヴィア、エリュシオン王国は簡単な相手ではないわ。慎重に交渉してきて。」
クロエが優しく声をかけると、ナヴィアは力強く頷いた。
「うん、大丈夫!わたし、一生懸命お願いしてくる!」
「あなたならきっとできるわ。道中は気をつけてね。」
クロエはナヴィアを抱きしめ、別れを惜しんだ。ナヴィアも涙をこらえながら、クロエの温かさを胸に刻んだ。
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旅立ち
ナヴィアはアルマとともに馬車に乗り込み、エリュシオン王国へ向けて出発した。クロエの励ましと支援を胸に、彼女の決意はさらに固まっていた。
「お姉様の力も借りたし、次はエリュシオン王国だね。絶対に成功させてみせる!」
アルマは静かに微笑み、ナヴィアの言葉に頷いた。
「ナヴィア様ならきっとやり遂げられます。さあ、次の目的地に向かいましょう。」
こうして、ナヴィアは新たな決意とともに次の国へと旅立ったのだった。
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