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第15話 軍事支援の約束

 犯罪者引き渡し協定の締結が決まり、エリュシオン王国の協力を正式に得たナヴィア。王との話し合いを終えた彼女は、ヴィクトールと共に応接室に向かった。そこは王族専用の談話室で、優雅な装飾と暖かい光が差し込む落ち着いた空間だった。


「ナヴィア殿下、お疲れさま。」

ヴィクトールは微笑みながら椅子を勧めた。


「ありがとうございます、ヴィクトール王子様。でも、まだ終わりじゃないよね?」

ナヴィアは椅子に座りながら、小さな手で拳を握りしめた。その表情は真剣で、子供らしさを感じさせないほどの覚悟がにじんでいた。



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ヴィクトールの提案


ヴィクトールは隣の席に腰を下ろし、しばらくナヴィアを見つめていた。彼女の決意と行動力に感銘を受けているようだった。


「君は本当にすごいな、ナヴィア殿下。ただの5歳の王女じゃない。君の計画は緻密で、現実的だ。そして、君の覚悟は帝国を救う力になるだろう。」


「えへへ、ありがとう。でも、わたしだけじゃ無理だよ。だからみんなの力を借りたいの。」

ナヴィアは少し照れくさそうに笑ったが、その目はしっかりとヴィクトールを見据えていた。


ヴィクトールは真剣な表情に戻り、ナヴィアに語りかけた。


「ナヴィア殿下、君の計画をさらに確実なものにするために、もう一つ提案がある。」


「もう一つの提案?」

ナヴィアは首をかしげた。


「そうだ。このエリュシオン王国が犯罪者引き渡し協定だけでなく、軍事的支援も提供する。つまり、宰相の圧力に対抗するための戦力を、こちらからも出すということだ。」



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軍事支援の意図


ナヴィアは目を丸くした。


「軍事支援って……エリュシオン王国も兵士を出してくれるってこと?」


「その通りだ。」

ヴィクトールは頷いた。


「ただし、この支援はエリュシオン王国単独の判断では難しい。父王の承諾が必要だし、こちらの国民にとっても正当な理由が求められる。でも、ナヴィア殿下の計画が成功する見込みを示せれば、きっと協力は得られる。」


ナヴィアはしばらく考え込んでから、力強く頷いた。


「わかった!わたし、一生懸命説明してみる。みんなを助けるために、絶対に成功させる!」



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準備会議


その後、ヴィクトールは部下を呼び、エリュシオン王国からの軍事支援を可能にするための準備会議を開いた。ナヴィアも会議に参加し、彼女が立案した4カ国同盟の計画を再び詳しく説明した。


「4つの国が協力して宰相を包囲するの。そのタイミングで帝国の中にいる皇帝派の人たちが反乱を起こす。そうすれば、宰相派は逃げ道を失って、降伏するしかなくなるんだ。」


彼女の説明を聞いていた将校たちは最初は驚き、その後、感心したように頷き始めた。


「素晴らしい計画ですな。殿下がこれを考えたとは驚きだ。」

将校の一人がそう言うと、ヴィクトールも笑顔で付け加えた。


「そうだろう?ナヴィア殿下の計画は、幼いながらも我々の軍事戦略を凌駕している。」



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王の最終承諾


会議の後、ヴィクトールとナヴィアは再び王の前に立った。準備会議での成果を報告し、軍事支援の正式な承諾を求めた。


「父上、ナヴィア殿下の計画は十分に現実的です。そして我々エリュシオン王国が関与することで、成功の確率はさらに高まるでしょう。」


王はしばらく考え込んでいたが、やがて深く頷いた。


「わかった。エリュシオン王国として、ナヴィア殿下の計画に軍事的支援を提供することを承諾しよう。ただし、これが我が国にとっても正当な行動であることを国民に示す必要がある。ヴィクトール、準備を進めるのだ。」


「ありがとうございます!」

ナヴィアは深く頭を下げ、喜びを抑えきれない表情を浮かべた。



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ナヴィアの感謝


会議が終わり、ヴィクトールと並んで歩きながら、ナヴィアは彼に感謝の気持ちを伝えた。


「ヴィクトール王子様、本当にありがとう。わたし、ひとりじゃこんなにできなかったよ。」


ヴィクトールは微笑みながら答えた。


「感謝するのは僕の方だよ、ナヴィア殿下。君のような人に出会えて、僕自身も成長できた。」


その言葉に、ナヴィアの顔が少し赤くなった。


「えへへ……これからもよろしくお願いします!」


「もちろんだ。君の戦いが終わるまで、僕は君の味方だ。」


こうして、ナヴィアはエリュシオン王国からの軍事支援を得ることに成功し、4カ国同盟完成に向けて大きな一歩を踏み出した。




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