エスティリス帝国の皇帝派が蜂起し、4カ国同盟軍が進軍する中、宰相ダリウスの支配体制は急速に崩れ始めていた。帝都内の混乱は増し、宰相派の貴族や兵士たちは戦意を失い、降伏する者も現れた。
宰相ダリウスは、執務室で報告を受けながら顔を歪ませていた。
「状況を報告しろ!反乱の鎮圧はどうなっている!」
苛立つ声に、側近たちは震えながら答えた。
「宰相様、同盟軍が帝都周辺を完全に包囲しました。さらに、皇帝派の蜂起によって、内部でも抵抗が続いております……」
「4カ国だと?ナヴィア……あの小娘がここまで仕組んでいたというのか!」
ダリウスは机を叩きつけるように拳を振り下ろし、怒りを爆発させた。
「しかし、まだ終わりではない!我々には城の防備がある。奴らをここで迎え撃つのだ!」
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ナヴィアの進軍
一方、ナヴィアは同盟軍の進軍状況を見守っていた。皇帝派と同盟軍が連携を取りながら宰相派を追い詰めていく様子を、地図を見ながら確認する。
「ナヴィア殿下、帝都の城門が開かれました。同盟軍が内部に突入を開始しました。」
報告を受けたナヴィアは、地図を指差しながら指示を出した。
「次の目標は宰相さんがいる執務室だよ。絶対に逃げられないように、みんなで包囲して!」
将軍たちはナヴィアの言葉に力強く頷き、それぞれの持ち場に散っていった。
「ナヴィア様、本当に中に入るつもりですか?」
アルマが心配そうに尋ねる。
「うん、わたしがお父様を助けるためには、宰相さんにちゃんと会わなきゃいけない。」
ナヴィアは小さな拳を握りしめ、覚悟を決めた。
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宰相との対峙
執務室に到着したナヴィアは、扉を開けると冷たい目で彼女を見つめる宰相ダリウスと向かい合った。彼は威圧的な態度を崩さず、椅子に深く腰掛けたままだった。
「ほう、ナヴィア王女殿下か。ここまで来るとは、少しは見どころがあるようだな。」
ナヴィアはその冷笑を受け流し、毅然とした態度で答えた。
「宰相さん、これ以上好き勝手させないよ。あなたの悪いこと、全部知ってるんだから!」
「ほう、それは興味深いな。私が何をしたというのだ?」
ダリウスは余裕を見せるように笑ったが、ナヴィアは一枚の文書を取り出した。
「これが証拠だよ!お父様を病気にしたのも、帝国を乗っ取ろうとしたのも、あなたの計画だったんでしょ!」
その文書には、ダリウスが皇帝の健康を害するために毒を盛らせた指示や、帝国内で権力を掌握するために行った違法な活動が詳細に記されていた。
ダリウスの顔色が一瞬で変わる。
「こ、これはどこで……!」
ナヴィアは小さな胸を張り、毅然とした声で言った。
「もうあなたの悪事は隠せないよ!これであなたが本当の国家反逆者だってみんなにわかるはず!」
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宰相の失脚
ナヴィアが差し出した証拠を基に、護衛の兵士たちがダリウスを取り囲んだ。彼は抵抗を試みようとしたが、すぐに押さえ込まれた。
「離せ!私は宰相だ!この国を治めるのは私だ!」
「お望み通り国家反逆で宰相政権を転覆してあげたよ。満足?でもね、罪に問われるのはあなただけど。」
ナヴィアは冷たい眼差しで宰相ダリウスを見下ろしながら言い放った。その言葉には、5歳の少女とは思えないほどの毅然とした強さが宿っていた。ダリウスは悔しげに歯を食いしばり、拘束される手首を激しく動かした。
「私が……罪に問われるだと!?私は帝国を守るために行動してきた!貴様のような小娘に何がわかる!」
「帝国を守る?それは嘘だよね。お父様を苦しめて、自分だけが権力を握ろうとしてたくせに。」
ナヴィアの小さな声には、子供らしいあどけなさと共に鋭い真実が突き刺さる。
「全部、証拠があるんだよ。お父様を病気に追い込んだ毒の手配、皇帝派の貴族たちへの圧力、そして、この国を自分のものにしようとした全ての計画。」
ナヴィアは一枚の書類を掲げた。それは宰相の悪事を示す決定的な証拠だった。
「これで帝国は平和に戻るよ。あなたがいなくなればね。」
ダリウスは最後の抵抗を試みたが、兵士たちの手によって連行されていく。その姿を見送りながら、ナヴィアはアルマに向かって小さく頷いた。
「これでやっと、お父様を安心させてあげられる。」
ナヴィアの目には、幼いながらも帝国を背負う決意がはっきりと宿っていた。
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