『二人を追い払ったということは、戦うんじゃな!?』
「当然」
俺はランタンを持つと、廊下を突進した。
『行け、フィンレー! 一気に四人分のスキルを奪うのじゃ!』
「四人分はどうだろうな。頑張ってはみるけど」
四人の侵入者が目視できた頃、侵入者も俺の存在に気付いたようだ。
「誰だ!?」
「子ども!?」
ある距離まで四人に近付くと、真っ暗なはずの廊下が明るく照らされて見えた。
「なんだこれ。明るいな!?」
光魔法ではない。光魔法なら、遠くから見た場合でも魔法を使っている場所が明るく見えるはずだから。
しかし遠くから見た際にはここは明るくは見えなかった。
「ということは、誰かのスキルか」
「ハッ。子どもを殺すのは可哀想だが、見られたからには消えてもらう」
「お前に俺は殺せない。俺はこんなところで死ぬつもりはないからな」
全員のスキルを引き出したいところだが、見せてくれるだろうか。
全員が戦闘中に使用するようなスキル持ちだといいのだが。
「強がりも大概にしな。子ども一人で何が出来るってんだ」
「何だって出来るさ」
俺はスキル使用者の男に一足飛びで近付くと、勢いよく股の下をくぐり、男の膝の裏を殴った。男はバランスを崩して地面に膝をつく。
「こいつ、素早いぞ!?」
「仕方ない。俺のスキルを使うか」
すると別の男が、自身の影を起き上がらせた。影人間は自立し、俺に向かって襲いかかってきた。
影人間を蹴ってはみたものの、影人間に痛がっている様子はない。
「影だから痛みを感じないのか。怯まないのは、ちょっと厄介だな」
『やったのう、フィンレー。二人分のスキルを見ることが出来たのじゃ。この調子で全員分のスキルを見るのじゃ。フレーフレー、フィンレー!』
俺が真剣に戦っているのに、ゴッちゃんがまたどこからかボンボンを持ってきて振っている。
緊張感を奪わないでほしい。
「おい、何ちんたらやってんだよ。他のやつに見つかる前に目的を果たさねえと」
「じゃあお前だけで行ってくれ」
「そうさせてもらうよ」
俺が影人間に手こずっている間に、一人の女がこの場から離れていこうとした。
「あっ、一人逃げる!」
何をするつもりかは知らないが、女は何らかの目的を果たすために一人で先に行ったらしい。
女を止めないと、学校にとって良くないことが起こるかもしれない。
「……ここまでだな。欲張ったせいで、スキルを見た二人分まで手に入らなくなることは避けたい」
俺は手を前に伸ばすと、一人の男に向けた。
「ってことで、あんたらは大人しく眠ってくれ」
手から睡眠魔法を組み込んだ水魔法を相手の口めがけて噴出させる。
ちなみにこの魔法は師匠オリジナルのものらしい。便利なので俺のお気に入りの魔法だ。
水を飲んだ男が倒れたことを確認して、今度は残りの二人に狙いを定める。
一人は俺に襲いかかってきたから、同じように口の中に水魔法を入れて眠らせた。
もう一人は逃げようとしたため、すぐに後ろからドロップキックをお見舞いする。
そして倒れた男を仰向けにし、飲み込むまで口の中に水魔法を流し込んだ。
スキル使用者の男が眠ったことで、影人間も消滅した。これで目の前の敵は全員無力化できた。
残るは逃げた女だけだ。
しかし複合魔法を使ったことで、俺の魔力はもう枯渇している。
「ゴッちゃん、収納したスキルを使うにはどうしたらいいんだ?」
『えー、使うのー?』
「いいから教えてくれ!」
『仕方ないのう。ファイルを出して、収納されている写真を破りながら、写真の下に書かれたスキル名を唱えればいいんじゃ』
「了解。スキルホルダー」
俺はファイルの中からルナの写真を取り出し、それを破った。
「壁生成!」
そしてルナのスキル名を叫ぶと、スキルの使用が可能になった。
女の逃げた先に狙いを定め、スキルを使用する。
間隔をあけつつ廊下の端までいくつもの壁を出現させた。
「なんだこれっ!?」
遠くで女の声が聞こえた。
どうやら上手く足止めが出来たようだ。
「これでよし。じゃあこいつらのスキルを奪うか」
俺は足元に倒れた男たちを触り、カメラで写真を撮ってファイルに収納した。
「二個のスキルをゲット。おっ、明かりはこの男のテントってスキルだったのか」
『スキル名の表示されていない写真は、条件を満たす前の相手のものじゃ。このまま二十四時間が経過すると写真は自然とファイルから消える』
影人間とテントのスキルは収納できたが、もう一人の写真の下には何も書かれていない。
「残念だけど、こいつのスキルを見る機会は無いだろうな」
『そうじゃのう。まあスキルを一つ手放したが、二人分のスキルをゲット出来たからよしとするかのう』
ゴッちゃんは物足りなさそうな顔をしていたが、侵入者から二つのスキルを奪ったのだから、上々だろう。