「フィンレー、大丈夫!?」
少しすると、ミンディが俺のもとへと走ってきた。
もう隠れる必要がないからか、光魔法が廊下を明るく照らしている。
こんなときだが、若干十二歳のミンディが光魔法を使えることに驚いた。
やっぱりミンディは優等生であり、かなりの努力をしてきたのだろう。
「何故か侵入者が全員倒れてたんだけど、まさかあいつらを倒したのって、フィンレー?」
「なんか倒せちゃった。てへ」
「てへって、あんたねえ……」
少し遅れて、リリーと警備員も俺のもとへとやってきた。
「フィンレー君。ケガはありませんか?」
「侵入者に一人で立ち向かうなんて、どうしてそんな危険な真似を……!」
警備員は信じられないと言いたげだった。
昨日も俺がモーゼズたちを倒したのだが、マイヤーズ先生は約束通りに黙っていてくれたようだ。
「……あの。三人しか倒れてませんが、侵入者は四人いましたよね?」
「それ、リリーの見間違いだったんじゃないか?」
あの女が逃げたことを知られると、校舎内が念入りに捜索されてしまうかもしれない。
そうなったら男子寮にある俺の部屋も安全とは言えない。
「えっ? 私は確かに四人の人影を、目撃、しました……」
「でも三人しかいなかったぞ?」
「そんなはずは、えっと……すみません。私の勘違いかもしれません。でも……いえ、すみません」
俺に見間違いと言われたリリーは、しゅんとしてしまった。
『あーあ。リリーちゃんが可哀想じゃのう。フィンレーのせいで勘違い野郎にされて。暗視は使えないスキルとか言われるかものう』
(うっ、それは可哀想だな)
「あっ、あれだ! 一人、影を人型にして操る男がいたから、その影人間が四人目に見えたのかも!」
俺はそれらしいことを言って、四人目がリリーの見間違いではないと伝えた。
影人間を操るスキルを持っている男がいたのは本当のことだし、これならリリーの暗視スキルが馬鹿にされることはないだろう。
「そうだったんですね。それなら納得です。さすがに距離が遠すぎて、顔までは見えませんでしたから」
しばらくすると、事態に気付いた自警団の生徒たちが集まってきた。
ミンディとリリーは自警団のみんなにいろいろと聞かれていたが、俺は一人で考えごとをしていた。
(さっきの女の人、そろそろ俺の部屋に到着しててもおかしくないけど、上手く逃げ込めたかな?)
『まったく。年頃のおなごを部屋に連れ込んで何をするつもりなのだか』
(別に何もしないけど!? というか、ゴッちゃんが利用しようって言い出したんじゃないか!)
『何もしないなんて話、儂は信じんぞ。フィンレーだって部屋におなごを連れ込んでやりたいことは、いろいろとあるんじゃろう?』
(ま、まあ、その、相手がその気になったら、うん……)
その場合はまんざらでもないと言うか。
出会ったその日に突然燃え上がる恋もあるよな!?
『まったく。フィンレーは事態の重大さを分かっておるのか? スキル増幅石などという、とんでもないものが存在しておるかもしれんのじゃぞ?』
(俺にとっては、女の人が自分の部屋にいる事態も重大だよ! こんな千載一遇のチャンスを逃すなんて、あり得ない!)
『はあ。十二歳の身体で何を言っておるのだか』
ゴッちゃんが呆れたように、大きな溜息を吐いた。