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第12話 愛人との対峙

 公爵家の不正取引の証拠を揃え、協力者たちの支援も得たレティアは、次なる行動に出ることを決めた。彼女の目標は、ライオネルの秘密を暴き、彼を追い詰めることだった。そして、その計画の一環として、彼の愛人とされる女性に接触することを決意する。


 「彼女は、ライオネルにとって大切な存在なのでしょう。ならば、彼女を味方につければ、さらに彼を追い詰める武器になる。」


 冷静にそう考えたレティアは、情報収集を進め、彼女の居場所を特定した。



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 その女性――アリシアは、街外れの静かな邸宅に住んでいた。彼女は公爵家とは直接関係を持たないが、ライオネルとの深い繋がりを持つと噂されていた。


 ある日の午後、レティアは邸宅の門を訪れた。表向きは礼儀正しく、夫の知人を訪ねるという形式を装ったが、胸の内には冷静な怒りが渦巻いていた。


 玄関で待っていると、しばらくしてアリシアが現れた。彼女は上品な装いをしており、柔らかな笑みを浮かべていたが、その瞳には慎重な警戒心が見え隠れしていた。


 「初めまして、公爵夫人。私に何か御用でしょうか?」


 レティアは微笑みを返しながら答えた。


 「ええ、少しお話ししたいことがありまして。もしお時間をいただけるなら、中でお話を伺いたいのですが。」


 その提案にアリシアは一瞬迷ったが、結局彼女を邸宅の応接室に通した。



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 二人が向き合って座ると、レティアは静かに切り出した。


 「あなたがライオネルと親しい間柄であることは、知っています。」


 その言葉に、アリシアはわずかに驚いた表情を見せたが、すぐに落ち着きを取り戻した。


 「確かに、私は彼と長い付き合いがあります。ですが、それがどうかしましたか?」


 彼女の態度は冷静で、自分の立場を守るための壁を築いているように見えた。だが、レティアはその壁を壊すつもりだった。


 「ライオネルの言葉や態度に、疑問を感じたことはありませんか?彼がすべてをあなたに明かしていると思いますか?」


 その問いかけに、アリシアの表情が僅かに曇った。



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 レティアは続けた。


 「私は、公爵家の闇を知っています。そして、あなたもまた、その一部に巻き込まれている可能性があります。」


 アリシアは沈黙し、レティアの言葉をじっと聞いていた。その姿に、彼女が動揺していることが感じ取れた。


 「例えば、ライオネルがあなたに約束したこと。それがどれほど信頼できるものか、確かめたことはありますか?」


 アリシアは、低い声で答えた。


 「…彼は私を守ると言いました。私を信じるべきではないのですか?」


 その言葉に、レティアは微笑みを浮かべながら首を横に振った。


 「彼は、自分の目的を達成するために平気で嘘をつく人間です。そして、あなたを守ると約束したその言葉の裏で、どれだけの不正を働いているかをご存じでしょうか?」


 そう言って、レティアは持参した書類の一部をテーブルの上に広げた。それは、ライオネルが密輸計画を進めている証拠や、不正取引に関連する契約書だった。



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 アリシアは書類に目を通すと、次第に顔が青ざめていった。その手は微かに震えていた。


 「こんなことが…本当だというのですか?」


 レティアは頷き、静かに答えた。


 「ええ、すべて事実です。ライオネルは、あなたを利用しているだけかもしれません。」


 アリシアはしばらくの間、何も言わずに座っていた。だが、やがて彼女の目には涙が浮かび、絞り出すような声で言った。


 「私は…信じたかったのに…。彼が、私に誠実でいてくれると。」


 その言葉に、レティアは一瞬だけ同情の念を覚えたが、すぐに自分を取り戻した。


 「もし私たちが手を組めば、ライオネルの計画を阻止することができます。そして、あなた自身の未来を守ることも。」



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 アリシアは深く息をつき、涙を拭いながらレティアを見つめた。その瞳には、迷いと決意が混じっていた。


 「あなたは私を信じているのですか?私が協力すると。」


 レティアは微笑みながら答えた。


 「信じています。あなたは、ただ騙されていただけです。そして、それを正す機会が今あるのです。」


 アリシアは少しの間考えた後、静かに頷いた。


 「分かりました。私も協力します。ライオネルが私を利用していたのなら、それに報いを受けさせるべきです。」


 その言葉を聞いた瞬間、レティアは安堵の表情を浮かべた。



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 こうして、ライオネルの愛人であるアリシアもまた、レティアの計画に加わることになった。彼女の協力によって、ライオネルの秘密をさらに追い詰めるための力が強まった。


 レティアは邸宅を後にしながら、冷たい夜風の中で静かに呟いた。


 「これで、あの男を完全に追い詰める準備が整った。」


 その瞳には、揺るぎない決意の光が宿っていた。復讐の道は、着実に進み始めていた。



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