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第104話 ノーウイックの技術と第5の女

ナナが帰ってきた翌日。


私は倉庫群の再調査の為、ザナンテスの彼女の家で暮らしているドレイクを迎えに行き、かなりメリナエードさんに渋られたもののどうにか連れてくることに成功していた。


「まあ♡ここがザイの働く場所なのね?素敵な場所……いいな♡」

「お、おう。…そ、その、美緒?以前言っていた事だが…」


目の前でイチャつく二人。

私は思わずジト目を向けてしまう。


「…部屋の事?3階の私たちのフロアの向かいの部屋ならもうすぐにでも住めるよ?そ、そのメリナエードさんは承知しているのかしら」


私の言葉に目を輝かせるメリナさん。

なんかもう、スッゴク可愛いんだけど?!

ピンク色のエフェクト出ちゃってるし?


「まあ♡よろしいのですか?美緒さま♡」

「あー、う、うん。わ、私の事は美緒でいいですよ?私まだ18歳ですし…目上の方から敬称はちょっと…」

「あら。そうなのね……ふう。(心配になるくらい可愛い美しい方なのね…)…うん。ねえ美緒?」

「は、はい」

「私のことも、メリナって呼んでね♡あとお料理の手伝いくらいなら出来るわ♡」


うん。

この人住む気満々だ。


まあ、良いけど。

その方がドレイクも動きやすいよね。


「えっと、じゃあ、お願いしますね。ああ、ちょうどいい所に、ねえリア」

「うん?なになに?…ふわー、スッゴク可愛い人……?!あっ、ご、ごめんなさい、いきなり可愛いなんて」

「ううん♡嬉しいわ。えっと、リアちゃん?私はメリナエード。メリナって呼んでね♡」

「は、はい」


うーむ。

リアのあの視線。

きっと『もろタイプ』よね。


わたしは今、もうリアが『百合』なことを知っている。

当然口は出さない。

個人の趣味、迷惑が掛からないのなら問題はないのだ。


「ねえリア、後でいいからメリナさん、厨房へ案内してくれる?それから私たちのフロアの向かい、あの部屋すぐに住める状態よね。案内お願いできる?」

「えっ♡メリナさんうちのギルドで暮らすの?嬉しい♡」

「あー、うん。っ!?ドレイク?」

「お、おう」

「壁に消音の術式、付与した方が良いかな?」

「っ!?……………………頼む」


顔を真っ赤にさせつぶやくドレイク。


まあね。

彼等は新婚さんだ。

しかも40年という長き間想い合った二人。


さぞ熱烈な夜を過ごすことだろう。

うん。


今リンネがここにいたら、きっと一生からかうわよね。


「コホン。分かったよドレイク。最上級の付与しておくから安心してね。あー、因みにその部屋、しっかりカギもかかるし簡易だけどシャワーも使えるから。……だから、その……いろいろ気にしなくていいよ?」


さらに赤くなるドレイクと、それに気づき真っ赤に染まるメリナさん。

何故か指を絡ませあい、お互いを見つめる二人。


ふう。

こりゃ私でも文句の一つくらい言っちゃいそうなほど甘々な空気。


ご馳走様です。



※※※※※



取り敢えずメリナさんには一度彼女に自宅へと帰ってもらった。

何でもお父様への報告と、幾つかの荷物を運びたいらしい。


残念そうな顔をするドレイク。

もう、夜は邪魔しませんから!!

チャッキりしてよね!!


「美緒?その倉庫群調べるとのことだが…正直俺は何もしてねえ。でも俺の技術。……確かなのか?」


ノーウイックは怪訝な顔だ。

隣のモナークも頷いている。

何より私もスキル『真相解明』で確認済みだ。


でもそうなると最悪の事態が浮かぶ。


「ねえノーウイック。あなた悪魔と遭遇したの?」

「いや。俺はあの時いきなり封じられたんだ。……待てよ?……そう言えば……おいっ、美緒……ギリアムに会う事は可能か?」


「ん?ザナンテスの魔導王?大丈夫だと思うけど……」


「俺はあいつに謝らなくちゃならねえことがあるんだ。それからあの時一緒に居たあの女、あいつの事、俺は思い出せねえ。……おかしいんだ。確かにいたはず。しかも美人だったはずだ……記憶にはねえが俺の指先が感触を覚えている」


そう言い指をワキワキと動かすノーウイック。

ついジト目を向けてしまう。


「うわ―、サイテー……顔とか覚えてないのに胸の感触だけ覚えてるとか…あんたマジでクズだね」


ゴミを見るような目でリンネが吐き捨てる。

あー、まあね。

リンネ揉まれちゃったし?


「う、うぐっ。す、すまねえ。だ、だがそういう事じゃねえんだ。俺は女が好きだ。だからこんな事おかしいんだよ。いい女なら忘れるはずねえんだ。……もしかしたらあいつが俺のスキルを真似たのかもしれん。美緒、その倉庫、劣化してたんだろ」


「う、うん」


「それこそありえねんだ。俺の仕事は1000年保証だ。高々数年で劣化なぞしねえ」


伝説の盗賊ノーウイック。

確かに彼の仕事は簡単に劣化するようなレベルではない。


嫌な予感が確信に変わっていく。


「分かったよ。でもいきなりはまずいかな。ねえエルノール、頼めるかな」

「ええ。問題ありません。なにしろ美緒さまは忙しすぎです。……今日くらいは休まれたらどうですか?」

「あ、ありがとう。でも、私は平気だよ?……何時もエルノールが気を使ってくれるし。……ミルクティー、とってもおいしかったよ♡」


彼は相変わらずすごく気が効く。


色々考えて『ちょっと糖分欲しいなっ』て思っていると、とっても甘くておいしいミルクティーを入れてくれる。


彼の愛情のこもったミルクティー。

メチャクチャ美味しいの♡


「うあ、え、えっと…コ、コホン。じゃ、じゃあ、先ぶれ、してまいります」

「うん♡」


顔を赤く染め転移していくエルノール。

彼は本当に優秀だ。


「……色女だね、美緒」

「はい?」

「…何でもない」


なんか酷いこと言われた気がしたけど……

むうっ!



※※※※※




「久しいなノーウイック。息災か?」

「久しぶりだギリアム。そうかお前本当に魔導王になったんだな。出世しやがって」


エルノールのお使いは成功し、今私たちはザナンテスの魔導王と面会をしていた。


余りにも格式ばった場は嫌だという事で今私たちは生活感の溢れる魔導王の隠れ家を訪れていた。


「懐かしいな。ここあれだろ?俺たちが滞在していたパーティーハウス」

「まあな。それでどうした?再会の挨拶なぞ貴様のガラではあるまいに」

「おっと、そうだった。なあギリアム。俺達は何人パーティーだったんだ?」


彼等が冒険者パーティーを組んでいたのは100年以上前。

普通なら記憶も風化する。

でも魔導王、その時と変わらず時を重ねていた。


「面白い事を聞く。俺と貴様、そしてタンクでドワーフのグルダ、それにすでに寿命で今は亡くなったが魔法使いのヒューマン、ギザイーグの4人だっただろうが。まさかボケたのか?」


それを聞き難しい顔をするノーウイック。

その様子に魔導王は訝しげな瞳を向ける。


「違う」

「なんだと?」

「俺達は5人いた。……女がいたはずだ」

「……女?……む?…ま、まて……うぐっ……ぐうっ?!」


突然脂汗を流し頭を抱えるギリアム魔導王。

その様子に私たちに不安が募る。


「……………いた」

「……っ!?………やはりな。……誰だ?」


「……エルフ?………い、いや違う……ダークエルフ!……そうだ、ダークエルフを名乗るあの女……エルフにしてはでかすぎる胸を持つ…」


えっと。

どうしてこの人たち、女性の胸で覚えているのかなっ?!!


私とリンネ、思わず自分の胸を隠すしぐさをしてしまう。

もちろんジト目はデフォだ。


「あっ?!い、いや、そう言う事では……」

「ふはっ、さすがは我が弟子。うんうん、女の胸はまさに希望が詰まっているからな」


何で嬉しそう?

せっかくギリアムさん、否定しようとしてたのに。

思わず私はエルノールに視線を向ける。

なぜか私の胸を見て顔を赤らめているエルノール。


まさか、あなたもなの?!


「ひうっ?!い、いえ、けっして、そ、そんな…」


はあ。

男の人って……


私とリンネはお互い頷いていた。

今度から大きさが分からないような、ダボっとした服にしようかしら。



※※※※※



その後ギリアム魔導王は城の宝物庫に保管されているいくつかのアーティーファクトで、遂にその女性を認識することに成功していた。


どうやらあのダンジョン。

100年前に攻略したこと、禁忌指定されていたらしい。


まずはノーウイックの件。

そしてその女性、ダークエルフのフィリルニームさんが達成後にやらかしたことが問題となっていた。


そうはいっても達成は大きな功績だ。

達成を祝う式典を行った際、そういうスキル持ちの人がかろうじて彼女の姿を残していた。


「ふうん。奇麗な人……うん?これって……」

「なになに美緒?なにか分かるの?」

「うん?この人のイヤリング……確か古代エルフの国ブーダの王族の証…だったはず」

「王族?なんで王族が冒険者なんて……まさかダンジョンの秘宝が、目的?」


色々な事実が出てくる。

あり得ないくらいに密度を増していくこの世界。


でも。


何故か高揚する私がいた。


「これはブーダにもいく必要あり、だね」

「う、うん。……なんか美緒、楽しそう」

「うん?」

「だって前ならさ、眉寄せておばあちゃんみたいな顔してたのに。今の貴女、とっても可愛い♡」


うっとりするような可愛い顔で私を見つめるリンネ。

なぜか私は彼女を抱きしめる。

彼女の破壊力のある柔らかい胸。


何故かすごく愛おしくなってしまった。

顔をうずめ、柔らかさを堪能、さらにそっと手を添えた。


「ふう♡リンネのおっぱい。スッゴク癒される」

「あうっ♡も、もう、美緒?……み、みんな見てる!」


気付けば男性陣、皆湯気が出るほど顔を赤く染めていた。

ノーウイックなんてなぜか腰振ってるし?


「はあ、はあ…美女二人の絡み合い…たまんねえ……お、おい、ドレイク」

「お、おう」

「帰ったら娼館付き合え」

「は、はあ?!い、行く訳ねえだろうがっ!俺には…そ、その…メリナが」

「ごちゃごちゃうるせえ。もうたまらん。おいっ、エルノール、一緒にどうだ?」

「ひぐっ?わ、私は…そ、その…」


あー、うん。


どうぞご自由に?

…これって生理現象なのよね?

そうだよねザッカート?

私、信じてるからね?!


ふう。



取り敢えず仕事しよっか。


私はリンネの拘束を解いてちょっとだけ魔力を揺蕩らせた。


皆スッゴク素直になりましたとさ。


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