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第106話 黒髪黒目の超絶美女は十兵衛と出会う

しばらくして。


どうにか落ち着いた私は改めてレギエルデとエルノール、そしてリンネで話し合いを行うことにした。


拙い私の説明。

でもみんな真剣に聞いてくれていた。


「ふう。凄い事になっていたんだね。流石はゲームマスター。そして異常な幸運値。君はまさに運命の女神だな」


ねえレギエルデ?

貴方そういう事、普通に言うかな?!


「コホン。えっと言い過ぎだと思うけど…それでどうすればいいと思う?」


「優先順位だよね。僕はまず皆でジパングに行くべきだと思う。最大戦力でジパングを平定しよう。ゾザデット帝国はあぶり出しにもう少し時間が必要だと思うんだ。多分君が思っているよりも根深いはず。犠牲は出てしまうと思う。でもそれは君の負うべきところではないんだ」


「……うん。私そこまで奢っていないよ?」

「流石だね。君は本当に強い」


何故か頷く皆。

ちょっとくすぐったい。


「精霊王のオーダーについては今すぐ行ってもあまり意味はないと思う。古代エルフの国もね?だから後回し」

「うん」


凄い。

レギエルデが言ってくれるだけで、うまくいく気がしてくる。


安心感が半端ない。


そんなタイミングでマールから私に念話が届いた。


(美緒殿、今良いだろうか)

(う、うん。どうしたの?マール)

(うむ。十兵衛と会う事が出来た。そして妖刀コトネ、いや聖剣も確保に成功した)


「聖剣?え、えっと…どういうこと?」


念話なのに余りの事に私は声を出してしまう。

レギエルデが目を細める。


(ふむ。美緒殿。我の所在、把握できるだろうか。良ければ来て欲しい。なるべく大勢で)


「…マールが呼んでいるの。なるべく大勢で来て欲しいって」

「へえ。凄いね君の仲間たち。多分ミラクルレベルで話が進んだんだろうね。美緒、すぐに飛ぶんだ。リンネ様とエルノール、今はその3人で良いと思う」


私はレギエルデの提案に頷いてマールと念話をつづけた。


(私とリンネ、それからエルノール。今すぐに3人で行くわ)

(うむ。流石美緒殿。では頼む)


「リンネ、エルノール、準備はいい?」

「うん」

「はい」


私たち3人は頷いた。


「レギエルデ、ありがとう。じゃあ行ってきます」

「うん。行っておいで。でも一回は絶対に帰ってくること。良いね」

「うん」



※※※※※



そうして私は出会う。

12人目のメインキャラクター。


導かれし侍、十兵衛と。



※※※※※



私はマールを補足し、そこがいわゆる謁見の間『上段の間』であることを認識、おそらく殿様が座っているその前へと転移した。


「美緒殿、早速の対応感謝を」

「マール。お待たせ……っ!?…彼が…十兵衛?」


マールの隣。

まるで山のような、輝く白髪の大男が奇麗な姿勢で正座していた。


にじみ出る暖かな波動。

間違いない。

十兵衛だ。


「コホン。これはこれはゲームマスター殿。お初にお目にかかる」


突然上座から掛けられる声。

私は思わず肩をはねさせてしまう。


「…無礼であるぞ?そなたはこの国の領主。確かにそれなりの地位だ。だが我はリンネ。今世の創造神である。そしてこちらはこの世界の救世主であるゲームマスター美緒。伏して控えよ」


リンネから立ち上る圧倒的魔力。

上座に座るおそらく殿様は冷や汗を垂らす。


「もう。リンネ?その言い方」

「美緒?これは必要な事。あなたは黙ってて」


立ち尽くし殿様を睨み付けるリンネ。

一人の美しい着物に包まれた女性がすっと立ち上がり、リンネの前で膝をついた。


「ご無礼を。どうかお怒り、お鎮め下さい。申し遅れました。わたくしこの国の領主、殿である父義嗣(よしつぐ)が次女、モミジにございます。以後お見知りおきを」


「ふむ。これは丁寧に。面を上げるがよい」

「はい。ありがたき幸せ」


改めて殿さまに目を向けるリンネ。

殿さまは立ち上がりリンネの前に跪いた。


「大変な失礼。誠に申し訳ありませんでした。どうか我が首ひとつでお許しいただけないであろうか」


うあ。

首とか言っちゃってるし。


相変わらずこういうの慣れない。


「良い。我も言い過ぎた。何よりこの先ともに協力するのだ。座ってはくれぬか?」

「おお、なんという慈悲深き創造神リンネ様よ。承知いたしました。何なりと申しつけ下され」

「うむ」


一連の形式。

まあ必要なのだろう。


改めて私は殿様に今の状況とこれから先起こるであろうことを伝えた。



※※※※※



「なんと。……死霊の軍勢に伝説の魔獣、そしてオロチ…我が国はもつのであろうか」

「ええ。そのための協力関係の構築です。それに今十兵衛が手にいている刀。かつては妖刀と呼ばれし最強のカタナ。今は既に進化し、聖剣『琴音之命ことねのみこと』となっておりますが…邪悪に対する切り札となるでしょう」


私は最初に鑑定を施していた。

以前の私のルートで見た妖刀コトネ。


まったくの別物がここにあった。


「マール、概要を」

「承知。半蔵殿、かまわぬな?」

「かまわぬ。むしろそなたから説明してほしい。我が隠密、そして武将ともども、すでにお主の指示に従う。殿、それでよいのですね」


「うむ。その通りだ。…これはジパングだけの話ではない。世界の存亡にかかわる危機。もはや矜持や意地など何の意味も持たぬ」



※※※※※



後で聞いたのだけれど。

実はマール、この国の殆どの要職を説得済みだったのよね。

まあ方法については……コホン。


とにかく段取り、全て終わっていました。

何故かうっとりとした目でさっきからミリナがマールを見つめているけど……


何はともあれマールは本当に優秀だ。



※※※※※



面通りを済ませ許可をもらい、私たち7人は今からギルドへと転移するところだ。


ん?

何で7人?


あー。

取り敢えず私とリンネ、それからエルノール。

で、マールとミリナでしょ?


そして当然十兵衛なのだけれど……

何故かお姫様であるモミジさんまでついてくることになったのよね。


「み、美緒殿?そ、その…モミジ殿も連れて行きたいのだが…」


顔を染めなぜか私に懇願するミリナ。

意味が分からないのだけれど?


「えっ?でも彼女、お姫様なんでしょ?大丈夫なの?」

「実力は問題ない。それに頼まれたのだ。…ダメだろうか?」


なんか怪しい。

しかもミリナ、何故かやたら血色いいし?

凄く強くなっている?!


「……ねえミリナ。なにがあったの?」

「っ!?な、な、な、ナニ?!!……べ、べ、別に?……あう♡」


いきなり顔を染めるミリナ。

何故かリンネがにやりとその様子に顔を歪める。


「マール」

「なんであろうかリンネ様」

「昨晩ミリナとなんかあったの?」

「ふむ。ミリナと一緒に寝た。それがどうかしたのか?」


皆の動きが止まる。


「む。そうであったな。報告がまだであった。美緒殿」

「は、はい」

「我はミリナを伴侶に迎えたい。良いだろうか」


マールの衝撃の言葉。

慌てて私はミリナに視線を向ける。

すでに彼女、真っ赤な顔で湯気を出しふらついていた。


「えっ?ええっ?は、伴侶?……そ、それって…」

「うむ。責任は取るつもりだ。…当然祝言しゅうげんはまだ先だ。今はそれどころではないのでな。何よりミリナを守るためにはまだまだ彼女を鍛える必要があると心得ている」


い、いきなり結婚?


じゃあ一緒に寝たって……あうううっ?!!!

確かに彼女、なんか歩き方ぎこちない?


ええっ?


どうやらそれを目撃したモミジさんに、お願いされていたそうだ。

それって…脅迫よね?


「もう。なんで言ってしまわれるのですかマール殿。そういうのは公表するものではありません」

「む?そうなのかモミジ殿。そなただって十兵衛と…」

「わーわーわーわー!!!な、なに言って…はっ?!ち、違います。わ、私はただ…う、うなされている十兵衛の看病を……うあ♡……」

「…経緯はどうあれ求められ答えたのであろう?……同じことではないか」


ええっ?

モミジさんと十兵衛?


十兵衛も真っ赤?!


知らなかったなあ。

へえ――――


何はともあれ微妙な空気感のまま私たちはギルドへと転移した。



※※※※※



まあ誤解だったのだけれどね。

十兵衛には過去の記憶というか前世のトポ君の魂が同居というか融合している。


その彼、まだ子供だった精神が出ていて、ただお母様を想い女性を求めていたようだった。

だからその…えっちとかはしてなくて……そ、その…


じゅ、授乳?

みたいな?


コホン。


何はともあれ準備は整った。

ジパングの闇、解決しましょうかね。


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