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第107話 新しくなった私たちのギルド

今新たに加わった十兵衛たちを含めた頼りになる仲間たち。

その全員がサロンに集まってくれていた。


私とリンネ、そしてエルノール。

アルディ。


レリアーナにザナークさん、ファルマナさんにハイネ君。

ザッカートたち20人。

マールとドレイクにメリナさん。

アリア。


ミリナとカイ。

ロッドランドとティリミーナ。

そしてミカ。


ガーダレグト、そしてノーウイック。

マキュベリアにアザーストさんとスフィナさん。

それからナナとフィム。

レギエルデ。


最期に今回加わった十兵衛とモミジさん。


総勢46名。


天使族の他の勇士とダリーズさんには第2拠点を任せてある。


一応はハインもここに入っても良いのだけれど。

今彼には自国の為に動いてもらっている。


大事な話になるのでロッドランドにも来てもらっていた。



※※※※※



「みんな集まってくれてありがとう。今私たち、結構とんでもない事態に巻き込まれているの。とりあえずうまく話せる自信ないので『同期』します。…少し長いかもだから椅子に座って心を楽にして欲しい」


皆は座り、そして私に視線を向ける。

暖かくいたわる視線。


それだけで私は力が湧いてくる気がした。



※※※※※



内容が内容なだけに結構時間がかかる。

皆にはそれぞれ飲み物を楽しんでもらっているところだ。


意外なことに缶のブラックコーヒーが人気なのよね。


私はちょっと。

苦いのが……あう。


未だ私は『子供舌』なのだろう。



※※※※※



やがて同期が終わる。

そしてそれぞれが思いを声にしていた。


「…ふん。流石美緒だな。振り返ればどれもが最適解になっている。…俺たちは正解だった」


ザッカートがつぶやくように口にしていた。


「ふむ。オロチか。くくく。美緒、どうするつもりじゃ?」


なんかマキュベリア、やけに興奮している?


「くくく。かような化け物。さぞ血も旨かろう」

「ええっ?マキュベリア血を吸うつもり?お腹壊すよ?!」

「ふん。ナナとて食えるのなら食いたいのであろう?貴様の『調理人S』、期待が膨らんでしまうわ」


あー。

そうよね。

きっとナナ、食べるのでしょうね。

あれは化け物だけど、龍種の最終形態の様なものだし…


前のルートの時は私の魔法ごり押しで倒したのよね。

確かメテオフォール×5?


オロチの居たあの半島というかジパングの面積、減っちゃったんだった。

ナナが食べるのならきっと被害は少ないはず。


私はそっとナナを見つめていた。


そんなこんなでギルドの皆との情報の共有は完了した。



※※※※※



どうにか終わった同期。

皆の目が輝きを増していた。


「コホン。それでみんなに伝えることがあります。レギエルデ」


私はこれからこのギルドの頭脳を担うレギエルデを皆の前に呼んだ。


「初めまして。僕はレギエルデ。同期でもう承知だとおもう…戦う力はないけど頭脳にはちょっと自信があるんだ。これから先、皆の行動指針を提案したい。もちろん美緒とリンネ様、それからサブマスターであるエルノールに相談するけどね」


言葉を切り、皆を見渡すレギエルデ。


「だから聞いておきたい。ボクを信用してくれるかい?」


これからの作戦、きっと命がけになる。

少しの躊躇が作戦どころかその命までをも奪うだろう。


絶対の信頼、それは最低条件だ。


「君が『あの』レギエルデ?……ふうん。凄くイケメンだね。……君、神だったのかい?」

「…アルディ?そうだね。僕も君と似たようなものだ。僕は好奇心でこの宇宙の禁忌に触れた。そして只人に落とされた呪われし存在だ。でもね、僕はこの世界を愛している。それだけは誓えるよ」


「はは。なんだよ。僕とは似ていないさ。僕は君ほどお人よしじゃないからね。……うん、僕は君を信じる」


思えば一番ひどい目に遭ってきていたアルディ。

2000年死ぬことも出来ずにただ監視していた彼が認めた。


やっぱりレギエルデは凄い。


「拙者は信じる。一番の新参者の戯言ととられるやもしれぬ、だがレギエルデ殿の心は真っすぐだ。拙者は従う」


十兵衛。


この人は本当に真直ぐだ。

……モミジさん?やっぱりあなた好きなの?

目がハートだし!?


「興味深いな。レギエルデ貴様、何者だ?言えぬなら構わぬがお前はいつかこの世界のカギとなろう。わらわも異存はない」


レグ…

彼女も4000年生きている。

もしかしたら彼の正体、知っているのかもしれない。


隠されてそして二度と戻せないその称号の事…

私でも見えないその称号…


おそらく…


「美緒が認めているのだろう?なれば疑う余地などあるわけがない。俺も従おう」


レルダン。

あなたの覚悟、本当にかっこいい。


ああ、私は本当に仲間に恵まれている。



※※※※※



「…みんな、ありがとう。私は仲間に恵まれた。だから全力。…手の届く範囲、全部救う。力を貸してください」


「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「おうっっっ!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


大合唱になる容認の言葉。


私に流れ込んでくる皆の信愛といたわりの気持ち。

心の底から満たされていく。


ああ、凄い。


その瞬間わたしのメインジョブが変貌を遂げた。


『ピコン…条件をクリアしました…メインジョブ『軍師』が神すら知らぬ伝説の先駆け『麒麟児』に覚醒進化しました。…各種バフの効果50%上昇します……継続時間の延長……覚醒ボーナスとして各種ステータスを最適化しその後5000のポイントが付与されます…』


「っ!?」

「っ!?どうしたの?美緒?!」

「う、うん。リンネ…これ…」


私は恐る恐るリンネだけに私のステータスをリンクした。


「ひうっ?!!!」


う、うん。

そうなっちゃうよね?!


ひとしきり固まり、そしてジト目を向けるリンネ。


「美緒……やりすぎ。貴女宇宙まで滅ぼすつもり?」


私のステータス。

全ての数値が8万を超えた瞬間だった。



※※※※※



しばし休憩を取り再度集まってもらったサロン。

これからジパングでの総力戦、その説明を行うところだ。


「まず最初にやること。九尾、ミコトちゃんの救出だ」


頷く十兵衛。


「それには絶対に十兵衛の力とその聖剣の力が要る。おそらくそこにいるのは彼女から妖魔の頭領の権利を奪ったマサカドとその眷属。最大の戦いになる」


レギエルデが私を見つめる。


「美緒、リンネ様、マール、そしてロッドランド。もちろん幸運値が欲しいのでティリミーナも同行してほしい。それから美緒の護衛として、彼女をトリガーにあり得ない力を出せるルルーナとレルダン。それにおそらくとんでもない宝がドロップされるはずだ。せっかくだ。ギルドの強化のためにもらっておこう。…デイルード、君のスキル、期待しているよ?……君たち9名でお願いしたい」


彼の説明、理にかなっている。

みんなが大きく頷いた。


「雑魚についてはジパングの武将と隠密の力を借りよう。モミジ?段取りと指揮は任せていいかな」

「はい。お任せを。……ふわあ。見たことのない魔刻石…凄い性能ねこれ」


すでにエルノールに飛んでもらい対になる魔刻石は貸与済みだ。


「そして北にはびこる死霊の軍勢、おそらく伝説の侍マスターミフネの怨霊とその一派だ。数が多く厄介だ。エイン、ナルカ、クロット、スフォード。そしてアンデッドには聖騎士が最適だ。ファルカン、君に陣頭指揮を頼みたい。それから種族特性ですでに聖属性を保有するミリナとカイ。後は広域の破壊の魔法が要る。ドルン、君と美緒で開発した魔刻石、存分に使ってほしい。レグ、掃除は任せたい。複数人転移もできるよね?お願いするよ?」


「任されよう。ふふっ、ここで鍛えた我が魔力、存分に振るおうではないか」

「お、俺が陣頭指揮?くくっ、震えやがる。ああ、任せろっ!」


「さあ次だ。さらに北。おそらく魔獣ウロトロスが出てくる。あれは地獄の番犬。確かレベルは200前後だ。……ザッカート、ミネア、そしてミルライナ。後は転移の為にエルノールが付いて行ってくれ。君たちは先行して押さえてほしい。もちろん倒せるのならそれに越したことはない。でも間違えたらダメだよ?美緒が悲しむことは絶対にダメだ。いいね?」


「あたりまえだ。そんなへましねえさ。……だが確実に倒す。それだけだ」

「ははっ、本当に倒しそうだ。……ここは本当にすごいところだね」


大きく息をつくレギエルデ。

彼の作戦、緻密な計算の上成り立っている…凄い。


「さて。最大の障害、オロチだけど。……僕の見立てだときっと美緒しか倒せない」

「っ!?」

「でも僕はね思うんだ。美緒から聞いたし皆も同期したからわかると思う。本来なら今このタイミングで絶対にいないはずのナナ。君はきっとオロチを捕食するために今ここにいる」


「えっ?私?」


「言ったろ?オロチのレべルは400を超えてくる。今それを凌駕し圧倒的な火力を保持するのは美緒だけだ。でも君なら倒せる」


皆のつばを飲み込む音が響く。

ナナは武者震い?

珍しく緊張しているさまがうかがえた。


「……君の称号『ウルティメートプレデター』そして『食材調達S』ならね。都合のいい事にナナはすでに転移を習得している。運命を感じてしまうよ僕は。……そして同じタイミングでここに来たマキュベリア、あなたとその眷属にはナナのフォローを任せたい。おそらくオロチの妖気、それにつられてかなりの物が現れるだろう」


「なる程の。うむ。その指令、こなして見せようぞ」

「まあ最悪の時には逃げてね。美緒に苦労させちゃうけど。……確実なのは美緒だけだ。だめなら再度アタック。だからさっきも言ったけど、君たちは誰一人死んではいけない。それはすなわち美緒の失敗、ひいてはこの世界の崩壊につながるんだ。それは心にとめて欲しい」


論理的でわかりやすいレギエルデの指示。

誰もが納得し、きっと最高のパフォーマンスを発揮する。


「まだ呼ばれていない人、いるよね?君たちの任務、一番重要で、だけど地味に見える任務だ。どうか力なき民を守って欲しい。きっと戦場は大災害さながらの様相になる。巻き込まれれば通常の者は誰一人生き残ることが難しい。今回の戦場で人がいる場所は2か所だ。美緒、結界の魔刻石、あるよね?それと転送ゲート設置できるかな?」


「うん。問題ないよ?モミジさん場所教えてくれる?」

「ははは。私の常識が…う、うん、もちろん」


「しつこいようだけど民の救出が最優先だ。力なき民の心の苦しみ、それは奴らの何よりの力になる。間違えないでね。戦闘は最小限に。君たちを僕は信じる。作戦決行は明日12月31日。日の出とともに乗り込むよ。あっと、いけない。…大事なことを忘れていたよ」


そう言って大きく深呼吸をするレギエルデ。


「ザナークさん、ファルマナさん、アリア、リア、ハイネ君にフィムちゃん、そしてメリナさん。あなた達はこのギルドで祝勝会の準備を。ああ、僕は味見役かな?……それでは今日はゆっくり休んでほしい。美緒?最後の檄、お願いできる?」


レギエルデの指示。

明日の戦いはきっと想像を絶する死闘になる。


でも不思議。

上手く行く気しかしない。


「みんな。私たちのギルド、最高でしょ?明日はばっちりお仕置きして、みんなでよい新しい年迎えましょう。みんな、私は心からあなたたちを愛しています。私を助けてください。信じています」


「「「「「「うおおおおおおっっっ」」」」」」

「「「「「美緒さま―」」」」」」

「うにゃ。任せるにゃ!」

「大船に乗ったつもりでいるとよい。年越しでの風呂も良い物じゃしな」


ああ、本当にすごい。


私は絶対に成し遂げる。

そう思えるほどにここにはすさまじい人たちがいるんだ。


幾つかの準備を整え、後は戦うだけ。



※※※※※



伝説のギルド。


その力がジパングの闇を払う。

それはまるで予定調和。


彼等の力、その鮮烈な輝き。




神話は紡がれていく。


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