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第2話 責任者はどこ?

「大丈夫か? 心配したのだぞ?」

 聞こえてきたのは、いかにも、なイケボ。 

 それに、王子様でござる、な見た目。

 あとの二人も、美形な取り巻き。まあ、そんな感じ。

 ……あの王子と、取り巻きだ。


 せっかくの『まななび』の夢なのに!

 どうせ『まななび』の夢を見られるのなら、悪役令嬢様のお顔を拝見したかったのに。


 それどころか、目を覚まして最初に見る顔がこいつらかあ。

 こんな、攻略対象者勢ぞろい、とかじゃなくて、顔立ちと性格がおだやかなモブさんたちのほうが、よっぽど嬉しかったよ……。


 ちなみに、第五王子、騎士団副団長令息、それから、宰相補佐令息。

 ん? と思う人もいるかも知れないね。

 そう、このゲーム、攻略対象者はいわゆる二番手、三番手なんだな。

 で、聖女とラブラブになって、二番手三番手な自分の立場を上げようという連中だから、よりいっそう、ムカつくの。

 もちろん、顔と声はいいよ。

 キャラクター造形とイケボには定評があるゲーム会社からのリリースだからね。


 あ、だけど、こういうのが好き! っていう人がいるのは、なんとなく分かる。ベタ、っていうやつだよね。

 あくまでも私の場合は、なんだけど、婚約者がいるのに平民の聖女様に近付く連中を真剣に攻略、とかはしたくなかったの。だから、スマホアプリのコミックサイトに出てきた広告で一目惚れした麗しの悪役令嬢様を攻略できる(らしい)という噂の幻のルートだけを狙っていたってわけ。

 それが、あのルート。

 こいつらを攻略するのはしゃくだったけど、無課金攻略できたし、ルート到達のあとの悪役令嬢様への課金は納得してたから、プライスレス。

 もともと、いつか旅行とか行きたいなと思って給与から天引き貯金してたお金だから、大丈夫。旅行先が海外から異世界になっただけだし!


 『まななび』は、聖女ちゃんも、いわゆるイケメン侍らせたい系の大丈夫か? な女子とは違って、平民ゆえにこいつらから囲まれてしまうと流されるしかなくて、でも婚約者様たちには申し訳ない……みたいないい子で。


『自分は一人で大丈夫です』と言えば『遠慮するな』 

『婚約者様のところへいらしてください』と言うと『何かされたのか?』みたいな、とんちんかんな連中。


 うわ、だんだんムカついてきたな。

 ……殴りたい。

 どうせ、夢だし。

 いっそ、殴る?


「どうした、コーパル。やはり、体調が……」

 コーパル? 

 聖女ちゃんの名前だ。

 こいつ、なにを言ってんだろう。頭、寝てるの?

 そもそも、学び舎で人の名前を呼び捨てるな!


「体調はなんともないです。皆さん、授業にいらしてください」

 はよ出てけ。

 殴る気も失せてしまった。


 でも、この声。

 まさか……。

 コーパル、そして、この声。


 なんてこった。 


 ほんとにほんとの、聖女コーパルちゃんじゃん!

 夢にしたってもう少し、私に配慮してほしいよ。

 コーパルちゃんは悪くない。悪いのは、こいつらと……。


 そうだよ……責任者、出てこい!

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