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第3話 ふわふわモフモフ、守護聖獣様があらわれた!

『おんおん、登場だおん』

『責任者……違った! おんおん様!』


 え? 責任者を呼んだら、超レアキャラがふわふわ飛んできたよ!


 おんおん様。

 クリアしたばかりのあのルートに出てきた、聖女の守護聖獣様だ。

 おんおん、音々? 恩々? 考えながらゲームをしてたけど、それはけっきょく分からなかったな。


 フワフワもふもふ。猫みたいな耳、兎のような丸しっぽ。

 色は、多分、シルバーグレイ。かわいいかわいい毛玉ちゃん。


 かわいい姿でこれがまあ、すごいの。

 聖女は名誉ある存在だけれど、守護聖獣様に守護された聖女は、さらに上の聖女として認識されるのね。伝説の大聖女様がそうでいらしたという記録があるらしくて。

 簡単に言うと、この国では王子どころか王太子よりも立場が上の存在で。

 国王陛下と王妃様、聖教会の総司教様以外の人間にはこうべを垂れなくてもよいという、ハイパーキャラになるんだよ。

 しかも、守護聖獣様は、この方々よりも立場がさらに上。

 そんな守護聖獣様のお力で、聖女ちゃんは聖なるのぞみを叶えるのだ。


 あのルートでの、希。

 悪役令嬢様とともに、この国のために力を尽くすこと。

 悪役令嬢様も、ご実家公爵家も、王子なんかより聖女ちゃんの方が一億倍よりも上、と大賛成。もともと、ご実家的には頼まれて仕方なく、の婚約関係だったし。


『おんおん様、なんで……』

『さすがはあのルートをクリアした猛者だおん。念話で話してくれるなんて、だおん』

 念話。確か、ものすごい魔力持ちがいろいろしたらできる、念じて話すという話し方だ。できてるの? すごいな、私、というか……聖女ちゃん。


 と、いうことは?

『夢、じゃないんですね、これ』

『わかりみも深いおんね。音々とかの考察もネタバレせず、でありがとうだおん、のあなたには、聖女様になってもらうおん。向こうのあなたにはコーパルの魂が入ってるおん。悪役令嬢アントラサイトを敬愛するもの同士、魂が惹かれ合ったので、心配ないんだおん』

『魂? 聖女ちゃん、私になっちゃったの? 無事なんですか? あと、魔法がない世界だなんて! とかなんとか、パニック起こして騒ぎになったりとかはしてませんか? 電子レンジ壊した! とか』

 無事で、はもちろんだけど、騒ぎも困る。

 マンションの賃貸更新料、払ったばかり!


『大丈夫だおん、偉大なる聖霊王様の伝手つてで、異世界への魂の転移をつつがなく行うために、コーパルとおんおん、一緒に異世界についてたくさん学んだおん。あなたがクリアをしてくれてから、あちらは約ひと月が経過してるおん。今はルート解放されて、異世界のみんながあのルートを楽しんでるんだおん。ただし、おんおんは、聖獣様、で登場だおん。あと、聖女コーパルはばっちり、異世界人の常識をゲットしてるんだおん。掲示板も見たおん? ゲームクリア後も、スマホで毎日朝昼晩のログインボーナスをもらってるくらいだおんよ!』

 あのコメをしてた私、コーパルちゃんだったんだ。

『……信じます、おんおん様。あと、日に三度のログボ、ほんとうにありがとうございます』

 おかしな話だけど、今の私の中に、聖女コーパルちゃんの記憶もあったのだ。 

 そりゃもう、しっかりと。


 寝る間も惜しんで、おんおん様とお勉強。

 そんな記憶のうちのひとつ、聖女ちゃんが見ていた像を映す水晶の中にいたのは、最寄り駅のホームで朝のログボをもらう私だった。

 あれは、ルート到達直前のときだ。


 私はまあ、一応同年代よりは稼いでいる社会人。

 社畜とかじゃないし、週休二日はきちんと、リモートワークも割と可能な、この間読んだ悪役令嬢が社畜に転生、とかのスマホアプリのコミックよりは、はるかにいい会社勤めだと思う。

 一人暮らしのマンションはまあまあ片付いてるし、今は彼氏もいない。家族や友達も、会えないからと文句を言うような人たちじゃないし。

 有給も、余ってるからそろそろ使えって言われてるし。


 ……しばらくなら、大丈夫かな?


『よかったおん。じゃあ、とりあえず、こいつらを滅するおん』

『滅する?』  

 いや、それは……。

 全年齢対象スマホゲーの攻略対象者を葬り去るのは……ねえ。 

『たとえだおん。ここから去らせるだけだおん』


 よかった……それなら、大賛成。

 むしろ、とっととやっちゃってください!

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